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レベル0な無能悪役貴族のノブレスオブリージュ~転生したらチートもなく死亡フラグしかなかったので、知識チートで全てをへし折る!~  作者: 御峰。


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第35話 銀貨と人の重み

「こんな真っ昼間から!?」


「昼だからこそだと思われます。テイル様は勤務時間でございますから」


「そういうことか。拉致した犯人は?」


「まだわからないようです」


「……時間がもったいない。アレン。お前はすぐに彼女を攫った犯人を探れ」


「かしこまりました」


 アレンがその場から消える。


「ソフィア様は――――」


「いえ。私もご一緒します。護衛はアリスだけですし、離れるのは得策ではないかと」


「わかりました。では一度、テイルのところに向かいましょう」


 俺達は急いで行政施設に向かった。




 施設に入ろうとした時に、一人の男が出てきた。


「ん? 貴方は……セシル様」


「お前は?」


「はっ! テイルの部下のヒュリと申します」


「そうか。テイルはいるか?」


「申し訳ございません。急用で外に出掛けております」


「一つ聞きたい。テイルが誰かに恨まれたりしていないか?」


「……テイルは、多くの人に恨まれております。この街にはそういう連中が大勢いますから」


 どうやら、テイルの味方のようだな。


「なら、お前も攫われたことは知っているな?」


「…………」


 顔には出さないが、驚いているようだ。


「俺にも協力させてほしい」


「申し訳ございません。これはテイルの個人的なことですから」


「……そうか。わかった」


「では失礼します」


 頭を下げたヒュリはどこかへと走り去った。


 考えろ。


 テイルは行政人。恨みを買うなら誰だ……? テイルはそもそも正義感に強い。魔法使いを匿うくらいには。ということは……それに反する存在……街の闇に暮らす人間だ。


「アリス」


「はい。セシル様」


「セバスからお前も護衛ができると聞いているが、実際どのくらい大丈夫なんだ? この街の闇の組織相手でも問題ないか?」


 いつもは柔らかい表情のアリスだが、その瞳はいつもからは真逆の、どこか暗いものへと変わった。


「セシル様とソフィア様は必ずや守り通してみせます」


「そうか。ありがとう。では――――向かうとしよう。この街に巣くう闇の奥へ」


 昨日と今日、この街を歩いてわかったことがある。


 表向きはとても綺麗に整備されているが、その裏は必ずしも綺麗なわけじゃない。良くも悪くも都アデリアは父が住む街であり、セバスがいたおかげで表が暗い代わりに裏が存在しなかった。


 でもここは違う。テイルという存在が表を綺麗にはできたが裏は暗い。


 そして歩いていて気になる場所があった。


 街の西門から中心部まで続いている大通り。


 馬車が二台通り過ぎても問題ないくらい広い。


 その華やかな道の裏道。


 日の光が届かない暗い場所の奥は、表通りの眩しさによってできた影のことく何かがうごめいている。


「中に入るぞ」


「はい」


 ソフィアとは肌がくっつくくらい近づいて裏通りに入っていく。


 アレンはまだ戻らないか。


 少しくねくねした裏通りは、やがで人の気配がするようになった。


 ガラの悪そうな連中がこちらを睨みつけてくる。


「ここはガキの遊び場じゃねぇぞ。今すぐ出ていけ」


「俺はセシル・ドルゲマイン。領主代理だ。お前達のリーダーに会わせろ」


「っ!?」


 驚きながらも冷静に奥へと合図を送った。


 少しして大男がやってきた。


「中へどうぞ」


「ああ」


 裏道を進み、とある建物へと入っていく。


 表は普通の建物っぽいけど、裏からだと地下へと下っていく。


 地下は酒とカビの匂いがしていて、あまり長くいたいとは思わない。


 一番奥の部屋に入ると――――そこには驚くべき人が待っていた。


「これはこれは。セシル坊ちゃま。お久しぶりでございます」


「いや、俺は覚えていないぞ」


「……くくっ。お前達。下がっておけ」


「お頭……よろしいので?」


「ああ。どの道俺達が束になっても勝てん。だが、もし俺に何かあったら、例の件を実行しろ」


「うっす」


 大男が出ていき、部屋にはリーダーと俺、ソフィア、アリスの四人となった。


 それにしても……まさかこんなところにいるとはな……。


 “ホーリーソード”内屈指の強ボス……アルスグレー。


 戦う時は王国の西部なのに……まさか真逆サイドであるドルゲマイン州にいるとは思いもしなかった。


初めまして(・・・・・)。俺はアルスグレ―。悪名高いセシル様がどうしてこんなところに?」


「テイルは知っているな?」


 アルスグレーは大きく頷いた。


「彼の娘が拉致された。犯人を捜したい」


「なら兵を動かすべきでは?」


「それでは遅すぎる。裏組織は情報が命。すでに誰がテイルの娘を攫ったのか知っているんだろう? 情報を売ってほしい」


「ほお……あのセシル様が……こんなにも変わられるとは、驚きですね。男子、三日会わざれば刮目(かつもく)して見よとは上手く言ったもんだな」


 セシルちゃん(10歳)の記憶に……アルスグレーの姿なんてなかったのだが……まさか、手下を潜らせていた?


「ここで油を売ってる暇はなさそうですね。いいでしょう。情報を売りましょう。ただし、残念ながら確定情報ではございません」


「確定ではない……?」


「テイルの娘は巧妙に隠されておりましてね。本当に実在したのかすら怪しかった。ですから娘が攫われたことは確認できませんでしたよ。ただ……一人動いた奴がおりまして、そいつはテイルにずいぶんと執着しておりましたから」


「そういうことか……いくらだ」


「今回は初めてのご利用ということで、無料とさせていただきましょう。奴の名はゲンゴ。この街で裏の実権を握っていた者です。テイルによって粛清され、今ではほとんどのシノギができずに落ちぶれておりましたが……ようやくひと花咲かせそうですね」


「そうはさせない」


「どうして彼を庇います? 優秀とはいえ、彼くらいの人材はいくらでもいるでしょうに」


「知ってるか? アルスグレー」


「?」


「銀貨よりも人の命の方が重いってことをな」


「ククッ。一つだけ忠告しておきましょう。セシル様。貴方には身に覚えがなくても……貴方のことを目の敵にしている者は多い。いずれ……またこちらに来ることになるでしょう」


「そうならないように生きてやるさ。それに――――うちには優秀すぎる執事がいるからな」


 出口に向かうと、アレンが待っていた。


「アレン。動いてくれてありがとう。ゲンゴとやらの居場所はわかるか?」


「その名の者でしたら、近くに」


「案内してくれ」


「はっ。かしこまりました」


 これだけ広い街で犯人を見つけるのは至難の業だ。


 だからこそアレンは、敢えてこの街の犯人と思われる人物全員の居場所を探してきたんだろう。


 やっぱり……うちの執事は優秀すぎるな。

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