05ドンポッポ
何十日かに一度、ミアにはとても楽しみな日があった。
それは町にある高級スイーツ店“ドンポッポ”でスイーツのコースを食べることである。
今日はその楽しみにしていた日。
おでかけするときはドレスコードを護って普段とは違うふわふわなドレスを着るのもまた楽しみであった。
頭におおきなリボンを結んでもらい、いつもとは違う光沢のあるパンプスを履くのも今日が特別な日であると感じられてとても気持ちがよかった。
「よし、これで全部用意できたわね」
「メェ」
ドレスを纏ったアリカに羊っぽい声で答える。
「ハンカチはもった?」
「メェ」
「お財布は?」
「メェ」
「かわいいお顔は?」
「メェ」
「おなかは空いてる?」
「メェ」
「それじゃぁ行きましょうか」
「メェ」
◇
ドンポッポはその名の通り鳩が営むスイーツ店である。
世界中のスイーツを食べて研究したという鳩の獣人が開いたスイーツ店で提供されるコースはどれも外れがない。
食べればほっぺが蕩けて落ちて、思わず出てしまうため息まで美味しいという。
年頃の女子だけでなく、美食家もこぞって集まる有名店である。
重厚な扉の前には燕尾服を纏った鳩の獣人二人が客人たちを出迎える。
「いらっしゃいませ、ご予約はされていますか?」
「アリカとミアで予約を」
「お待ちしておりましたアリカ様、ミア様、お席までご案内致します」
「いきましょう、ミアちゃん」
「メェ」
用意された個室は一切の窓がなく、代わりに南国のような風景が描かれている。
ミアとアリカが着席すると、描かれた風景が次第にリアルな質感となりやがて本物同然の景色へと変わっていく。
心を落ち着かせる波の音、そして柔らかな日差しさえ感じそうな空気感。
「本日はお越しいただきましてありがとうございます。ご用意させていただきましたウェルカムドリンクは……」
テーブルの上には二つの小さなグラスが置かれている。
キラキラと夜空に輝く星でも詰め込んだような液体が入っており、その液体の底にはルビーのような果実が沈んでいる。
このドリンクはどこで取れたものをうんちゃらかんちゃら、それをどう加工して、液体にして。
鳩の獣人の説明は続いたが、ミアは構わずにドリンクに口をつけた。
「うんメェ」
「喜んでいただけて何よりです。ではこれより品物をお持ちします。それまで南国の空気をお楽しみください」
◇
「今日もおいしかった。うんメェ~」
「ふふ、美味しかったわね。また来ましょう」
帰り道、二人は馬車に揺られながらのんびりと自宅を目指す。
ミアの胸にはお土産にもらった小さなポーチを大事に抱えている。
なかには土産としてランダムでスイーツが入っているのだが、それを持ち帰って家で食べるのもまた楽しみであった。
しかし、今日のミアはそれを自分で食べようという気はない。
「お土産明日学校に持っていくの。シアちゃんとジモラちゃんにあげるの」
「ふふ、ミアちゃんは優しいのね」
「ミアいっぱい食べたから。シアちゃんとジモラちゃんにもちょっとお裾分けしたげるの。ミアはレディーだから。できるいい女だから」
「ふふ、そしたら私のぶんも明日持っていって。みんなで食べたらきっともっと美味しいはずよ」
「いいの? わーい、明日お弁当のとき食べるね」
「うふふ」




