第11話:堕ちた栄光
2度目の復讐に来たかつてのゼフィルは、かつての栄光の面影すらないほどに落ちぶれていた。
「今度こそお前をぶっ倒してやるぜぇ!!」
威勢よく叫んだゼフィルが引き連れているのは100人を超えるごろつきの群れだった。
「あら、お仲間さんはどうしたんです?」
「ハッ! あんな役立たず追放してやったぜ!!」
「……単に逃げられたんじゃないでしょうか」
……大いにあり得る。
よく見れば両腕にも包帯が巻いてある。あの状態ではもはや神速チートすら使い物にならないだろう。
「かかれぇ!!」
ゼフィルは神速チートを使わないようだ。……なるほど、もはや攻撃に使えないのであれば、レイネの狙撃に対して回避として使うつもりなのだろう。
だがかわいそうなことに、もう彼に戦術上の意味はない。
勢いよく突っ込んできた一番手は、当然のようにアイリスの盾に止められて、そのままメイスの反撃を受けて沈んだ。
「さあ、次は誰です?」
「なにをやってる! まとめてかかれぇ!!」
今度は3人同時に突っ込んでくる。だがごろつき3人程度の攻撃なら、アイリスは十分にそれをさばける。
「おおっと! こっちにもいるのを忘れないでよっ!」
ステラのフレイルがごろつきの無防備な背中を叩きつける。盾があっても防げない攻撃を背後から避けられるわけもない。
その姿を見たごろつきが明らかに動揺し始める。
「3人でダメなら10人でかかれ! 何のために頭数そろえたと思ってる!!」
ただのごろつきにそんなチームワークがあるわけもない。それに戦おうともしないリーダーの指図に従って死地に飛び込むやつもそういない。
「俺は逃げさせてもらうっ!」
「おい! 待てぇっ!!」
逃げだそうとしたごろつきを止めたのは、ゼフィルではなかった。
「ぐああぁっ!!」
「はい、残念。逃亡禁止ーっ」
背中を見せた敵をレイネが見逃すわけもない。既にレイネの弓には当然のように二の矢が準備されている。
僕たちをとり囲んだはずのごろつきは、もはや事実上『包囲されていた』。
もはや誰も攻めようともしない。逃げようともしない。
そして、時間は僕たちの味方だった。
「みんな、フルールの近くに!」
僕の号令でみんながマジシャンの近く――この場で唯一の安全圏に退避する。フルールの詠唱が完了した瞬間だ。
フルールはそれを解き放つ。それは恐ろしいまでに美しい冷気の華だった。
「な、なんだとぉっ!?」
神速を使おうにも、冷気の流れには避ける隙間もない。ゼフィルとごろつき達の手足はたちまち氷漬けになった。
「う、うまく行きました……」
「ち、畜生っ! お前なんでこの力を前は隠してたんだ!!」
「か、隠してたんじゃありません!」
「そうだよ。『隠してた』んじゃない、『隠れてた』んだ」
「そうですね……。見つけてくれたのは、この人です。だから、わたしを見捨てて逃げ出したあなたたちには、何の義理もありません」
「そ……んな……」
ゼフィルの最後のプライドが折れる音がした。かわいそうに、彼の凍り付いた足は倒れることすら許してくれない。
その内に衛兵が到着し、ゼフィルご一行はまとめて連行された。騒ぎの大きさから推測するに、もう会うこともないだろう。
ノクターンノベルズにて、同じ作者名で連載中。




