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レベル0の無能悪役貴族のノブレスオブリージュ~転生したらチートもなく死亡フラグしかなかったので、知識チートで全てをへし折る!~  作者: 御峰。


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第19話 始まる最初の試練

 晴天。


 空の上に輝く太陽の下、多くの馬車が州都アデリアに入っていく。


「お、お母様! 見てください!」


 淡いピンク色の髪を持つまだあどけない少女は窓の外を指差した。


「あら、何かしら……? 大きな橋……しては人が歩いていないわね」


「州都アデリアはあまり綺麗な場所ではないと聞いていたのですが……」


「そうね。お世辞にもそういう場所ではなかったのだけれど……これは一体何が起きているのかしら……?」


 そんな彼女達だが、他の馬車でも同じようなことが起きていた。


 窓の外に広がる水道橋にみんな驚く。


 それだけではない。


 元々小汚いはずのスラム街の姿も全くなく、清掃が行き届いており、道路もしっかり整備されていて、綺麗な街になっていた。


 さらに至る所に噴水があり、綺麗な水がこれでもかというくらい湧き出ている姿は、まるで“水の都”と呼ぶにふさわしい姿へと変わっていた。



 ◆



「お母様。緊張しなくてもきっと大丈夫です」


「そ、そうかしら……」


「お母様の料理は世界最強ですから。それより……何が起きても僕を信じてください。僕はいつだってお母様とお父様の味方です」


「セシルちゃん……ええ。私もいつまでもセシルちゃんの味方だからね?」


 過保護なくらい味方だしな。


 最初の馬車が屋敷にやってきた。


 メイド達が深々と頭を下げながら「いらっしゃいませ」と声を揃えて話す。


 うんうん。教育も行き届いていて素晴らしい。さすがはセバスである。


 最初に降りたのは初めて見る貴族だった。


「遠いところまでよくぞいらしてくださいました」


「本日はご招待にあずかりありがとうございます」


 形式的な挨拶を交わしながら、来た人は担当のメイド達が会場まで案内する。


 馬車は次々とやってきて、すっかり屋敷前は馬車の列ができた。


 お父様……近隣の貴族だけ誘えばいいのに、一体どこまで誘ったのか。


「それにしても数が多いわね? 招待状はそこまで多く出してないはずなんだけど……」


「あれ? お父様が全員を呼んだのではないんですか?」


「ううん。招待状を送ったのはせいぜい20家くらいだけど……馬車は五十台を超えているわね」


 まさか……。


 それからどんどん挨拶が進み、とある貴族が現れた。


「いらっしゃいませ――――ブルス子爵」


「これはこれは。招待にお預かり感謝申し上げる。ドルゲマイン子爵夫人」


 この世界の悪人って太ってるのが相場なのか?


 ブルス子爵といえば、あのデリオン商会の本店がある街を治めている子爵だ。


 うちとは表面上(・・・)は仲良しである。


 ちなみに後ろの馬車はデリオン商会の豚も一緒に来ている。


「本日は大変すばらしいパーティが開かれるということで――――私の知人も誘って来ました」


 やっぱりお前だったのかああああああ!


 やけに人が多いなと思ったらよ! てか招待状の意味ねぇだろう!


「招待状がない方もいらっしゃいますが――――よろしいですよね? ドルゲマイン子爵夫人」


 と、母にばかり負担をかけるわけにはいかないので、俺が割り込む。


「お久しぶりです。ブルス子爵」


「これはこれはセシル坊ちゃんじゃないか。お久しいな」


「招待状の件、問題ありません。僕が領主代理を務めておりますので、許可しましょう。ただ、全員が(・・・)本当にブルス子爵に呼ばれたのかどうか判断が難しいので――――」


 俺は指パッチンを鳴らす。


 セバスはすぐに勘づいたのか、椅子を一つ持って現れた。


「こちらで一緒に受付をお願いします。あ。最高級紅茶も用意しております。さあ、こちらにどうぞ」


 ほんのり顔が赤くなって怒りの色が見えるブルス子爵は、仕方なさそうに椅子に座った。しかも、置かれた場所が馬車が通りすぎる道に少し近い。


 セバス。よくやったぞ。あとでボーナスを与えなければな。


「ありがとうございます。では次の方は――――さっそく招待していない方ですね。ブルス子爵? 彼もですか?」


「うむ。我が家に長年尽くしてくれた商人だからな」


「問題ないでしょう。セバス。予定以上に来客が来そうだからメイド達に」


「すでに伝えております」


 椅子を取りに行ったあの一瞬で……さすがだ。


「お久しぶりでございます」


 俺を見たデリオン商会の商会長がほんのりとニヤリとしながら会釈した。


「相変わらず元気そうで何より。今日は満足いく(・・・・)食事を用意しているので、楽しんでくれたまえ」


「……ええ。一体どんな素晴らしい高級(・・)食事が出てくるのか楽しみにしております」


 それから何人もの貴族がやってきたけど、ほとんどがブルス子爵の知り合いのようだ。


 一応、母も知っている貴族達だったみたいだから通したけど、どこの骨かもわからない貴族をそう簡単に通したくはないが……今日だけは仕方がないと思っている。


 そして、最後の馬車が停まった。


 非常に豪華なその馬車には、どこか見慣れた(・・・・)紋章が見えた。


「あの馬車は!?」


 ブルス子爵が思わず椅子から起き上がる。


 馬車から降りてきたのは――――それはもう宝石なんて必要ないくらい美しい若い女性と、瓜二つの少女が降りてきた。


 前世で一度だけ見たことがあるピンクダイヤモンド。宝石に興味はなかったけど、その美しさに今でも記憶の片隅に存在する宝石を連想させるかのように、少女の美しいピンク色の髪とその隙間から見える整ってはいるがまだあどけない可愛らしい顔は、世の中の男性達の保護欲をくすぶるものがある。


 二人がやってくるが、母もブルス子爵もめちゃくちゃ驚いている。


「初めまして。本日は急な訪問、大変失礼致しますわ」


「い、いえっ! むしろ、招待状をお送りできず大変申し訳ございませんでした! このような田舎までお越しくださるとは思わず……」


「あら、こんな素晴らしい都を田舎だと思う貴族はいないと思いますわ」


 あの紋章……やはりあの家(・・・)か。


「ソフィア。お挨拶を」


「はい。お母様」


 少女は一歩前に出て、上品にスカートを少し上げながら挨拶をする。


「初めまして。ドルゲマイン子爵夫人、令息。私はアルゲマイン辺境伯(・・・)の娘、ソフィア・オル・アルゲマインと申します。以後、お見知りおきを」


 やはり……俺達が住んでいる王国東側で最も権力を持つ辺境伯の紋章だったか。その奥様と娘がまさか招待状もないのに訪れてくるとは思いもしなかった。


 ブルス子爵の仕業でもないようで、彼もタジタジになっている。


 これは……思わぬ出会いかもしれないな。


 だが必ずしも味方になるとは限らない。ここから彼らと敵対することにあると、非常にまずいことが起きかねない。


 やはり今回のパーティは……何が何でも成功させないといけない……!

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