第13話:狼の襲撃と金髪の修道女
ー1層ー
「ふぁ……」
フェイは焼き鳥を食べ終えると、ほっとした表情で小さくあくびをした。
「フェイ、疲れただろ。俺が見張って奥からゆっくり休めよ。」
「陽さん……すみません……少しだけ……寝させていただきます……」
フェイは満足そうに目を閉じ、そのまま静かな寝息を立て始めた。
魔法を使って戦い、食事をして、お腹がいっぱいになったことで眠気が襲ってきたのだろう。
(また5kgぐらいあったのに食べ切ったよ…
それにしても魔法使いはみんなこうなのか?でも、食堂に行った時に見た魔法使いはそんなに食べてなかったような?
そういえば始めっからドタバタしていてまだあまり話してなかったな…大空洞に戻ったらゆっくり話して見るか。)
俺は火の番をしながら、寝顔のフェイをぼんやりと見つめると、その時だった。
「きゃああああああああ!!!」
突然、鋭い悲鳴が洞窟内に響いた。
俺はすぐに立ち上がった。
「何だ!?」
悲鳴がした方向に目を向けると、奥の通路から金髪の少女が走ってくるのが見えた。
少し土で汚れた白い修道服に身を包み、ベールから伸びている長い金髪が揺れている。
碧色の瞳は恐怖に震えており、今にも泣き出しそうな表情だった。
その後ろからは、狼のような魔物が勢いよく飛びかかろうとしていた。
(まずい! あれは……!)
少女は必死に逃げていたが、焦っていたせいか——
「きゃっ……!」
ガッ!
足元の石につまずいて転倒してしまった。
「くそっ……!」
このままだと、少女は狼に食い殺される!
俺はすぐに地面に落ちていた石を拾い上げ、魔物に全力で投げつけた。
ゴンッ!!
「おいっ!! 俺が相手だ!!」
投げた石が狼の側頭部に直撃し、魔物が一瞬ひるむ。
鋭い牙を剥き出しにして、怒りの唸り声をあげると——
俺のほうに向かってきた。
「よし……! かかってこい!」
その瞬間——
俺の視界が赤く染まった。
狼の魔物は強靭な脚で地面を蹴り、一気に飛びかかってくる。
(来る!!)
俺は反射的に横へ跳び、魔物の攻撃を紙一重で回避する。
魔物は俺の横を通りすぎ、地面に爪を突き立てた。
すぐに次の攻撃が来る——そう思った瞬間、また視界の端に赤い靄が広がる。
(やっぱり! 攻撃のタイミングがわかる!!)
今度は大きく開いた狼の口が、俺の胸元を狙って飛びかかる。
「今だ……!」
魔物の突進に合わせて、剣を構えた。
狼が飛びかかる瞬間、俺は前に踏み込んで剣を突き出した!
ズバァッ!!
鋭い手応えが伝わる。
狼の胸元に剣が深く突き刺さり、魔物は勢いのまま地面に転がった。
「はぁ……はぁ……!」
俺は剣を引き抜き、構えたまま魔物の動きを見守る。
が、狼はそれ以上動かなかった。
倒した——俺の力で。
「や、やった……!」
興奮と安堵で、俺は息を整えながら剣を握りしめる。
すると——
「た、助けていただいて……ありがとうございます……!」
先ほどの少女が、恐る恐る俺の方へ近づいてきた。
改めてよく見ると、彼女は迷宮に潜っていたせいか服は汚れていたが、ベールから覗く肌は新雪を思わせる白い肌をした美少女だった。
大きな碧眼が潤んでいて、安堵の顔をしていた。
「だ、大丈夫か? 怪我はない?」
俺がそう尋ねると、少女は小さく頷いた。
「はい……なんとか……」
彼女は両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、深々と頭を下げる。
「私……リリィと申します……本当に、ありがとうございました……!」
俺が少し気恥ずかしそうに頷くと、彼女は俺をじっと見つめ——
「……あの……お名前を……お聞きしてもよろしいでしょうか?」
まるで救いを求めるような目をしていた。




