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第14話:修道女の涙と治癒の奇跡

ー1層ー 

 リリィの大きな碧眼が、まっすぐに俺を見つめている。


 (な、なんだこの可愛さは……!?)


 真っ白な修道服に包まれた彼女は、汚れてはいるものの、その清楚な雰囲気は崩れていなかった。

 長い金髪がハーフアップにまとめられ、上品で優雅な印象を与えている。

 そんな美少女に、じっと見つめられたせいで——


 「え、えっと……俺は陽。ひなたって言うんだ。」


 思わず言葉が詰まる。


 (やばい、めっちゃ照れる……! 俺、今、ちゃんと自己紹介できてるか!?)


 リリィは俺の名前を聞くと、胸の前でそっと手を組み、ふわっと微笑んだ。


 「陽さん……助けてくださって、本当にありがとうございました。」


 可愛い。

 なんだこの天使のような微笑みは。


 (危うく倒れそうになった……! くそっ、何で俺はこんなに免疫がないんだ!?)


 無駄にドキドキしながら、俺はぎこちなく咳払いをした。


 「い、いや、当然のことをしただけだよ。」


 「あ!リリィはなんでこんなところにいたんだ? 女の子一人で迷宮は危険じゃないか?」


 リリィは顔を曇らせ、唇をかみしめた。

 そして、震える声で語り始める。


 「私は……もともと、他の冒険者様の方々と一緒に迷宮を探索していました。でも……」


 リリィの手がぎゅっと修道服の裾を握る。


 「突然、先程の魔物……ルーポの群れに襲われてしまって……!」


 ルーポ——狼型の魔獣か。


 「パーティーの方々と……戦いました……でも……」


 彼女の瞳に涙が浮かぶ。

 碧色の瞳が揺れ、ポロリと一筋の涙が頬を伝った。


 「やられてしまいました……私だけは……何とか逃げることができましたが……」


 彼女は声を詰まらせ、震える手で涙をぬぐう。


 「……私、何もできませんでした……」


 必死に耐えようとしているのが伝わってくる。

 彼女にとっては、突然仲間を失い、命からがら逃げてきたのだから当然だ。


 「リリィ……」


 俺はそっと彼女の肩に手を置いた。


 「無事でよかったよ。生きていてくれてよかった。」


 リリィの肩が小さく震える。

 それでも、彼女はこくりと頷いた。


 「でも……私のせいで……皆さんが……」


 リリィが再び涙をこぼしそうになったとき、俺はふと、自分の腕に違和感を覚えた。


 (……なんか、腕がヒリヒリする……?)


 左腕を見てみると、そこには深くえぐれた爪痕が刻まれていた。

 おそらく、さっきの戦闘でルーポの爪がかすったのだろう。


 「うわっ……思ったより深くやられてるな……」


 痛みはそこまでないが、血がにじんでいる。

 だが、それを見たリリィの顔が、一気に青ざめた。


 「陽さん! それ……!」


 「え、そんな大袈裟に驚くことでも——」


 「ルーポの爪には毒があるんです!!」


 「は?」


 リリィは慌てて俺の腕を取る。


 「このままでは……! すぐに治療しないと……!」


 彼女は両手を傷口にかざし、静かに祈るように呟いた。


 「聖なる光よ、傷を癒し、穢れを祓え……ヒール」


 すると、彼女の手から柔らかな光が溢れ、俺の腕を優しく包み込んだ。

 暖かい感触が広がり、じんわりと傷口が塞がっていく。


 「……おお……すごい……!」


 俺は思わず感動する。

 この世界には魔法があるのは分かっていたが、実際に治癒魔法を受けるのは初めてだった。


 「……はい、傷は塞がりました。でも、体内に毒が残っているかもしれません……」


 そう言って、リリィは懐から小さな瓶を取り出した。

 中には透明な液体が入っている。


 「これは解毒薬です。飲んでください……」


 俺は受け取ると、一気に飲み干した。


 「……苦っ!!」


 思わず顔をしかめるが、リリィがほっとした表情を浮かべる。


 「これで、もう大丈夫です……」


 リリィは自分が危険な目に遭いながらも、俺のことを必死に心配してくれていた。


 「ありがとう、リリィ。おかげで助かったよ。」


 俺がそう言うと、リリィは頬を少し赤らめながら、微笑んだ。


 「いえ……陽さんが助けてくれたお礼ですから……」


 その言葉に、俺は思わず照れながら頭をかく。


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