08たねをうえる
森の中をゾウの半獣人パオとミアが並んで歩いていた。
どこまでも続く深い緑、降り注ぐ光は木々や葉に遮られると小さな光しか地面まで届かない。
「ここを歩いているとさ」
話はじめたのはパオのほうだ。
「うん」
「昔住んでいた森を思い出す」
「そうなんだ」
「背のたかーい木がいっぱいあって、食べれる葉っぱとか木の実がいっぱいあった」
「今はないの?」
「火事でなくなっちゃった」
そういえばパオは数年前にこの近くに引っ越してきたことをミアは思い出していた。
身体の大きなゾウの半獣人の存在が目立たないわけもなく、そのときは大きな人がきたなぁと思っていたことを思い出す。
「たいへんだったね」
「うん。おうちとか森が焼けて悲しかった」
そんな話を聞いて、ミアはその場にしゃがみこむと静かに涙を流した。
「かわいそう。おうちがなくなっちゃったり、森がなくなっちゃうと思ったら涙が出てきた」
「私も思い出したら涙が出てきた」
「うわぁーん」
「わぁーん」
◇
翌日、大きなバスケットを手にしたミアは森の中へと入ると木の実や様々な植物の種を拾って歩いた。
少し経ってからパオも姿を現すと、二人してバスケットに拾った実や種を放り込んでいく。
たくさん拾っては放り込み、少し疲れたら木陰で休みながらパイを食べ、また拾ってはバスケットに詰め込んだ。
「いっぱい取れたね」
「うん」
「これをね、パオちゃんがいた森に植えに行こ。きっとまた森ができる」
「何年くらいかかるかなぁ」
「わかんない。おとなになるくらいにはできるんじゃない」
「できるかなぁ」
一度アリカの家へと二人で戻ると、それからはアリカがお隣の農家のスヌープに連絡するとパオがいた森まで荷馬車を出してくれる運びとなった。
舗装されていない砂利道を荷馬車がゆっくりと走る。
荷台にはパオとミアが大切そうに二つのバスケットを抱え、その傍ではアリカが風を感じらながら本を読んでいた。
「あっ」
パオが口を開く。
「なぁに?」
「バネネの種もあればよかったなって。パオ、バネネ好きだから。森にバネネがいっぱいあったらいいな」
「いいね。ミアもバネネ好き」
「おいしいよね」
「うん」
「パオんちはもうないけど、たくさん木とか葉っぱとか果物が育つといいな」
「ミアも手伝う」
「ありがと」
「うん。ミア治癒魔導士さんだから」
「じゃぁ、パオも治癒魔導士なろうかな」
「うん、一緒にやろ」
パオがいた森につくまであと半日はかかるだろう。
手綱を引くスヌープが誰にいうわけでもなく呟く。
「バネネはいいよな。実から酒が造れるし、葉から煙草も作れる。あの味が懐かしいぜ」
手綱を操り、森ではない方向へと馬たちを進めた。




