第4話:ゴブリン討伐依頼と僕たち
「……今日は薬草採取依頼なしか」
依頼の掲示板には沢山の依頼が貼ってある。ただ運悪く採取系の依頼が今日はなかった。
立ち尽くす僕たちの前で、新しい依頼が1枚追加された。
「ゴブリン討伐……ありきたりですわね」
「受ける?」
「もちろん……受けませんわ」
「だよねぇ……」
ゴブリンは群れで行動する。盾は一方向からの攻撃しか防げない。
倒れないなら、倒せる……それは、倒れるなら、倒せないと表裏一体だ。
「今日は依頼は諦めましょう。……それよりも戦力の増強が急務です」
異論はなかった。ゴブリン討伐依頼さえこなせない現状は、お世辞にも十分とは言えない。
「とはいえ……あてがないのも事実なんだよなぁ」
今の僕たちは『ゴブリン討伐依頼さえこなせない』欠陥パーティーだ。そんなパーティーに命を預けられるか? そう考えると戦力増強にはしばらく時間がかかりそうだ。
「あてでしたら、ないこともないのですが……」
「本当?」
「私たちと同じく、パーティーを追放された知り合いが一人います」
アイリスからその人物の特徴を聞いた僕は、すぐさまスカウトに向かうことに決めた。
「久しぶり、レイネ」
「あ、アイリスじゃない、久しぶり。隣の人は?」
「今ふたりでパーティーを組んでいるところよ」
「へぇ、よかったじゃん! あーあ、あたしも早くパーティー見つからないかなぁ……」
アイリスが紹介してくれた子……レイネは素直に友人を祝福している。
レイネ本人も辛い境遇に今置かれているはずなのに、仲間の幸せを喜べるあたり、ふたりは仲が良いのだろう。
「パーティーなら、ここにあるよ」
「え?」
「あなたのことを教えたら、どうしてもスカウトしたいんですって」
「ええっ!?」
レイネは半信半疑みたいだ。いや、疑ってる方が多いかな。
でもそれは冒険者として正しい判断だ。美味しい話には裏がある。命がけの冒険の世界ではなおさらだ。
「理由を聞かせて。あたしを誘った理由」
彼女の目が狩人のそれになる。本気だ。
「まず、僕はヒーラー。知っての通り彼女はタンク。耐えることはできても倒すのに時間がかかる」
「40点。それだけならあたしじゃなくてもいい」
「メイスは遠くの敵に届かない。飛び道具が必要だ」
「65点。マジシャンでもそれは出来る。……まあマジシャンなんてそうそう転がってないけどね。70点かな」
「アーチャーの矢は魔法の詠唱より、速い。それに音が出ない。受ける側にとってこんなに厄介なことはない」
「っ!!!」
「それに、今きみの弓を見た。確かに弓はボロボロだけど……弦がちゃんと張ってある。腕が確かだってのがすぐにわかったよ」
レイネはしばらく黙った。そして。
「あー! 負け負け! あたしの負け! 120点! 何その口説き文句! 弓使いたらしのプロ?」
満開の笑顔を見せてくれた。
「アイリスさぁ、どうやってこんな人見つけてきたの?」
「ふふっ、私も『見つけられた』んですわ」
「そっかそっかぁ……うん、納得だねこれは」
「ってわけで、その賭け乗ったよ! オールイン!」
「レイネと一緒に冒険できるなんて、楽しそうね」
「おうおう! 楽しくしようじゃないの!!」
ヒーラー・タンク・アーチャー。ようやく最小規模のパーティーがここに産声を上げた。




