第5話:窮地
ピンチは突然訪れた。
途中までは順調だった。
今回のクエストは『古代遺跡探索』。未知の遺跡。情報がないためリスクが読みづらい依頼だ。
何もない可能性もあるし、何かがある可能性もある。僕たちは慎重に歩みを進めた。
レイネの腕前は見事だった。無音で放たれる正確な一撃は相手に悟られる前にいくつものリスクを消し去っていった。
だが、そいつは突然現れた。
「ダークウルフだ!」
まずい。この洞窟の暗闇で、真っ黒なオオカミは背景に溶け込んで見えにくい。さらにその動きは素早く、その牙は鋭利だ。
最悪なことに警戒が少し遅れた。アイリスが盾を構えるより先に、ダークウルフはまっすぐ僕に突っ込んでくる……!
「ガアウッ!!」
暗闇の中、命を刈り取るための牙が僕に襲いかかる。
僕はその一撃を辛うじて左腕を犠牲にして受け止めた。
アイリスがすぐにカバーに入る。
痛みをこらえつつ、ヒールを詠唱する。辛うじてヒール1回分、左手は動いてくれた。
左手が息を吹き返す。……まだ動ける。
「……あなたの目が良くて本当によかったですわ」
ヒールの詠唱の間、アイリスは僕のそばを片時も離れることはなかった。でもそのアイリスさえ、僕に視線を向ける余裕はない。
ダークウルフはいったん距離を置き、再び暗闇へと溶け込んだ。
暗闇に近い戦場で、高速移動する漆黒の敵。あまりの速さに目で追うのがやっとだ。そしてついに、ダークウルフは狙いをつけ走り出した……!
真っ黒な影が僕に向かって真っすぐ迫ってくる。
(……次は左手1本じゃ済まないっ……)
その時レイネの放った矢が、立ちすくむ僕を、超スピードで追い越していった。
「グギャアアアアッ!!」
そのレイネの矢に射抜かれ、ダークウルフは絶命した。
「よく当てたね……助かったよ」
「いやー、あたしは見えてなかったのよ、敵は」
「え?」
「……見えてたのはあんたの視線の先。助かったよ、ほんとに」
こうして何とか帰還した時、僕たちの手元に残っていた矢は、たった3本だった。
ノクターンノベルズにて、同じ作者名で連載中。




