第27話 私、見えるんです
「えいっ!」
ひゅっ。
「ふんっ!」
ぶおーん!
「えいっ!」
ひゅっ。
「ふんっ!」
ぶおーん!
うわあああああっ!
同じ木剣を振っているのに、俺とアレンで音が全然違うんだけど!?
「セシル様~頑張れ~!」
「うおおおおお!」
ひゅん。
そして、隣でアレンが木剣を振り下ろすと、ぶおーん! と風を切る重い音が響いた。
「セシル様、頑張りましたね~」
ニコニコしたソフィアが労ってくれる。
うぅ……。
「てか、アレンくんってどういう才能なの?」
「僕ですか?」
目を丸くするアレンが首をかしげる。
なんかアレンってさ……動く度に一々キラキラするというか。わけわからんよな。
「僕もよくわからないんですが、セバス様に教わった通りにやっております!」
「僕も同じことをやってるんだけどなぁ。音とか全然違うし」
「セシル様。これは音を出すのが目的ではなく、体を動かすことが目的だとセバス様が仰っておりました。ですので音は気になさらず毎日欠かさずやっていきましょう!」
「お、おう……」
落ち込んだこともアレンのこの穢れひとつない眩しい笑顔の前では、何も感じなくなっちゃうよな。
「はい。セシル様。紅茶です。アレンくんもどうぞ」
運動のあとの冷たい紅茶はとても美味しいな。
ちなみに冷たい紅茶は、俺が母に冷たい飲み物が飲みたいって泣き寄ったら、母の天才的な発明によって作ってもらった冷たい紅茶だ。
ただ紅茶を淹れて冷ましたものとは違い、元から冷たい水で淹れた紅茶だ。
母曰く、紅茶になんかの薬草を足すと冷たい水でも混ざるらしいが、俺はよくわからなかった。
ちょうど紅茶タイムが終わった頃、セバスがやってきた。
「セシル様。ご報告です」
「うん。どうなった?」
「結果から申し上げますと、全くいませんでした」
「やっぱりか~セバスの力を以ってしてもか~」
「申し訳ございません」
「いやいや、セバスのせいではないから。こちらこそ、手間をかけさせて悪かった」
試作アパートで発覚した魔法使いの件をセバスに調べさせてもらったんだけど、やはり誰一人見つからなかったらしい。
……安直な考えかもしれないが、ドルゲマイン州に人材がいないはずがない。何とか見つけ出したい。もちろん、ちゃんとした労働環境と報酬はちゃんと支払うつもりだ。
と、いろいろ考えても見つからないことには何も始まらないけどな。
「セシル様……? 何かありましたか?」
ソフィアが首を傾げる。
「それが、魔法使いの人材を見つけようとしてるんですが、中々見つからなくて……」
俺は少女に何を語りかけてるんだあああああ! はあ……。
「あはは、急に変なことを言ってしまいました。すみません」
「いえ。魔法使いですか……えっと、セシル様はどうして魔法使いを増やしたいんですか?」
「これから住民達が住むアパートを建てるんですが、どうやら隣人の生活音が気になるようで。セバスから聞いた話では、防音結界魔法ってものがあれば解決できそうなんです。その職人を雇いたいからですね。あとは魔法使い部隊が作れたら防衛も強くなりそうですし」
「えっ……? それって……平民のためにですか?」
「えっ? いえ。銀貨のためです。アパートがあれば定期収入として家賃が入ってきますからね」
「……ふふっ。そうですね。セシル様は銀貨のためですものね! それでしたら……えっと……」
ちらっと周りを見つめるソフィア。
何か勘づいたのか、セバスがアレンとアリスを連れて席を外して、俺とソフィアだけとなった。
「ソフィア様? どうかなさいましたか?」
「えっと……セシル様は……また平民……ではなく銀貨のために頑張りたいってことですもんね?」
「そ、そうですね」
大事なことなので二回言いました……的なノリか?
まさか! アルゲマイン家から魔法使いをレンタルするとかそういうのか!? それはちょっとまずい……。
「実は……秘密が……ございまして」
「秘密……?」
なんのことだ……?
「お父様とお母様には信頼できる人にだけ……言っていいって言われておりまして……セシル様なら信頼できるなって思いまして……」
「は、はい。僕でよければ……?」
「……えっと、私……生まれから……見えるんです」
「見える!?」
見えるって……幽霊……とか?
「え、えへへ……」
う、嬉しそうにしてる!?
「あ、あの……何が……見えるんですか?」
ソフィアがポカンとした。
数秒間、俺達の間に沈黙が続く。
「…………」
「…………」
ソフィアの顔が真っ赤に染まる。
う、うわああああああ!
めちゃくちゃ可愛い。
「こほん。すみません」
「い、いえっ! 私がちゃんと言わなかったんですから。わ、私……世界でもたぶん珍しい才能がございまして……見えるんです――――」
そして彼女の口からあまりにも衝撃的な言葉が飛び出た。
「――――他人の魔力が、見えるんです」
まさか、こんな身近に魔法使いの一件を解決できる逸材がいるとは思わなかった。




