第3話:まずは薬草採取から
最初に僕たちが受注したクエストは薬草採集だった。
ヒーラーの悲しい所だ。薬草採集ですらひとりでは受けられない。野獣一匹に襲われた時点で詰みだから。
でも今は隣にアイリスがいてくれる。そのことが本当に心強い。
日銭稼ぎの薬草採集の途中、アイリスが声をかけてきた。
「あなた、目がいいんですのね」
「え? そうかな?」
「近くの薬草も、遠くの獣の痕跡も見えています。それだけの目があるならば盾と武器を持って戦えるかもしれません。
盾は持つだけでは無意味で、相手の切っ先を捉えてこそ意味があります。
あなたの目なら相手の切っ先も簡単に捉えられるでしょう。盾の扱いなら教えられますよ」
「うーん……残念だけどヒールの詠唱には両手が必要なんだ……」
「あら残念。せっかくあなたに手取り足取り教える機会があるかと思ったのですが」
残念と言いながら、彼女は少し嬉しそうだった。
「ん……何か来る」
「本当に目がいいですわね。私があなたに手取り足取り教えてもらおうかしら」
アイリスが大盾とメイスを構える。僕も念のために詠唱の構えを取った。
薬草採集は僕たちに向いたクエストである。
倒すべき敵は存在しないが、危険は見えない形でそこにある。盾とヒールはその危険に強く対応できる。
僕たちは指定の薬草と、急に襲いかかってきた野獣のお肉を少し持って家路についた。
「このお肉、美味しいですわね……」
「フレイムリザードの肉は焼き立てだと熱々で香ばしくてたまらないね」
文字通り熱々の夕飯を食べながら、僕たちは語り合った。
「それにしても、あなたは本当に目がいいですわね。何かコツとかありまして?」
「うーん……。コツと言っても……。前のパーティーでも足手まといになってたし」
「あなたほどの目があれば足手まといにはそうならないと思うのですが……」
「脅威が見えていたとしても、安全な場所にたどり着けないと意味がないんだ。
ただですら火力で貢献できないんだから、足を引っ張らないようにって思ってたんだけど……」
「…………」
しばらく沈黙が流れた。
「……わかりました」
アイリスがそう言って真剣な顔をする。
「私が、あなたの安全な場所になります」
決意に満ち溢れた表情だった。
「あなたのヒールがある限り、私は絶対に倒れません。……倒れなければ、倒せます。きっと」
ノクターンノベルズにて、同じ作者名で連載中。




