第4話「排除される者」―【エリミネア】―
「……あ、あ……」
声が漏れる。
押し殺すような響きと、ほどけるような響きが同時に混ざる。
崩壊し続ける肉体を維持するために、生きたものを喰らい続ける存在――【エリミネア】。
「下がれ」
ユリウスの声が低く落ちる。
それだけで、空気が少しだけ軽くなる。
少女は一歩下がり、
カイルも身体をわずかに後ろへ引いた。
お腹の子を庇うように、エレナが位置をとる。
その時、怪物の濁った目が細まり、口元が歪んだように見えた。
誰も言葉を挟まない。
その場の全員が理解している。
ユリウスは一歩前へ出る。
距離を測る。
視線が、怪物の全身をなぞる。
崩壊しては再生を繰り返している。
(成体ではない。「核」はどこだ)
一瞬の逡巡。
ユリウスが踏み込む。
――見えない。
次の瞬間、剣は怪物の腹を貫いていた。
鈍い抵抗の奥で、何かを砕いた手応え。
腹部に、一直線の風穴が開く。
血が遅れて溢れ出し、内側からぐじゅりと崩れる音がする。
だが――
その穴が、蠢いた。
肉が内側からせり上がる。
崩れた組織が押し戻されるように集まり、粘ついた音を立てて埋まっていく。
最後に、皮膚が引きつれるように閉じた。
「……」
ユリウスの目が細くなる。
もう一度、先の一撃よりも強く踏み込む。
「閃突っ!!」
再び怪物が穿たれる。血飛沫が散る。
だが――
傷口は瞬時に再生する。
怪物の顔が歪む。
だが口元は、わずかに上がっている。
腕が伸びる。
――速い。
だが、ユリウスは剣を構える。
怪物の腕を払い、距離をとる。
「行け」
振り返らない。
「早く行け!!」
その声が響いた瞬間、
エレナの身体が、先に動いた。
「カイル、二人を連れて逃げなさい」
迷いはない。
――咄嗟に、そう言える人だった。
カイルの腕を強く引き、背中を押し出す。
「母さん――」
「いいから!!」
声が強くなる。
だがその手は、わずかに震えていた。
一瞬だけ、ユリウスを見る。
血が飛び、剣が走る。
「……っ」
息が詰まる。
それでも。
視線をカイルに戻す。
「行くのよ!!」
今度は叫びだった。
母としての命令。
カイルが二人の腕を掴む。
「……いや……」
リィナの震える声。
「大丈夫」
即座に返す。
嘘だと分かっていても、それでも言う。
それが母だから。
カイルの顔が歪む。
理解している。
ここで迷えば、全員死ぬ。
「……行くぞ!!」
歯を食いしばり、二人の腕を引く。
「――行くのよ!!」
「早く行け!!」
エレナはユリウスに視線を戻す。
再び、怪物の腕が伸びる。
剣で受けた衝撃で、ユリウスの足が床に沈む。
その瞬間だった。
ほんの一瞬。
呼吸一つ分にも満たない隙。
だが――それで足りた。
怪物の五指が伸び、ユリウスの体を貫いていた。
肉が裂ける。
血が噴き出す。
それでもユリウスは倒れない。
踏み込む。
さらに前へ。
自分の身体を貫いた指を、押し込むようにして距離を詰める。
「剣は振り出しで――決まる」
そのまま、剣が走る。
一撃ではない。連続。
怪物の肩口胸部と腹部が穿たれる。
だが、すぐに傷が閉じる。
骨が戻り、再生する。
ユリウスの目が、ほんのわずかに細くなる。
「……そうか」
理解した。
殺せない。
ここで終わる。
それでも。
「カイル!!二人を頼んだぞ!!」
叫びが、叩きつけられる。
カイルの身体が、動いた。
歯を食いしばる。
涙は出ない。
ただ、前を見る。
――同時に、背後で何かが終わった。
こんばんわ、アトレイです。
今回はタイトル名でもある【エリミネア】の説明回です。
しっかりとした説明は第1章で書きますが、ちょっとだけ解説。
名前のモチーフは、elimination(=排除)です。
その名の通り、排除される者です。
この後、彼らを討伐するための組織《機関》が登場しますが、この《機関》によって命名された怪物たちの総称です。
常に体が破壊と再生を繰り返している。
そのために「捕食」をしているわけですが、老若男女特に区別なく食べます。
でも、個体差があって好き嫌いはあるようです。
そこら辺に「性格」と「知性」を表現できたらいいなーなんて頑張っている次第です。
次回は、、、
グロ回です。
覚悟はいいか!?(プロレス好きなのバレる)
勇気を持って読んでいただけると嬉しいです。
でわでわ。




