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レベル0の無能悪役貴族のノブレスオブリージュ~転生したらチートもなく死亡フラグしかなかったので、知識チートで全てをへし折る!~  作者: 御峰。


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第20話 案内

「わあ! 綺麗~!」


「こちらは我が都で一番腕のいい職人に作らせたものになります」


 何故かアルゲマイン辺境伯令嬢の案内を任されました。もう口からいろいろ出てきそうです。


 というのは冗談で、正直めちゃくちゃ困ってる。


 できるなら俺がいろいろ指揮を執りたいのに、のんびり令嬢の案内なんてしてたら何か起きたときの対応が遅れちゃうから。


 まあ……セバスには事前にもしものマニュアルは渡してあるし、あの有能執事なら何とかしてくれそうだからまだいいが……お父様は大丈夫だろうか。


「それにしても……水が多いですね?」


「はい。まだ秘密ですが、パーティの余興でわかるようになります」


「それはとても楽しみです!」


 この令嬢。大体セシルちゃん(10歳)とほぼ同じ年齢のはずなのに、何だか無邪気と言うか何というか。


「あ、そこに流れている水はそのまま手を洗ったりしてくださって構いません。とても綺麗な水ですから」


「そうなんですね!」


 興味があるのか、水路にそっと手を入れる。


「ひんやりして気持ちいいです!」


「見た目もよし。機能性もよし。結構自身作です!」


「あら? このデザインってセシル様が考えられたものなんですか?」


「そうですね」


「もしかして外にあった大きな橋もですか?」


「ええ」


「あれって何をするために建てられたんですか?」


「実はあの中は空洞になってまして、そこに水を流しているんです。それで都全域に水を行き渡らせることが可能になったんです」


「そんなことができるのですね! 初めて知りました! だから街中に立派な噴水がたくさんあって、水もいっぱい出ていたんですね」


 くっ……! 美少女が嬉しそうにするのを見ると、ついつい自分語りがしたくなるのは、男として仕方ないよな……仕方ないよな!?


「ここが本日の会場になります。両傍にいつでも休めるように椅子を置いてますので、疲れた時にはぜひご利用ください」


「すごく珍しいですね。でもセシル様が仰っていた機能性……? を思うと、とてもいい気がします」


 キノウセイ……? と言いながら少し首をかしげる仕草もまた可愛すぎんか。


 落ち着け。俺はセシルちゃん(10歳)だが転生者で、転生前はただのおっさんだ。


 これはきっとおっさんの心じゃなくて、セシルちゃん(10歳)の心のせいなんだ。


 その時、何人かの子供達が近付いてきた。


 ものすごく――――ふてぶてしい表情の男で、こいつ、父の血を色濃く受け継いでいるな。


「アルゲマイン令嬢。僕はブルス子爵の長男バガホーです。今後、お見知りおきを」


「は、初めまして。ソフィア・オル・アルゲマインです」


 そこからどんどん挨拶が始まる。


 子供とはいえ、次世代の貴族だもんな。みんなちゃんと貴族らしい振る舞いができて偉いと思うよ。


 俺はすでにみんなとは顔見知り(・・・・・・・・・)だからね。挨拶することもなかったので、そっと彼らから離れた。


 よし。これで子守りはしなくてもよくなったし、状況確認だ。


 ――――と思ったらセバスが目の前に現れた。


「セシル様」


 ――――セバスは眼を鋭く光らせて俺を見つめた。


「セバ――――」


「アルゲマイン令嬢は向こうです」


 ――――セバスは鋭い視線で俺の後ろを丁寧に手で差した。


「うぅ……」


 ――――セバスは俺の体を強制的に反対側に向けさせた。


 何故だかものすごく悲しそうな目で俺を見つめるアルゲマイン令嬢の姿があった。


 いや、案内は終わってるんだし、あとは同年代で仲良くどうぞって感じだが……はあ。


 セバスの有ご……無言の圧力によってアルゲマイン令嬢のところに戻った。


 挨拶が終わると、真っ先に全員に背を向けて俺に向く令嬢。


「セシル様? まだ行ってみたい場所がたくさんあります!」


 この顔……こいつらと一緒にいたくありません。的な顔だよな。


「ではご案内させていただきます。皆さんはまた後ほど」


 何だかブルス令息が俺をギラリと睨む。


 だって仕方ないじゃないか。本人の希望だし。俺にそう睨むなって。


 彼女は逃げるようにテラスに出ていった。


「…………」


 振り向いた彼女は――――めちゃめちゃ頬っぺたをぷくっとさせていた。


 いや、可愛いがな……。


「むぅ……酷いです。セシル様」


「いや~せっかく知り合いが増えるところを邪魔したらいけないかなって~」


「意地悪です……」


「大変失礼しました。ではお詫びに――――良いものをお見せしましょう」


「?」


 彼女を連れてテラスの端にやってきた。


 そこから――――新しく生まれ変わった都アデリアが一望できる。


「わあ~! 綺麗~!」


「あの橋は“水道橋(すいどうきょう)”と言うんですが、実用性はもちろんのこと、実はここからの眺めを意識した作りになっているんです。職人と何度もここで打ち合わせをして建てたんです」


「すごい……私には想像もつきません……」


「うちは有能な人材がたくさんいますからね。僕は恵まれているんです」


 彼女は何も言わず、ただただテラスの外を眺める。


 転生したばかりの頃はスラム街が広がっていて壮大な景色とは裏腹にがっかりしてしまうところもあったんだけど、今はすっかり姿を変えて美しい都と呼んでも差し支えないと思う。


「綺麗……」


 今の都アデリアは綺麗になった。それでも――――都を見つめた彼女の美しい瞳に映っているアデリアはその何倍も綺麗に見えた気がした。

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