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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
第2章

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第11話「侵腐の森」 ―生きる理由―



 東の拠点を出て半日。

 荒廃地帯を越えた先で、景色は明確に変わり始めた。


 風が重い。胞子の湿気った匂いと、古い血液の臭いが交じり合って鼻をつく。


 前方、地平の先にそれはあった。


侵腐(しんぷ)の森】。


 空へ歪に伸びる巨大な菌糸の柱。

 樹木ではなく、骨や内臓のように白濁した幹が絡み合い、まるで一つの巨大な臓器を形作っているようだ。


 枝の代わりに菌糸の束が伸び、葉の代わりに肉色の胞子嚢が垂れ下がる。

 風に煽られる度に、白い粉雪のような胞子を音もなく降らせていた。


 生きている。

 森そのものが。


 リュシアは無意識にレイピアの柄を握り直した。


「……何度見ても、気持ち悪りぃな」


アンテラが吐き捨てる。


「森っていうより、でかい死体だろこれ」

「概ね間違っていませんよ」


ハーレインが穏やかに返す。


「かつて、先人たちの営みに対する地球の自浄作用です。要するに、私たちは排泄物の中を歩いているようなものです」


「朝から最悪の例えやめろ」


ユスティナだけが前を見据えていた。


「幼体がいる」


彼女は短く言った。


「止まるな。成体は斬れ。幼体は道を開くだけでいい」


四人は、森の中へ足を踏み入れた。


最初に感じたのは、異様な静けさだった。

鳥の声はない。風の音もない。


ただ、遠くで響く「ぐち、ぐち」という湿った音だけ。


血肉が蠢く音。


地面は柔らかく、踏むたびに沈み、泥が靴底にまとわりつく。


左手には白い菌糸と、かつて人間だった肉塊。眼窩から白い花のような子実体が咲いている。


ぬちり。


右前方で何かが動いた。


反応は同時だった。


アンテラの短剣が銀光を走り、リュシアがレイピアを手に半歩踏み込む。


ユスティナの大剣はすでに構えられていた。


幼体が、菌糸の林から飛び出した。


リュシアのレイピアが胸部を正確に穿つ。


ぐちり——脈動する核を貫くと、幼体は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


「左だ」


ユスティナの声。

リュシアが身体を捻る。横から、五体が一斉に飛びかかる。


「うわ、キリがねえ!」


アンテラが獰猛に笑いながら飛び込み、双短剣が首を三つまとめて刎ね飛ばす。


ユスティナの横薙ぎが空気を裂く。

大剣の一撃が幼体をまとめて地面に叩きつけ、道を強引にこじ開けた。


「前だけ見ろ」


リュシアはさらに加速した。


無数の視線。飢え、羨望、憎悪。


生まれたばかりの異形たちが、本能のままに襲いかかってくる。


「……お前たちは、一体」


崩れた肉の奥で、まだ核が微かに脈打っていた。それでも、それは確かに「生きよう」としていた。


「何のために生きている」


そして私は、何のために。



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