第3話 資金調達作戦
まずやるべきことは、この街に巣くう悪を追い出すところからだ。
ではあるんだが、今の俺の力だけだとそれは難しい。
その一番の原因というのが――――異世界では魔獣が存在し、どこにでも出現する。
当然、戦える力がなければ、喰われてしまう世の中なのだ。
なので、俺が悪に対抗するため、最初にやるのは戦力を集めることである。
「こちらが現在の財政でございます」
「どれどれ……毎月税収が金貨10枚か。かなりの額だな」
「はい。現在、ドルゲマイン州では他の州と違い、多くの産業が活発に動いております。それらの税収で国内でも上位に位置する州でございます」
「多くの産業ね」
ドルゲマイン州というのは、ゲームでは断罪されてから名前が変わるんだけど、主人公の拠点となるだけのことはあって、投資さえちゃんとできれば、ゲーム内の全ての産業を動かせるようにできるんだよな。
俺自身にチート能力はないが……逆にこの地を治めることこそがチートかもしれない。それを活かすためにも……ここはまず戦力確保だ。
「金貨が5枚……あ。あれか。はあ……んで他の支出は……食費金貨4枚と大銀貨80枚……って! 大銀貨20枚しか残ってないの!?」
「その通りでございます」
「はあ……」
まじで溜息した出ない。
異世界の貨幣は、小銅貨10枚が銅貨1枚。銅貨10枚が大銅貨1枚。大銅貨10枚が小銀貨1枚。小銀貨10枚が銀貨1枚。銀貨10枚が大銀貨1枚。
ここまでは10倍ずつ増えていくか、金貨だけは小も大もなく通常の金貨のみしかない。なので大銀貨100枚で金貨1枚となる。もし小金貨があれば10倍でわかりやすいんだけどね。
そういうのもあり、金貨は大体貴族とか大貴族の取引くらいにしか使わないので、主に流通しているのは銀貨以下である。
さて、毎月ざっと10億円相当の収入があるというのに、食費と贅沢な宝石を買っただけで残り2千万円くらいしか残らない計算になる。
父よ……少しは考えて買い物をしようぜ……。いや、問題は母にもある。当たり前のように高額品を買うからな。
「セバス。正直に答えてほしい。うちの州で一番手広く商売をしているのは、デリオン商会で合っているか?」
「いえ。デリオン商会はどちらかというとこちらの州都といいますか……子爵様との取引がメインです」
「では他の民の食料とかを扱っているのは?」
「シェイルという老舗商会が州全域を賄っております」
やっぱりシェイル商会か。デリオン商会って聞いたことなかったけど……やはりシェイル商会になるんだな。
「シェイル商会に視察に行く」
「……かしこまりました」
セバスが出掛けの準備をしてくれている間に、俺は急いで母のところにやってきた。
「お母様」
「あら、セシルちゃんじゃない。どうしたの?」
「先日買われた宝石はどうされているのかなと思いまして。とても綺麗だったものですから」
「うふふ。ちゃんと――――宝石箱の中に入れてあるわ」
……はあ。もう溜息しか出ない。せめて……一年くらいは付けてくれよ……。
「お母様の宝石箱見てみたいです!」
「いいわよ~」
母の宝石箱を開くと――――もういくらするのってくらい宝石がびっしり入っていた。
「こちら、全部デリオン商会から買われたんですか?」
「そうよ。とてもよい品ばかりを売ってもらってるわ」
「…………」
よし。ここはあの作戦でいこう。
「お母様!」
「うん?」
「実は……再来年の学園に入るまでに為政者としての実力を付けてお母様とお父様にとって素晴らしい息子になるべく、お父様にお願いして二年間行政を仕切ることになったんです」
「あら、そんなことしなくても――――」
「ダメです! 僕は……どうしてもお母様、お父様に自慢できる息子になりたいんです!」
「セシルちゃん……!」
「それで今の財政状況を確認したんですけど……僕がやりたかった事業に少しばかり資金が足りなくて……もしよろしければお母様の使わない宝石をいくつか頂くことはできませんか? 財政状況がよくなったらもっとすごい宝石をお母様に贈りたいんです!」
「そんな……セシルちゃんが頑張りたいのなら宝石箱は全部あげてもよくてよ!」
その言葉を待っていた!
「いえっ! それだと……お母様がお茶会に行った際に周りに白い目で見られるのは……僕が耐えられません! ですので、古いモノでそろそろ着けることはなさそうなモノだけでいいんです!」
「セシルちゃんっ……! わかった! 母もその想いに応えるわ!」
母は宝石箱を覗き、選別をし始めた。
ここにある宝石をある程度売るだけでかなりの資金になるはず!
「セシルちゃん。これらは新しい宝石で十分足りるから、セシルちゃんの資金にしていいわよ」
「お母様……! ありがとうございます!」
ここは息子として、母にぎゅっと抱き着いてやる。
……いや、中身は普通のおっさんだから、前世の自分と同じくらいの歳の女性に抱き着くのはどうかと思うけど、今はセシルちゃん(10歳)だし……まあいいだろう。これも全て……死亡フラグをへし折るための作戦だからな!
「うふふ。うちのセシルちゃんはまだまだおこちゃまね~」
母は嬉しそうに笑った。
ふくよかになっているからあれだけど……痩せたらきっと美人なんだろうなって面影があるな。
そりゃ……セシルちゃん(10歳)も可愛い子供になるわけだ。




