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最高品質

刀の制作を始めて、約4時間。


いつもなら刀の刀身を作り始めようとしている頃だろう。しかし、今回。現時点では、折り返し作業を始めるところだった。


今回は、玉鋼の厳選から始めたためいつもの心金と皮鉄よりも純度や質が違っていた。


通常は、折り返し作業をすることで、玉鋼の不純物を取り除く。だからか、折り返し作業前の心金と皮鉄は不純物が混ざっていたり、玉鋼の放つ光が濁っていることが多い。


しかし、今回選んだ玉鋼のおかげか、ほとんど不純物が含まれておらず、玉鋼は眩く光を放っていた。


そこからは息を吐く暇もなく、折り返し作業を、黙々と続けていた。1時間ほど折り返し作業を続けていると、口には出さなかったが違和感を感じていた。


違和感を感じながらまた1時間ほど折り返し作業を続けていると、ようやくその違和感をハッキリと理解した。


汗が出ていなかったのだ。


魔力炉の前に、刀の制作を始めてから6時間ほど座っていた。さすれば、汗をかくのは当然だろう。


折り返し作業を続けながら、その疑問の理由を考えていた。


慣れ?この小屋の中の気温?それとも魔力炉は熱を発していないのか?


どれも理由としては足らない。


今回、いつもの刀を制作する時と違っているのは、睡眠時間や食事の質以外には1つしかない。


服装だ。いつもはこの世界に来たときの服や、この家にあったラフな格好で刀の制作をしていた。


しかし、今回は形から入ろうと思い《神衣》を着て刀の制作に取り組んでいた。


そこで、この《神衣》の特性を思い出していた。


『この衣は職人の清らかな精神に呼応し、火花や灰をすべて受け付けず、常に神秘的な純白を保ち続ける。』


この火花や灰をすべてを受け付けずというのは、汗や涙なども不純物と判断されるのだろう。そして、常に純白を保ち続けるというのは、体を清潔な状態に保ち、体が受ける熱や冷気を遮断するということだろう。


そうと仮定するのならこの状況にも納得だ。


自分の考えていたことに結論を出し、再度刀の折り返し作業に戻った。


他のことを考えず、折り返し作業をしていると、いつの間にか折り返し作業はすべて終わっていた。


外はすでに尽きが昇っており、俺が刀の制作を始めてから14時間ほどが経っていた。


「時間をかければ、やはり質は良いものになりますね。」


そんなことを思いながら、不純物の一切含まれていない心金と皮鉄を手に取った。


ここからが最も重要な工程だ。


心金と皮鉄を魔力炉に入れて、刀身を作る準備を始めた。魔力炉から取り出してしまえば、そこからは時間の問題だ。早すぎても遅すぎても良くない。絶妙なタイミングで、槌を振り下ろす必要がある。


そして、熱を帯びた玉鋼を取り出し、慎重に槌を振り下ろした。


少し叩き、炉に戻す。そしてまた、少し叩き、炉に戻す。


すると、少しづつ玉鋼が刀身の形に広がっていき、徐々に大部分が完成していった。


10分ほど玉鋼を叩き、細長い刀身が完成した。そこから、刀身の先だけを炉に焚べ、小槌で切っ先を作り始めた。


5分ほどで切っ先が完成した。そうして、切っ先の向いている部分を峰としまた、小槌で叩き始めた。


切っ先と峰が完成し、刀身全体を水に浸けた。


いつもならその後、土置きの作業をするが、今回はしない。


自ら取り出した刀を魔力ヤスリに置き、ゆっくりと刀を研ぎながら、刀に魔力を少しづつ込めていった。


一度、刀に魔力を込めたことがあった。そのときは、魔力操作が未熟だったのか、込めた魔力の量が多すぎたのか、すぐに刀が粉々になってしまった。


その経験をもとに実践した。


魔力操作が上達したおかげで、ミリほどの量の魔力でも十分に操作ができるようになった。そこからは、魔力ヤスリの速度や強度を緩めたり強めたりしながら、刀に魔力を込めていった。


正直、この作業が一番気疲れする。少しでも魔力の量や操作が狂ってしまうと、刀が粉々に割れてしまう。だからこそ、いつもなら数十分で終わる作業が数時間にも及んだ。


魔力を込め、ヤスリで研ぎながら2時間ほど作業を続けていると、勘ではあるが、この刀にはこれ以上魔力が込められないと思った。


そこで作業を終わらせ、もう一度水に浸し、取り出した。


水から取り出した刀は、今まで作った刀の中で一番の出来だった。


刀身は、受ける光すべてを跳ね返し、見ているものの視線を釘付けにしてしまうような魅力を放っていた。


「今までで一番の出来ですね。」


刀身を傾けながら全面に光を当て、刀身が刃毀れや不純物が含まれていないことを確認し、刀を異空間にしまった。


そして、ステータスボードを確認すると、刀の品質が表示され、意図せずガッツポーズを取った。


そこに記されていたのは、〈品質:S+〉だった。通常は、品質は1〜10までで表され、それを超えたものにAとSの品質として表示される。


今所持している最高品質の刀は、AとSとS+の3つ。どれも最高品質である10を超えているため、〈無窮の一刀〉の贄として使用できる。


しかし、使用するのなら、すべてS+で揃えたいという欲が出てしまい、今回いつもと違ったことをメモをしながら家へと戻った。

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