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レベル0の無能悪役貴族のノブレスオブリージュ~転生したらチートもなく死亡フラグしかなかったので、知識チートで全てをへし折る!~  作者: 御峰。


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第13話 建前と本音

 翌日。


 朝食を食べていると、セバスが何枚かの手紙を持ってきてくれた。


 宛名を見ると、昨晩夕食会に参加したメンバー全員分だった。


 開いてみると――――各々の想いが綴られており、全員が力を貸してくれるむねが書かれていた。


 夜までかかるかなと思ったけど、こんなに早く決まってくれて嬉しい限りだ。


「セバス。例の大事業を開始する」


「かしこまりました」


 うきうきしながら部屋を出ようとすると、ちょうどアリスが迎えに来ていた。


「あれ? セシル様?」


「あ。アリス。今日は紅茶タイムはなしだ。それよりアリスも一緒に来い」


「は、はいっ!」


 最初からわかっていたかのように用意周到に準備が整っていたのは、やはりうちの執事が最強すぎるせいだよな。


 馬車に乗り込んで俺達は州都アデリアの――――端に向かった。




 馬車を降りると、少しツンとした匂いが鼻を突く。


 懐かしいというか……前世では街の中は人で溢れていて、空気もどこか淀んでいた。それを思い出す。


 セバスは普段から顔に出ないとして、アリスは嫌そうな表情をしないのは、きっと元から(・・・)こういう場所で育っていたからだろうな。


 当然、こういうスラム街にも似たボロい場所なこともあり、馬車は非常に目立つ。


 周りから不思議そうに人が集まってきたが、結構距離がある。


 まあ、近付いてきたた貴族に対する不敬罪でその場で処刑されても文句言えないのが王国法だからな。


「こほん。俺はセシル・ドルゲマインである。領主代理をしている。ここら辺一帯の責任者はいるか?」


 中から慌てて一人の老人が出てきた。


 当然かなり小汚いのもあり、声が届くくらいのギリギリの距離まで来て、両手を地面に付いた。


「この一帯は誰かの所有場所ではないので代表者はございませんが……私は長年この地で住んでおりまして、何かあった際には私が聞いております」


「わかった。ではお前を代表者として話そう」


 彼に近付こうとすると、慌てて声を上げる。


「お、お待ちください! わ、私めはとても汚いので……近付かれると気に障ることが多々あるかと思います!」


「ん? 匂い? 気にしないから大丈夫」


 近付いてみると、確かにちょっと匂うかもな。


 でもこんな場所なら仕方がないし、正直にいえば……すでにそういう匂いに支配されているから人がどうこうではなく場所だと思ってるから。


「も、申し訳ありません……」


「謝る必要はない。では早速本題に移ってもらう。これから俺は州都アデリアを可能なかぎり――――美しい都にしたいと考えている。そのために一番大事な“水路(・・)”を整えることにした」


 そう。俺が一番やりたかったのは――――水路事業である。


 異世界は魔法や魔道具があるので前世以上に水路が楽に作れる。なのにも関わらず、それが施されているのはほとんどが貴族が住む上流社会層のみ。


 それは住むには不自由しないけど、屋敷から窓の外を眺めた際に景色の良さはよくならないのだ。


 当然景色のためだけにこんなことをするわけじゃない。そこにはものすごく利点があるからだ。


「そこで第一陣としてこの地に水道を建てることにした。なのでお前達には悪いが、この場所から去ってもらう」


「そ、そんな……」


 聞いていた大勢の人々が俺の言葉にがっくりと肩を落とすのが見えた。


「か、かしこまり……ました……全てはドルゲマイン子爵家の意志……我々はすぐにこの場から去っていきます……」


「うむ」


 タイミングを同じくしてやってきたのは――――大工屋のドゥルグだ。


「セシル様。ここでございますか」


「ドゥルグ。ああ。この地を最初の入口にしたい。ここから都全土に行き渡らせたい。できるか?」


「セシル様から頂いた資料通りなら問題ありません。あのような素晴らしい建築物(・・・)に関われるだけで幸せでございます」


 これからここに作るのは――――石の水路である。俺も詳しいわけではないが、前世の教科書で見た古代ローマの石の水道を真似たものである。


 異世界なのもあり、水源に心配なから、完成さえすれば州都アデリアは水で溢れる都になるはずだ。


「ではここから先は(・・・・・・)ドゥルグ大工屋に任せる」


「ははっ。必ずやセシル様の期待に応えていただきます。ではさっそく――――」


 ドゥルグは俺の前に立った。


 一応、(かたち)上で俺が主体になるわけにはいかないので、その場から離れていく。


 後ろからドゥルグの大声が聞こえてきた。


「本日よりここは我らドゥルグ大工屋が工事に入る! ここに住まう者は速やかに家を空けるように!」


 まあ、ここまで聞いたら極悪非道な異世界の貴族らしさだよな。


 そう思うと異世界って平民達って生きるだけでも大変だな。


 隣のアリスは……やはりどこか泣きそうな表情をしている。きっと彼らの苦境が痛いくらいわかるからなんだろうな。


 俺達が馬車に乗り込む頃、ドゥルグの大声の続きが聞こえてきた。










「これからここで行う事業は非常に大掛かりの事業である! 我がドゥルグ大工屋は必ず事業を成功させねばならない! しかし、現状のままでは人手が不足しているのだ! そこで、我がドゥルグ大工屋に雇われたい者を募集したい! 給料は住まいは――――」












「えっ……?」


 アリスが驚いたように窓の外を見つめた。


「アリス。どうかしたのか?」


「え、えっと……ドゥルグ様が作業員を雇うと……?」


「そうみたいだな。大事業ともなると、大体2~3千人は欲しいだろうしな。今のドゥルグ大工屋は他の仕事もあって、百人も参加できないんじゃないか?」


「へ? あれ? 人がいないのに……セシル様の依頼を受けたのですか?」


「さあ? どうやら自信があったんじゃないか? 2~3千人の人手を確保できると」


 ものすごく不思議がるアリスに、珍しくセバスがクスッと笑みを浮かべた。


 おおおお! セバスも笑うんだ!?


「アリス。建前と本音をちゃんと聞き分けなさい。それはメイド道にとってすごく大切なことなのだから」


「セバス様……よくわからないです……」


「まだまだ勉強不足。日々の鍛錬を怠らないようにな」


「はい……で、でも!」


「?」


「一つだけ……わかった気がします」


「わかった気がする? 何をだ?」


「セシル様はみんなをただ追い出しただけじゃなかったってことです!」


 …………。


 呆れたようにセバスは小さく呟いた。


「アリス。今後、それは絶対に口にしないように」


 本当に、建前と本音って難しいよな。

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