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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
第2章

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第4話「願い」—名も無き失敗作—



「……《閃撃(せんげき)》」


左の巨腕ごと角を吹き飛ばし、胸部に一撃を叩き込む。


しかし手応えが軽い。

厚い脂肪が核を護っている。


「でへへ……いいな、それ!お前みたいな奴、羨ましくて仕方ねぇんだ」


巨漢が笑いながら右腕で角を振り回す。

リュシアは身体を回転させて受け流し、二本のレイピアを交差させて右腕を骨ごと断ち切った。


腕が地面に落ちる。


しかし荷馬車の【エリミネア】は笑顔のままだった。


「俺にもくれよ、いいだろぉ!?」


再生した左腕で再び角を構える。


同じ構え。

同じ距離。

同じ威圧感。


リュシアは再び踏み込む。


同じ技。

同じ軌道。

同じタイミング。


――だが、


ほんの僅かに“浅い”。


「……《閃撃(せんげき)》」


巨漢は角で受け、腕ごと吹き飛ばされた。

そのまま胸部の核を狙うが、また分厚い脂肪に阻まれる。


「威力が落ちてるぞぉ!そんな肩じゃ、おデには届かねぇ!」


その瞬間、リュシアの視線が上がった。


レイピアを投擲。


一直線に荷馬車の【エリミネア】の頭部へ。


反応が遅れた。

頭部に深々と刺さる。


「ぐ……!?」


頭部への再生が始まると同時に、胸部の再生速度が落ちた。

リュシアはその一瞬を見逃さない。


「……これで終わり……《閃撃(せんげき)》」


刹那、銀光が夜を裂いた。


再生が追いつかない胸部に、容赦ない一撃が深々と突き刺さる。


厚い脂肪層をねじ伏せ、

肋骨を砕き、

核の鼓動を確実に貫いた。


荷馬車の【エリミネア】の行動が停止する。


「お前……リュシア、だったっけ?」


掠れた、獣のような声が漏れた。

頭部はすでにその半分が再生していた。


「お前みてぇに……“何か”として、見られる気分はどうだ?」


喉の奥で、粘ついた笑い声が泡立った。

血と唾液が混じり、裂けた唇の端から滴り落ちる。


「……こんな身体で……おデ達は、何のために産まれたんだ?」


裂けた口元が、引き攣るように歪む。

視線だけが、リュシアを捉えたまま、決して離れない。


そこには、ただの殺意ではない。


不完全な存在として、自分達を産み落とした存在に対する憎悪と、この世界に繁栄してきた“生”への羨望が渦巻いていた。


「おデ達は、ずっと……お前らを見てきた。完璧な形、明確な『個』……」


巨体の膝が、ガクンと折れた。


「……おデも、名前……欲しかったなぁ」


最後の言葉は、ほとんど吐息だった。


ゆっくりと、巨体が傾ぐ。

灰と血と肉片を巻き上げながら、地面に崩れ落ちる。

重低音が響き、戦場に一瞬の静寂が訪れた。


リュシアは血まみれのレイピアを軽く振り、刃に付着した血液を払い落とした。


表情に変化はない。


「……ここでも、なかった」


その言葉は、灰に沈んで消えた。


この程度では――


あの日の光景を、塗り潰せない。


柔らかい掌の感触。

引き裂かれる音。


「……まだ、足りてない」


すぐに手を上げる。《伝言(メッセージ)》の魔法陣が淡く展開する。


「任務完了。成体四体、うち一体は狡猾化した個体……すべて討伐済み」


応答は即座に来た。


「――確認。次の任務だ。北地域で上位種が確認された。急ぎ、東の拠点に集合せよ」


魔法陣が消える。

リュシアは背後の死骸を一瞥もせず、歩幅を大きくした。


「……どこにいる」


誰にも届かない独り言。


灰を切り裂くように、リュシアは東の拠点へ駆け出した。

焦燥が、風よりも速く彼女を突き動かしていた。


肩の傷はすでに塞がっていた。



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