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第4話:魔法少女 フェイ

 彼女は余程お腹が空いていたのか、さっきまでの警戒心が吹っ飛んだようで無我夢中で兎の肉を食べている。焼いたはじから肉を食べていて、頬がリスみたいに膨らんでいて大変愛くるしい。このまま家で飼いたいぐらいだ…

 作った側としては喜んで食べている姿を見るのは嬉しいものだ。

 自分ももう一切れ食べて見ると鶏肉のような淡白でありながら、微かに野生味のある風味が広がる。ジビエどころか怪物を食べること自体が初めてたが、ジビエならかなりが臭みがあるものと思っていたのだのが意外にも臭みはほとんどない。ローズマリー、タイム、塩、胡椒をしてオーブンで焼けばさらに美味しい料理になるだろう…




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 驚いた…ももの一部とはいえ彼女1人で5kgぐらい食べてしまった…


 あの小さな体にどこに入るのか…不思議だ…


 今まで無我夢中で考える時が無かったがここは俺がいた神社ではない…夢ではないよな…こんなに意識がはっきりしているのに夢なわけがない。異世界転移というやつか…王城に勇者として召喚されたり、使い魔として美少女に召喚されていればこんな目に合わずに済んだのに…運がないな…


 彼女の方を見てみると満足したのか、今にも天にも昇りそうな顔をしている。彼女のことをじっと見ていると、こちらの視線に気づいたのか

 「ご、ごめんなさい…お肉食べすぎちゃいました!」

 もっと見ていたかったのが俯いてしまった…

 「大丈夫!お礼で作ったし、俺は全然お腹空いてなかったから!」

 「あ!まだ、肉あるけど食べる?」

 彼女は恥ずかしそうに首を振った。


「そういえば、まだちゃんと名乗ってなかったね」

「俺はひなた。君の名前は?」


 少しの間、迷うような仕草をした後、小さな声で答えた。

「……フェイ」


「フェイか、いい名前だね」

 俺が微笑むと、フェイは照れたように目を伏せる。


 「気づいたらここにいたんだけど色々と教えてくれないかな…」

 「は、はい…」


 先ほど食べたウサギはコニリオという魔物で鋭い前歯で攻撃するらしい。剥いだ毛皮は肌触りが柔らかく、光沢がありコートや帽子にできそれなりの値段で売れるらしい。本来なら臆病で直ぐに逃げてしまうらしいが弱い相手だと襲うとのこと。


 「うさぎに舐められるとはみじめだ…」

 「え!え…ご、ごめんなさい…」


 次はこの洞窟がどこだか聞いてみようと、みじめさで俯いていた顔を上げた。

 あれ?通路の奥からくすんだ橙色の煙…?が漂ってくる…

 

 「ねえ…あっちから煙が出てるけどあれは何?」

 「煙…ですか…どこですか?」


 見えてない?橙色で結構目立つのに?段々と煙の量が増えてきた。あの煙なんか不気味だな…

 煙の方向に指をさし、

 「あっちに橙色の煙が出てるんだけど見えない…?」

 フェイが訝しげにうなづく。


 ただの煙ならいいが、嫌な胸騒ぎがする。

 煙を凝視しているとその先から低い唸り声が聞こえてきた…


 「フェイ…今のは…」


 フェイの方を見ると青ざめた顔をしていた。


 「ルーポだ…血の匂いに誘われたんだ…」


 「えっ?ルーポ?」


 フェイは俺の袖を掴むと、小さな手に強い力を込めた。


 「まずい……早く……ここ、危ない……!」


  フェイの声には、明確な恐怖が滲んでいた。


  フェイの切羽詰まった様子に、俺も焦り始める。


 「分かった、行こう!」


 俺たちは唸り声のする方とは逆方向へと走った。

 あの煙は何なんだ⁉フェイには見えないと言ってたけど…


 今はそんなこと考えている場合じゃない!逃げないと!



 背後で、くすんだ橙色の煙が、徐々に広がっていった——。


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