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レベル0な無能悪役貴族のノブレスオブリージュ~転生したらチートもなく死亡フラグしかなかったので、知識チートで全てをへし折る!~  作者: 御峰。


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第34話 悲しみの連鎖と希望

 アデルン街のとある酒場。


「兄貴。耳寄り情報がごじぇます」


「ん? 何か面白れぇことでもあったか?」


 全身にタトゥーが掘られた鋭い目つきの男に、どこか卑屈な顔の男が近付いた。


「実は……今回のシェイル商会から変なガキが一緒に来たみたいで」


「変なガキ?」


「はい。ずいぶんと偉そうな服を着ているから貴族の息子ではないかと。ご丁寧に婚約者っぽい女まで連れてきたとか何とか」


「ここら辺に来る貴族といや……ドルゲマイン家のあのレベル0(・・・・・・)しかいないが……」


「どうやら我がままを言って領主代理ごっこをしているとか何とか」


「ああ。そういうことか。馬車嫌いだと聞いていたが……こんなところまで何しに来やがった。ただの旅行か?」


「そうだと思うんですが、我々には朗報がございまして」


「朗報? もったいぶってねぇで、さっさと言え」


「へい。あのガキの出現のせいか……テイルの野郎が尻尾を見せましたぜ」


 その言葉に兄貴と呼ばれた男が立ち上がる。


「それは本当か」


「へい。どうやらやつの……養女を迎えていた噂は本当のようです。ずいぶんと離れた居住区に一人で住まわせてました」


「よくやった! よし。すぐに野郎どもを集めろ!」


「へいっ!」


 卑屈な顔の男が走って出ていくと、男はニヤリと笑った。


「クククッ。テイル。てめぇに今まで散々苦汁を飲まされてきた……今度は……てめぇの番だ」


 部屋に男の大笑いの声が響き渡った。



 ◆



 ソフィアと一緒にアデルン街を歩く。


 昨日今日だからさすがにエヴァには近付かないけど、アマンダ以外の魔法使い候補を探すためでもあるし、ソフィアとの一緒に散策を楽しむためでもある。


「ソフィア様って、どうして散歩がそんなに好きなんですか?」


「え、えっと……好きそうに見えますか?」


「他の令嬢のことはよくわかっていないけど、お母様の話によればあまり歩かない令嬢が多いと聞きましたから」


「…………」


 何だか……少し寂しい瞳だ。


 あまり詳しく聞くつもりはないけど、ソフィアとも少しは向き合わないとな。


 綺麗に整った花壇がたくさん並んだ道を二人で一緒に歩く。


 少し離れたところからアレンとアリスが追いかけてくれている。


「実は私……外に出れなかったんです」


「ん? 出れなかった? どういう意味ですか?」


「アルゲマイン州はとても治安がいいと聞きました。でも……それは民の話。アルゲマイン家は多くの貴族から恨まされていて、至る所に暗殺者がいたんです。その狙いはほとんどがお父様だったけれど、私も人質としての価値がありますから……ずっと屋敷から外に出ることを許されませんでした」


 アルゲマイン辺境伯はとても民を大切にしている、貴族の中ではとても珍しくて、逆に言えば貴族らしくない(・・・・・)と噂されてるという。


 ゲームでもアデリアを解放してからはアルゲマイン辺境伯は強い味方となるからよく覚えている。


「ここ最近までお茶会にも外にも出ることが叶わず……私はずっと屋敷の中にいました。寂しくはありませんでした。お父様もお母様もお兄様達もよく来てくださいましたし、使用人達も仲良くて毎日楽しかった……ですけど……」


 彼女はニコッと笑って周囲を見渡した。


「いつか屋敷の外を歩いてみたい。そう思うようになりました。セシル様には……申し訳ないことをしたと思っております」


「ん? 僕にですか?」


「実はお母様から提案を受けた時……セシル様となら外出してもいいと許可を得ておりました。婚約……のことは私にはよくわかりませんでしたが、外出できるのなら……と」


 彼女は立ち止まって、俺に向かって深々と頭を下げた。


「セシル様を利用する真似をしてしまい……ごめんなさい」


 利用……か。でも、それは当然のことかもしれない。


 彼女自身も自分がどれだけ手塩に掛かかっていたのかくらいわかったはず。それでもここにたどり着きたい。それこそが……彼女の意志だ。


 あの女狐のアルゲマイン辺境伯夫人でさえも彼女の意志を尊重したから、今の彼女はここにいる。


「頭を上げてください。ソフィア様」


「セシル様……」


「利用したと言われれば確かにそうかもしれませんが、逆でもあります。僕もソフィア様という手札を引き入れたことで、アルゲマイン家という強力なバックを手に入れました。貴族というのはそういう損得勘定で生きるものだと思ってます。現に、今ではソフィア様がいなければ魔法使い候補を見つけることもできない。結果的に僕には大きな力が手に入りましたから。むしろ感謝してますよ」


 彼女の目に少し涙が浮かんだ。


「ですから今後はお互いを利用していきましょう。代わりに――――」


「代わりに?」


 俺は笑顔を見せた。


「お互いにわがままを言い合いましょう。お相子的な?」


「お相子……ふふっ。はい! これからは……ちゃんとわがまま……言いますね? セシル様」


「ええ。これからも僕のわがままを聞いてくださると助かります。ソフィア様」


 初めて――――婚約者であるソフィアと心から話し合えた気がした。


「セシル様」


「ん? アレン? どうしたの?」


「大変なことが起きたようです。テイル様の娘さんが――――攫われたようです」


 エヴァが……攫われた!?

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