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第7話「凶星」—人間と怪物の狭間で—
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「北へ行くか、No.42」
背後から、低く重い声が落ちた。
振り返ると、No.9 ——アルゴスが立っていた。
濃い影のような男。
その周囲だけ空気が重く淀み、息を吸うだけで胸の奥に石を置かれたような圧迫感があった。
「……何」
リュシアの目が細くなる。
アルゴスの双眸は真っ直ぐ彼女を射抜いていた。
「お前は、何を求めて北へ行く」
「……ただの任務」
「任務は、死地に踏み込む理由に足り得ない」
静かで、逃げ場のない声。
「お前自身は、何を求める」
リュシアは即座に切り返した。
「……お前には関係ない」
アルゴスは東の空を見上げた。
口元だけが、わずかに歪む。
「北、か……随分と、分かりやすい」
一拍の間。
リュシアが踏み込もうとした瞬間、アルゴスはすでに背を向けていた。
「一つだけ、言っておく」
足を止めずに、背中で告げる。
「お前は、こちら側だ」
「……何の話」
返事はない。
ただ、肩がわずかに揺れた。
笑ったのか、それとも――
「……いずれ、お前とはまた相まみえる時が来るだろう」
すでにアルゴスの姿は回廊の闇に溶けていた。
残ったのは、重い言葉の余韻だけだった。
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