第5話「東の戦士たち」—北への召集—
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東の拠点は、空が高かった。
崩れかけた石造の塔が幾重にも積み重なり、【侵腐の森】の胞子さえ届かない高みにある。
天井はない。
吹き抜けの空間の遥か上方で、澄んだ夜空が広がっていた。
大広間には、すでに九つの影が立っていた。
リュシアの足が、ぴたりと止まった。
視線が、最前に立つ女性へと吸い寄せられる。
背に大剣を負い、銀髪をきつく後ろで束ねた戦士。
露出した腕には古い傷跡が幾重にも走っていた。
その存在だけで、空間全体に緊張が張りつめる。
No.4 ——ユスティナ。
この東の地で、最強の「戦士」。
記憶の中の姿と、何も変わっていない。
——いや、違う。
あの頃よりも、ずっと遠い。
「……」
声は出なかった。
「揃ったようだな」
低く、身体の芯まで響くような重さの声。
No.9 ——アルゴス。
他の戦士たちの注意が二人に集まる。
「今から任務を伝える」
ユスティナの声は感情を削ぎ落としていた。
ただ、冷たい事実だけが並べられる。
「北地域にて上位種が確認された。数は複数。すでに交戦中だ」
わずかな間。
「そして、No.10が戦死している」
空気が、ほんの僅かに重くなった。
それでも、誰も動揺しない。
誰も声を上げない。
「……【共喰い】の出現報告はない。純粋な上位種だ」
その一言で、十分だった。
ユスティナは淡々と続けた。
「上位種は、成体が捕食を重ね、崩壊を乗り越えた個体だ。過剰に肥大化した肉体が圧縮され、人に近い形に収束する」
視線が、ゆっくりと全員をなぞる。
「密度も、速度も、出力も、成体とは別物だ。一体で隊を壊す」
一瞬の間。
「そして何より……飢餓がない」
その言葉に、わずかな緊張が走った。
「喰う必要がないという意味だ。奴らは、目的で動く。主義を持ち、理由を持ち……哲学すら持つ」
ユスティナの声が、最後にわずかに低くなった。
「人間に限りなく近い、正真正銘の化け物だ」
静寂が落ちた。
風が吹き抜ける音だけが、遥か上空で鳴っている。
「戦線は押されている。増援として東から四名を派遣する」
そこで初めて、ユスティナの視線がゆっくりと流れた。
アンテラ。
ハーレイン。
そして――リュシア。
一瞬だけ、視線が交わった。
それだけだった。
「以上だ」
短く切り捨てる。
「顔合わせを行う。それ以外の者は解散」
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