02スネアドラム
「とんとんとん♪ とんとんとん♪」
魔法学園への登校途中、ミアは肩から下げたスネアドラムを叩きながらのんびりと通学路を歩いていた。
「ねぇ、朝から何してるの」
声をかけたのは学友でエルフのシアである。
「太鼓拾ったの」
「太鼓じゃなくてスネアドラムでしょ」
「すねあどらむ拾った。とんとんとん♪」
スネアドラムを叩きながらのんびりと歩く。
しかし、慣れないものを演奏しながら歩いていたせいかミアは少し歩いた後に草原に腰を下ろすとその場から動こうとしなかった。
「ねぇ、学校遅れる」
「とんとんとん♪」
シアも隣に腰を下ろす。
柔らかな風が通り過ぎて草をのんびりと揺らしていた。
「とんとんとん♪」
「あんたはいいわねぇ、いっつものんびりの能天気さんで」
「いいでしょぉ。毎日しあわせ。シアちゃんは?」
「まぁ……しあわせかしらね」
草原に横になって空をみあげるシア。二人ともが学園に向かわなければいけない時間ではあるが、二人ともに何かをしなければいけないという感覚は持ち合わせてはいなかった。
のんびりと通り過ぎていく風を感じながら、どこまでも広がった空に浮かぶ雲を眺め、ミアはスネアドラムを叩き、シアはそのリズムなき音色を耳にしていた。
「アリカちゃんがね」
「うん」
「ベリーパイをお弁当に持たせてくれたの」
「いいなぁ」
「一緒に食べよぉ」
「わぁー」
小柄なミアにはふさわしくないほど大きなリュックを開く。
中には紙に包まれたパイがいくつも入っていた。
ひとつをシアに渡し、もう一つを開くとミアは大きく口を開いてかじりついた。
「んんー、アリカちゃんのパイは世界一美味しいわ」
「美味しいわ。パイくれてありがとう。お礼にこれあげるわ」
「チョコだ」
「うん、本当は午後のおやつに食べようと思ったんだけど、あげるわ」
「わぁい」
◇
「とんとんとん♪ とんとんとん♪」
アリカの家に帰っても、ミアはスネアドラムを叩いていた。
「ミアちゃんいいものを見つけたわね。森の音楽隊ね」
とアリカ。
「ミアはこの森の音楽隊長になるよ」
「あら、誰でも治せる治癒士になるんじゃなかったの?」
「両方するの」
「ふふ、両方するなんてミアちゃんはすごいわね」
「うん。傷を治して太鼓で楽しい気分にしてあげるの」
「ふふ、とってもいいと思うわ。でもそれは太鼓じゃなくてスネアドラムっていうらしいわ」
「すねあどらむ。とんとんとん♪」
スネアドラムの音に釣られたのか、外からはタキシード姿をしたカエルの一団が静かに歌声を震わせはじめた。




