↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/14

おまけ:後方支援

 その日の依頼は、ヒーラー指名の依頼だった。


 大型のボスをともなう、魔物の大量発生が起きたらしい。それ自体は討伐されたものの、ケガ人の数が非常に多いらしく、そのため出来るだけ多くのヒーラーが欲しいとのことだ。

 断る理由などない。僕はその支援のために出かけることにした。




「……先方の指名はヒーラーだけだから、ついてこなくてもいいんだよ?」

「えー? だって面白そうじゃない! ピクニックピクニック!」

 ステラは陽気に鼻歌を歌っている。

「まあそれに、アンタがいない冒険っていうのももう考えられないしね」

 まあレイネのいうことも一理以上にある。ヒーラーなしの冒険は、理屈の上では不可能ではないが、もし何かが起きてしまった時には即座に大問題に繋がる。

「それに、何かできることがあったらお手伝いしたいですっ」

 フルールはけなげな姿勢を見せている。確かにヒーラー以外にも人手が必要な場面もあるかもしれない。

「それに……あなたの側が、一番安心できますから」

 あたりの様子に気を配りながら、アイリスがそう言ってくれる。確かに僕も、みんながいてくれれば安心だ。




 僕がパーティーを連れてきたことに先方は驚いていた。代金はヒーラー分しか払えないことをすまなそうに伝えてきたけど、その点はこちらも了承済みのことを伝えると、よろこんで受け入れてくれた。




 現場に着いたみんなは、思った以上の働きを見せてくれた。

「お兄さんっ、ケガ人運んできたよっ!」

 ステラが軽々とケガ人を運んでくる。僕はすぐさまヒールをかけた。

「済まねえ……助かったよ」

「いえいえ。あくまで応急手当ですからお大事にしてくださいね」

 なかなかの体格の大男だ。彼がケガをするような戦場だ。かなり熾烈な戦いだったのだろう。

「んじゃ、次の人運んでくるねー!」

 疲れを感じない足取りでステラは歩いていく。ケガ人の輸送は重労働のはずだが、ステラにとってはそうでもないらしい。


「ちょっと待って、何かが近づいてきてる。アイリス、警戒お願い!」

「分かりました!」

 レイネの号令でアイリスがメイスと盾を構える。

「レイネ、目が良くなった?」

「おー、さっすが見えてるねぇっ!」

 僕がヒールに集中していたのもあるが、レイネは僕より先に何かの気配を察知していた。

「いったいどうして?」

「アンタの視線の置き方を見てたの! 目はマネできなくてもさ、視線の置き方はマネできるからね!」

 なるほどそういう事か。


「気配はフレイムリザードでした。早めに対処できてよかったです」

「おー! アイリスお手柄じゃん!」

 それは危ない所だった。万が一救護拠点にブレスが引火しようものなら大変なことになるところだ。

「危なくなかった?」

「レイネが気配の方向を教えてくれてましたから。気づかれる前に倒せたのは良かったです」

「えっへへー。それほどでもぉ?」

 アイリスとレイネ。やっぱり二人は仲がいいんだなって思わされる。


 みんなの働きで予想以上の効率で治療が進んでいったが、ある誤算があった。

「……困った、もう魔力が……」

 当然のことながら人の持つ魔力は有限である。ゆっくり休めば回復するのだが、僕の魔力は平均ちょい上ぐらいだ。他のヒーラーも何人か既に魔力切れを起こしている。


「……あの、わたしの魔力でよければ分けましょうか……?」

 フルールがそう告げてくる。

 他人に魔力を与える行為は可能ではあるが、効率の悪い行為だ。与えようとする手順の中で、大部分の魔力が逃げて失われてしまう。

 ……だが、フルールの魔力そのものは僕よりずっとずっと多い。効率が悪かったとしても、支えになってくれそうだ。


「じゃあ、魔力をお分けしますね……」

 フルールが僕の手を握り、ゆっくりと魔力を流し込んでくる。

 尽きかけていた僕の魔力が、満ち溢れてくるのを感じる。


「……どうでしょうか?」

「すごいよ! これならまだ多くの人を癒せそうだ!」

「よかったですっ! 魔力が切れそうになったらまた言ってくださいね!」

 なんと、あれだけの魔力を分けておいて、フルールの魔力にはまだ余裕があるようだ。底知れない魔力容量だ。フルールが仲間になってくれたのは本当に幸運だったとしか言いようがない。




 そうして他のヒーラーさんとも協力した結果、ケガ人全員にとりあえずの治療を行うことができた。先方は大喜びで、パーティー全員分の給金を支払ってくれた。


「お役に立ててよかったですねっ」

 フルールは本当に嬉しそうだ。

「でもさー。ケガしてた人たち、うちらより結構強そうだったじゃん? うちらもまだまだだねー」

 ケガ人を直接運んでいたステラは、よく現実というものを見ていたらしい。

「でも、無理は禁物ですよ。焦りは冒険者最大の敵ですから……」

 アイリスはいつもと変わらない様子だ。その変わらなさこそが、彼女の強さの元なのだろう。

「でも給金たっぷりもらえたよねっ! 今夜はパーティーしない?」

 レイネは現金だ。……まあ損得勘定も冒険者の大事な技術、ではあるか。




 今日のクエストも無事達成できた。明日のクエストも、その先も。一つ一つ焦らずに達成していこう。僕たちなら、きっとできる。



ノクターンノベルズにて、同じ作者名で連載中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。