おまけ2:ある雨の日
「みんな! はやくあっちに! 小屋があるよ!」
急に降り出した雨。天候操作チートなんてあるわけもなく、僕らは遠くに見つけた小屋に向けて、全力で走っていた。
「はぁ……とりあえずここで雨をしのごうか」
「屋外の依頼の怖いところですわね……」
結局みんなぬれねずみだ。こればっかりはどうしようもないのだけど。
「あー! 服が張り付いてうっとうしいっ!」
「落ち着いてレイネ。何か乾かす手段があればいいのですが……」
「薪とかなさそうだよ? どうする?」
「あ、でしたらわたしが熱球を出しますっ。詠唱にちょっと時間がかかりますけど……」
確かに雨に濡れた服は重く感じる。体温も奪うし乾かさないと……。
そこで、僕には『見えてしまった』。
最初にそれに気が付いたのはレイネだった。
「あっれぇー? アンタ、あたしたちのボディライン、見たいのぉ?」
ぎくうっ!
「どうしよっかなー。でも隠すものもないなー。どうしよー?」
レイネが挑発するような言葉を鋭い矢のように投げつけてくる。
「や、やめなさいレイネっ! あ、ああっ、どうか見ないでくださいませぇっ!」
アイリスはそれをたしなめつつ、とても恥ずかしそうにしている。
「えー? でもこれって『ふかこーりょく』じゃない?」
ステラはあっけらかんとした感じだけど、一瞬見えたその身体のラインは僕にとって十分刺激的だった。
「…………」
フルールは詠唱に集中している。見られているかもしれない自覚すらないみたいだ……。
「ご、ごめんっ!」
「おやおやぁ? 何に謝ってるのかなぁ? 教えて教えてー?」
「も、もうレイネっ! お願いだからやめてっ!」
「あはははは、別に気にしないってー」
「……はい、詠唱終わりましたっ。乾くまでしばらくかかるかもしれませんが……」
あったかい光を放つ熱球が僕たちを照らす。
でも、照らすってことはますます見えやすくなるってことで……。
「うわあああっ!」
僕は慌てて目をつむる。
……それでも感じられる『気配』は断つことができない。何よりも『見てしまった』光景も消すことができない。
熱球で熱せられて乾いていく蒸気と、4人の気配がくっきりと感じられてしまう。
「……あれ? どうしたんですか一体」
「不思議だねー? どうしたんだろうね一体?」
「レイネっ! 聞きなさいレイネってばぁ!!」
「あははー。なんか楽しいねっ!」
熱球がじわじわと僕らの服を乾かしていく中、僕は焼け付きそうな理性に対して『ヒール』ができないことに、心の底から苦しみ続けるのだった。
ノクターンノベルズにて、同じ作者名で連載中。




