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凱人が野菜を育てたり、刀の作成をしている中、雷華は一度目の模擬戦が始まりそうになっていた。



2日前


雷華は、ラヴィスとの模擬戦のため鍛錬をしていた。


雷華がラヴィスとの模擬戦に勝利するための条件は、『本気のラヴィスに一撃を与える』こと。


倒す必要はない。ただ、一撃を与えるだけでいい。しかし、一撃を与えるというのは、針の穴に糸を通すことの何千倍も難しいことだ。


雷華の冒険者ランクはAランク。その中でも、中の上といったところだ。Aランクの中では強い。しかし、Sランクには届かない。ましてや、七絶ともなると歯が立たないだろう。


Aランクは単体B+級以上の魔物を単体で討伐することができる者やA級ダンジョンを制覇できる者のランクだ。このランク条件を見れば、十分強いだろう。しかし、それはSランク、七絶の冒険者のランク条件を見てないから言えることだ。


Aランク


この冒険者ランクまでいけば、一介の冒険者としては十分といえる。


ほとんどの冒険者はBランクで止まるか、Aランクになった慢心によって死ぬことがほとんどだ。だからこそ、Aランク冒険者になれば周りから成功者としての目で見られる。


ランク上限がAランクであれば、上出来も上出来。しかしそれは、上限がAランクだった時の話だ。


Sランク


Aランク冒険者を人類の上澄みというのなら、Sランク冒険者は人類を超越した者として表すには強大すぎる。もし、あの7人のことを表すのなら、この世界の人間の中で唯一神に届きうる可能性を持つ者と表すのが適切だろう。


Sランク冒険者というのは、まずなるのが難しい。冒険者のランクというものはどのランク帯でも、小説や漫画などで見るよりも条件はとても厳しい。


例えば、Bランク冒険者であれば、B級ダンジョン制覇が必要になる。これは、ランク上昇による慢心を防ぐためだと言われている。


そのため、Cランク冒険者になれば、B級ダンジョンに挑むことができるようになり、Bランク冒険者になれば、A級ダンジョンに挑むことができるようになる。


だからこそ、Sランク冒険者というのはこの世界にほとんどいない。


大抵の国は、Sランク冒険者はほとんどいない。しかし、それもそのはず。Sランク冒険者は一人いれば、国1つであれば余裕で滅ぼすことができるほどの実力を有している。


そんな数少ないSランク冒険者を多く保有している国もまた存在する。


前提として、まずこの世界には、冒険者ランクの他に、冒険者の実力を示す世界序列がある。


世界序列とはその名の通り、世界中の冒険者の実力を序列として表したもののことを言う。その中の7人が七絶と呼ばれている。


序列の高い冒険者の数が多いほど、国の戦力も上がっていく。だからこそ、国は冒険者の育成に力をかけ、強い冒険者を生み出している。


この世界にいる7人のSランク冒険者は、4つの国に所属している。


アルカナ帝国に所属しているのは、〈絶剱〉のラヴィスと〈絶癒〉の美玲の二人。


ケリオス。前の世界でいうアメリカに所属しているのは、〈絶魔〉のルミ、〈絶空〉のゲルド、そして〈絶弓〉のロミアの三人。


ナルメリア。前の世界でいうフランスに所属しているのは、〈絶闇〉。


そして、ガリラヤ。前の世界でいうロシアに所属しているのは、〈絶壁〉のヘリオス。


このように、いくつかの国にまとまって所属している。ほとんどは所属している国にいるのがほとんどだが、他国のダンジョンでも時折見かけることがある。


そんなSランク冒険者に一撃を与えるため、策を考えながら鍛錬を続けた。



ラヴィスとの模擬戦当日。雷華は結界の貼られた、冒険者学校所有のダンジョンでラヴィスが来るのを待っていた。


雷華が準備運動をしていると、音もなくラヴィスが雷華の後ろに立っていた。


「よっ。どうだ?準備は出来てるか?」


「はい。」


「そうか。」


雷華とラヴィスはそれだけを交わし、各々剣を構えた。


「これから30分。お前は俺に一撃を与えに攻撃してこい。俺はほとんど反撃しないが、隙ができればとことん打っていく。いいな。じゃあ、来い。」



そのラヴィスの掛け声を皮切りに、雷華の攻撃が始まった。


ガキン。という金属音だけがこの場を支配する。


ラヴィスも雷華も声を出すことなく、ただただ剣のみで会話をしていた。


開始十分。初めて、ラヴィスからの反撃が雷華を襲った。


「まずは一回。」


そうつぶやかれた瞬間。雷華の目に追えないスピードで、刀の峰が雷華の腹に入った。


「ぐっ…。」


雷華は体制を崩して、壁に激突した。周りから見れば、何気ない一撃。されど、当の本人にしてみれば、今までに喰らったことのない一撃が雷華を襲っていた。


「おいおい。雷華、お前そんな程度か?薊ならもっとやってたぞ?」


「…まだまだ、これからですよ。」


立ち上がった雷華は、そのまま攻撃に移った。


横薙ぎ、振り下ろし、居合、鍔迫り合い。どのような攻撃をしてもラヴィスに刃が通ることはなかった。


一度雷華が体制を立て直したとき、時計の針は25分を指していた。


雷華の体力を鑑みると、あと立ち合えるのは1回がせいぜいだろう。それを察した雷華は、最後の一撃を振るうために、一度目を閉じて集中した。


「最後。行かせてもらいます。」


そう、一方的に言葉を放ち、ラヴィスに向かった。雷華が剣を振り下ろした瞬間、ラヴィスは呆気にとられたように剣を弾いた。


「最後ってこの程度か?」


ラヴィスも油断はしていなかっただろう。しかし、最後の一撃に大ぶりの一撃を選んだことに疑問を抱いた瞬間。雷華は予備として背負っていた、もう一本の剣を腕を弾かれた反動でつかみ、勢いよく抜き振り下ろした。


「なるほど。」


雷華が一撃入ったと思った瞬間には、すでにラヴィスは雷華の剣を奪っていた。


「弾かれた反動で剣を持ち替えたのか。いい戦法だな。だが、振る速度が遅かったな。」


そこで、30分のアラームが鳴り、一度目の模擬戦が幕を閉じだ。


「雷華。お前良いセンスしてるな。鍛えれば、もっと俺と少しは渡り合えるんじゃないか?」


「そうですか?…ありがとうございます。」


「おう。次ここに来るのは、2週間後だ。それまでに、今回足りなかったこととかを鍛えとけよ。」


そう言い残し、ダンジョンを去っていった。


残された雷華は、体力切れで倒れながら模擬戦を振り返っていた。


「一撃どころか、軽く躱された…。流石に落ち込むなぁ…。」


今回雷華が取ったのは、手数で攻める作戦だった。


しかし、ことごとくを防がれ、最後の奇襲さえも余裕で躱されてしまった。


自分の実力不足を痛感しながら、次のための作戦と鍛錬メニューを考えながら、連絡した水樹たちが来るのを待っていた。

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