第31話 禍根③
あれから数日が経過し、いくつかの村や町を回った。
どの村もハウラン村に似たもので、多くの大人が流行り病で命を落としていた。
俺達は最後の終着点――――ドルゲマイン州の第二の都市と言われているアデルン街にたどり着いた。
「とっても賑やかで広い街です!」
「僕もここに来るのは初めてですけど、都アデリアとは違った賑やかさがありますね」
「はい! 皆さん、とても楽しそうです~」
馬車の窓の外では買い物を楽しんでいるカップルの姿や家族睦ましい姿もあり、何だか都アデリアよりも何倍も平和で賑やかさがある。
まあ……そりゃそうだろうな。都アデリアはドルゲマイン家が住んでいるから異常に民が虐げられていたから。
シェイル商会の支店に行く前に俺達がやってきたのは、アデルン街周辺を管轄している行政施設だ。
「セシル様。出迎え一つできずに大変失礼しました」
「構わない。僕が勝手にシェイル商団に付いてきただけだから。お前がアデルン街の行政を担当しているテイルだな?」
「はっ。お初にお目にかかります。テイルと申します」
セバスから州で一番できる男として評価されていた男こそが、彼である。
まあ、キャラとしてなら彼は知っていたけどな。
「テイル。今日急に来たのは理由がある」
「はっ。何なりとお申し付けください」
「――――街にいる魔法使いの候補を全員連れていきたい」
「!?」
ゲームでは彼が大きなフラグの一つで、ドルゲマイン州で魔法使いの部隊を作るために彼に依頼をかける必要があるのだ。
そこから魔法使い部隊を作ったらいろいろやれることも多くなるし、彼は素晴らしいキャ――――。
「申し訳ございません。街に魔法使い候補がいるという話は一切聞いておりません」
へ……? あれ?
「ん? いない……というのか?」
「はい」
テイルは顔色一つ変えずに真っすぐ俺を見つめてそう答えた。
嘘……だろう……わりとこいつを目当てでここに来たまであるのに……おかしいな。ゲームのときと違うのは数年前だから……全くいないのか……?
「そうか。何か街や近隣で気になることはあるか?」
「いえ。全て報告している通りです。気になることがありましたら真っ先に報告しております」
仕事できる男だからな。嘘とかそういうのはなさそうだし、いいか。
「わかった。今日は迎えてくれてありがとう」
「いえ。本日は――――」
「ああ。いらない。僕は好きなように街を散策させてもらうよ。間違っても――――接待なんて準備しないように」
「……かしこまりました」
部屋を出る。
すぐにアレンが耳打ちをしてきた。
「セシル様。どうやら彼は嘘を言っているようです」
「ん? 嘘?」
「セシル様より魔法使いと言われた時、ほんの一瞬ですが瞳が揺れました」
「……候補がいるのにいないと嘘を?」
「その可能性は高いかと」
そうか。やっぱり魔法使い達への繋がりを持っているんだな。
でもどうして教えてくれな――――あ。そうか。魔法使いはある意味では一度捕まると自由がなくなる。報酬は多少良いかもしれないが、過酷は労働を強いられたり、時には貴族の無茶ブリにも答えなければならないからな。
でも彼にとってはあまり関係ないのでは……?
「アレン。彼の自宅を知りたい。付けられるか?」
「お安い御用ですが、おそらく彼は今日戻らないと思います」
「付けられるとわかっているからか?」
「おそらくは」
ん~困ったな。
「なら――――彼の家を特定してしろ」
「はっ」
施設を出てすぐに俺はソフィアとアリスと一緒に街を散策に出た。
当然、隣にアレンがいないことは、彼の耳にも届くはず。
となれば……家が特定されるとまずいから動くはず。
テイル程の男はどう出る……?
「セシル様? 何だか……怖い顔になってますわ」
「おっと。これは失礼。ちょっと駆け引きをしておりまして」
「駆け引き……ですか?」
「ええ。ソフィア様にも活躍してもらうことになりそうです」
「例の件ですね?」
「はい」
「頑張ります!」
こっちには切り札がいるからな。
魔力を見抜くチートスキル持ちがね!
◆
セシルが帰った後、行政施設では少し焦ったテイルがいた。
「テイル。そう焦るな。大丈夫だ」
「だが……」
「バレやしないよ。お前の――――養娘が奪われるなんてことはな」
「それならいいが……悪い予感がする」
「あの執事はいないんだろう?」
「ああ。でも、あの執事の代わりに若い執事がいた。かなりできる奴だ」
「まじかよ……ドルゲマイン家ってどうしてこう……執事が有能なんだ」
「何故こんな時に、領主代理を務めている彼が直々現れたんだ……しかも、魔法使いを名指しで来たってことは、何か噂を聞いたのではないだろうか」
「その可能性は高いな。でもバレないはずだ。リストアップは一切してないし、そのリストだってお前の頭の中にしかないんだろう?」
「ああ」
「なら大丈夫じゃねぇか。お前が口を割らなければ……誰一人見つかることはないさ」
その時だった。
窓扉からトントンとノックが聞こえて、一人の男が中に入ってきた。
「トリス。どうした」
「まずいことになった。アマンダが見つかった」
「なっ!? ど、どういうことだ!」
「理由はわからないが、アマンダの素質を見抜いた」
「まずい! このままでは……街に匿っていた才能が全員ダメになってしまう! ドルゲマイン家の魔法使いになればみんなおしまいだ! 使い果たされ……廃人同様になりかねない! 守らなければならない。彼らは……民の希望で…………娘を守らなければ……っ!」
テイルは立ち上がり、すぐに走っていった。




