06さんすうのじかん
「アリカちゃん、しゅくだい教えて」
さんすうの教科書を見せつけながらミアはアリカにそう言った。
「えぇ、いいわよ。なにがわからないの?」
テーブルに教科書とノートを開きペンを握る。
すでに一通り宿題は終えていたが、ミアはあえてアリカに問うた。
「なんで一たす一は二なの?」
「ん-、どうしてかしらね?」
筆箱からもう一本ペンを取り出し、左右の手にそれぞれのペンをもつミア。
「ペンが一本と一本で二本」
「そうね」
ペンを置き、今度は左右の指先に青い炎のような魔力を宿す。
「魔力がひとつとひとつ」
「えぇ」
指先をくっつけると魔力はまざりあって一つの大きな塊へと変化する。
「ひとつとひとつを足したのに、またひとつになった!」
「ふふ、ものによって答えは違うのね」
「ちがう」
「ペンは一たす一で二になるけど、魔力は一たす一でまた一になったわね」
「そうでしょ。不思議」
子供ながらの屁理屈にも思える着眼点ではあったが、アリカはそんなミアを微笑ましく思う。
そしてその気づきは大切な視点にも思えた。
「総量は増えたけど、見た目的には一だものね」
「ねー。ものによっては一たす一でも二にならないんだな!」
「ふふ、その通りね」
「この前ね、ガムを二つ口に入れて噛んでたの。そしたら口の中で一個のガムになったの」
「それも一たす一なのに一になったのね」
「うん」
「それでどうなったの?」
「シアちゃんがね、チョコレートを一緒に食べるとガム消えるよっていうから試してみたの。そしたらね、チョコもガムも消えたの……」
「あらあら」
「一たす一が一になったとおもったら、さらに一を足したらゼロになった……」
「ふしぎね」
「先生とか教科書の通りにはいかない……ものごとは想像とは違った結果になるのかもしれない……」
「ミアちゃんったら哲学的」
「ミアは今十歳でしょ。もしかしたら……つぎは十一歳じゃなくて、九歳になったり、ゼロ歳になるかもしれない」
「まぁ、ミアちゃんがまた小さくなっちゃう」
「なっちゃう……」
「たいへんね」
「たいへんだ。アリカちゃんは今何歳」
「えーと……何歳だったかしら? 十七歳あたりを何回か行き来して、そのあとまた歳をとり始めたから……たぶん、二十代前半だけど、実際に生きた年数は数百年かしら?」
「途中で歳減った?」
「減ったわね」
「やはり一たす一はあてにならない……」
「ふふ、そうね」
「来年九歳になってたらどうしよう。シアちゃんやジモラちゃんたちと歳が離れちゃう」
「ちゃんと十一歳になれるといいわね」
「ね。一緒にいたいな」
教科書とノートを閉じ、本棚にしまってあったアルバムを取り出す。
開けばそこにはシアやジモラ、アリカと過ごした日々の写真が大切にしまわれていた。
写真を見つめながら指で毛先をいじる。
「ミア髪伸びた」
「そろそろ切る?」
「もっと伸ばす」




