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先程折った心金用と皮鉄用に作った玉鋼をそれぞれで分け、梃子皿の上に必要となる量を慎重に載せた。


心金用の玉鋼を載せた梃子皿を炉の中へと突っ込み、芯まで火が通るのを待った。


大体10分ほど経ったところで、手小皿の上の玉鋼が赤みを帯び、慎重に、しかし素早く機械槌の下へと運んだ。


機械槌で熱した玉鋼を打つと、


ガンッ


という音とともに、不純物を含んだ火花が勢いよくあたりへと弾けた。不純物を含むと聞くと汚いように聞こえるが、実際に目にした者にしかわからないものがある。


まるで、静かな空に咲く花のようだった。


槌で打つたび、儚くも脆い小さな花火が手元から消えていく。それを何度か続けていると、玉鋼から少しづつ赤みが消えていく。そうなれば、玉鋼をもう一度炉に戻し熱していく。


3度ほど同じ工程を続けると、不純物がほとんど出なくなってきた。不純物がほとんどでなくなったことを確認して、近くに用意しておいた切り鏨を赤みを帯びた玉鋼の上へと持ち、槌で鏨ごと玉鋼に打ち付けた。


玉鋼単体で打つよりも重く、それでいてどこか安心を与えるような音がなるとともに、玉鋼に折り目ができた。


折り目が玉鋼の半分ほどに達したとき玉鋼の後ろ部分を槌で押さえ、小槌で勢いよく前部分を叩いた。すると、少しづつ前部分が折り曲がっていき、しまいには折り紙のように半分に曲がった。


その玉鋼をまた炉に戻し、同じ工程を8度ほど繰り返した。この頃には、玉鋼は強靭なものへと変わり、刀の硬さの面影を感じさせていた。


次に皮鉄用の玉鋼も梃子皿へと載せ、同じ工程を今度は15度ほど繰り返した。



折り返し作業を終えた皮鉄は、機械槌で細長い板状に伸ばし、U字型に折り曲げた。心金はこのU字型に曲げた川金の内側にピッタリと収まるよう一回り小さく、やや厚みのある長方形に仕立てた。


刀はこのU字型の皮鉄と暑い長方形に仕立てた心金を組み合わせ伸ばすことで、折れず、曲がらず、強靭な刀へと昇華する。



通常剣とは切れやすく、曲がらないというものか、折れることのないものの二分に分けられる。切れやすいものが良ければ硬く、折れないものが作りたければ軟らかなければならない。


この2つを組み合わせるという制作過程が、刀の切れやすく、曲がらず、折れないという矛盾を解決した方法であり、これによって日本刀独自の強靭さが生まれる。



この2つを組み合わせたものを再び炉に入れ、赤みを帯びてきたところで機械槌の下へと潜らせ、平たく棒状になるよう成形していく。


ある程度棒状になれば、再び炉で熱し、刀の峰と切っ先を小槌で叩きながら作り込んでいく。


切っ先は先端を斜めに切り、小槌で丁寧に形を整えていく。刀と小槌のぶつかる音が体の芯まで響き、体を震わせる。ある程度切っ先が平らに、鋭くなれば、今度は峰を作る作業へと映る、


刀の峰となる部分を前にして小槌で叩いていく。峰を作っている最中、峰と切っ先の境界線が見えないように慎重に整えていく。


刀は西洋の剣とは違って、片刃のため両刃の剣と混合しないよう気をつける。


30分ほど丁寧に作業をしていると、ある程度刀身の形が見えてきた。この状態になればあとは、クライマックスだ。


刀の最後の作業は土置きと焼入れである。刀の殆どには波紋と呼ばれる刀鍛冶それぞれで異なる文様がある。その文様を波紋と呼び、それが刀独自の美しさを生み出している要因とも言える。


耐火粘土や砥石の粉、木炭の粉を混ぜ合わせたものを寝かせ、粘り気が出たものを刀へと塗る。波紋となる部分は薄く、刀の背は熱く焼刃土を塗っていく。この焼刃土も炉の近くに置かれていた。



まず刀の満面に薄っすらと焼刃土を塗り、波紋を作る作業へと移る。刃となる部分には下塗りの上から薄く塗り、それ以外は熱く塗る。この厚さの境界線が波紋へとなる。


刀の片方を焼刃土で塗り終えたあと、もう片方も左右対称になるよう慎重に丁寧に塗り重ねていく。


10分ほど刀とにらめっこをし、塗り終えた頃には額に汗をにじませ息を切らせていた。


刀に塗った焼刃土を眺め、良い模様に鳴ったことを確認して刀を乾かすことにした。窓の近くに刀を倒れないように立て、焼刃土が乾くのを待ちながら炉の前に座っていた。


10分、20分と時間が過ぎ、40分が経った頃焼刃土が乾いたことを確認し、立てていた台座から外して炉の中の赤みを帯びた炭に乾いた刀をゆっくりと差し込んだ。


刀を前後させながら刀全体にまんべんなく熱が通るようじっくりと時間をかけた。


刀全体が赤みを帯び、白い神々しい光を放ったことを確認し、水桶を正面に構え、炉から取り出した刀を一気に急冷した。


ジュッー


と刀を入れた水が音を立て刀の赤みが徐々に失われていった。完全に刀から赤みが失われ、温度が常温へと戻ったことを確認し炉から離れた場所にある魔力ヤスリのある場所へと移動した。


魔力ヤスリに魔力を込めると、ヤスリの上から小さな透明な水の塊が姿を表した。


ぽたん


と水がヤスリに落ち、少しづつ水が広がっていった。全体に広がったことを確認し刀をヤスリに付け、刀身を表面を均一にならしていく。


刀の刃が均一になるように慎重にヤスリで研ぎ、少しづつ波紋があらわになっていった。そうして、刀身に美しい波紋が現れたときハッと息を飲んだ。


薫さんの作った刀には及ばないが、それでも自分が作ったとは思えないほどの良い出来だった。


刀の出来に気分が高揚したが、満足はできなかった。一度薫さんの作った刀を見てしまうと、どうしても満足な気分にはならなかった。そう思い、頬を叩き


「よっしっ。もう一本作るか。」


そう意気込んだ瞬間、勢いよく腹の虫がなった。この世界に来てからまだ何も胃に食べ物を入れていなかったためからだろう。しかし、その誰もが感じる空腹感を刀を作る作業はすべて無に帰した。


「先に食事ですね。」


そうして、作った刀を胸に家へと向かった。


刀を作ることに凱人が心を奪われていた頃、渚沙は普通冒険者学校に通っている生徒が1ヶ月勉強、訓練をしてから望むダンジョンにわずか一週間で潜り始めていた。

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