畑作り
苗を持ち帰ってすぐ、凱人は育てるための準備を始めた。
「えぇっと…、野菜を育てるには…。土を盛り上げるんでしたっけ。」
そうして、家の横にある池に向かい、畑の位置決めをした。
家から見て、左からキョベツ3つ、ジョガイモ3つ、ホスパラガス2つをそれぞれ縦になるように植えることを決め、その部分の土を耕し始めた。
「よいっしょと。」
刀を作成してる際、気分転換にいくつか作成した不格好な鍬のうち、一番軽めのものを持ち上げ勢いよく地面へと振り上げた。
ガギンッ
金属と金属が勢いよくぶつかるような音が鳴り、持っていた鍬の柄が根本から折れた。
作成した鍬の柄は、小屋においてあった廃材を使用している。しかし、廃材とはいえそんじょそこらの木よりも丈夫だった。
「いっつ!?」
昔、祖父と刀の鍛錬をしている際に刀を交えたときと同じ感覚がした。骨の芯まで響くような衝撃に、手から鍬を離してしまった。
「地面硬すぎないですかね。まだ手が痺れてるんですけど…。」
地面が乾燥していたか、それとも、もともとそういう土質だったのか。
「池の横ですし、濡らしてみますかね。」
器の変化が起こってから、毎日少しづつ鍛錬をしていた。それにより、これといった魔法は使えるようにならなかったが、魔力操作だけは上達した。
そして凱人は、魔力操作の応用で、保持魔力を物質化させることに成功していた。その物質化した魔力を使用し、池の水をすくって畑とする部分に水をかけた。
物質化した魔力を使用して、液体や固体に触れると、ふれた物質が魔力を帯びるということがわかっている。
液体に触れれば、腐食性・毒性の効力上昇、固体に触れれば、硬度や鋭度の上昇などが見られる。
そのため、池の水に物質化した魔力が触れたことで、浸透度の上昇が見られた。
浸透度が通常の何倍にも上昇したことで、先程まで刃も通らなかった土がフランスパンほどまで柔らかくなった。
「うん。これくらいまでなら、楽に耕せますね。」
そこから30分ほど土と戯れていた。耕し終えた土は、肥料のようにサラサラとしており先程までの硬い土とは比べ物にならなかった。
耕して盛り上げた土に15cmほど感覚を開けて苗を植えた。
「ふぅ~…。久しぶりに土に触れてみましたが、やはり自然というものはいいものですね。」
苗を植えてから、30分ほど池の周りを整備してから家に戻った。
家に戻り苗を植えた頃には、すでに日は沈みかけていた。そして、軽めの夕食を食べ、刀の研磨と整備を終え、ベッドで眠った。
次の日、朝食を食べ水をまこうと畑へと向かうと、苗を植えてから1日で実ができていた。
「この世界の野菜って、1日で実ができるんでしょうか。」
なぜか1日で実が育ったキョベツを収穫し、家へと持ち帰った。持ち帰った野菜は、洗って池の新鮮な水に浸けておいた。
「野菜がここまでの速度で育つのなら、花屋に買いに行きましょうかね。」
財布とさすがにここまでの速度で育つのは気になったので少し土のサンプルを持って花屋へと向かった。
◇
「すみません。」
「この前の苗を買われた方じゃないですか。どうされました?」
「あぁ、すみません。自己紹介を忘れてましたね。私の名前は水篠 凱人と言います。今日は、またいくつか野菜の苗をいただきたいと思いまして。」
「そういうことですか。それでしたら少々お待ちください。いくつかピックアップして持ってきますので。」
そして、花屋の主人は裏へと戻っていった。戻ってきた主人は、たくさんの種類の野菜の苗を抱えていた。
「いくつか種類を持ってきたのでお好きなものを選んでください。それにしても、ずいぶんと早いお買い求めですね。何かあったんですか?」
「あぁ、それなんでしけど…。」
そうして、家で育てた野菜の成長が異常なほど早かったことと、土のサンプルを持ってきたことを伝えた。
「それで、花屋の主人さんでしたら、この土がどういうものかわかるかもしれないと思い持ってきたというわけです。」
「なるほど…。でしたら、凱人さんはお野菜の苗を選んでおいてください。その間に土壌診断をしておきますので。」
「わかりました。お手数かけてすみません…。」
「いいんですよ。凱人さんはこの店の常連にもなっていただけそうですし、たぶん同い年でしょうからね。これもなにかの縁ということで。」
そうして、花屋の主人はもう一度裏へと戻った。その間、凱人は名前だけでどのようなものかわからない苗を見ながら想像を膨らませていた。




