03お弁当
「うおおおお……」
授業中、ミアは悲しくて泣いていた。
「うおおお……」
「ミアさん、どうされましたか」
センザンコウの獣人の先生がミアに声をかけるがミアは答えずに泣き続けていた。
一限の授業からお昼になるまで、ミアはひたすらに泣き声をあげて机に顔を伏せると泣き止むことがなかった。
授業が終わるとミアの席の隣にシアが腰を下ろした。
「ねぇー、いつまで泣いてるの。なんで泣いてんのよ」
「うおおお……」
「泣いてちゃわかんないでしょ」
「うおおお……あのねぇ」
やっとあげた顔は涙で泣きぬれて目を赤くしている。
ただでさえ垂れ目で薄目なミアの目は赤くなってただの線になってしまっていた。
「なによ」
「今日はアリカちゃんがグラスパイとベリーパイとシードパイを焼いてくれたの……」
「よかったじゃない」
言いながらシアは持ってきたお弁当の蓋を開ける。
中にはエルフの里で取れた穀物や果実が詰め込まれて良い香りを発している。
「うおおお……あんまりおいしそうだったから、学校に来る途中に全部食べちゃったのぉ……うおおお……」
「ばっかじゃないのあんた」
「うおおお……お昼なのにお弁当がないよぉ、アリカちゃんのパイがないよぉ」
「食いしん坊なんだから。ほら、ゴムの実一個あげるから泣き止んで」
「本当? わーい」
お弁当からひとつまみ、ゴムの実を渡すとミアはやっと涙を枯らして実をほおばった。
「今度からは来るまでに食べないことね」
「次からはもっとたくさんお弁当持ってくる」
「あんたそんなにたくさん食べてたらお腹ぷにぷにになっちゃうわよ」
「いいの。だってママが言ってたもん。草食の獣人は胃腸が長いからお腹がぷにぷにになっちゃうんだって。しかたのないことだって」
「へぇ、そうなんだ」
「そうなの。あ、そうだ」
「?」
「アリカちゃんにお手紙書く」
「なんで今?」
「アリカちゃんにもらったノートがあるんだけどね、それに字を書くとすぐアリカちゃんに届くんの」
「便利」
「でしょ」
リュックの中から一冊の古いノートを取り出すと、ミアはミミズのような字をノートにつづった。
「アリカちゃんへ。パイをぜんぶ食べちゃいました。もっとパイがほしいです」
「なんだか強欲ねぇ」
「じゃぁ、なんて書けばいいの」
「来るまでに食べちゃったことと、ごめんなさいくらい書いたら」
「わかった。えぇと、学校にくるまでにあんまりいい匂いがしたから食べちゃいました。ごめんね。おいしかったです」
ノートに文字を書き終えると、つづった文字がノートに染み込んでいくかのように消えていく。
「ミアちゃーん、パイもってきたわよ」
字がちょうど消えたと同時に教室のドアが開き、そんな声がした。
急に現れた金髪美女に、クラスの視線が集まる。
「ありがと、アリカちゃん」
とてとてとアリカの元まで歩くミア。今度はバスケットいっぱいのパイを受け取るとアリカは手を振って笑顔で教室をあとにした。
「パイがいっぱいきた。シアちゃんにもあげる」
「あたし、シードパイがいいな」
「いいよ。グラスパイも一個あげる」
「わーい」
「シアちゃんもお腹ぷにぷにになるといいよ」
「あたしはならないわよ。おうちで運動してるもの」
「じゃぁシードパイもう一個つけてあげる」




