第2話「続いていくもの」―家族―
――理解が追いつかない。
「これが我が剣技・閃突だ」
速い、どころではない。
理解が追いつかない。そう思わせる剣だった。
少女の喉元で止まった木剣を見て、カイルが前へ出る。
「すげぇ……!!」
父の剣に目を見開いたまま、木剣を構える。
「父さん、今のやつ!!俺も!!」
「やってみろ」
言われるなり、カイルは勢いよく踏み込んだ。
「っ、はあっ!」
突きは速い。だが速いだけだ。
腰が浮き、
肩が流れ、
力がまっすぐ乗りきっていない。
ユリウスはわずかに半身で躱し、木剣で軽くその手元を払った。
「うわっ、いてっ!」
「感情だけが先に前に出ている。剣より先に、お前の殺気が届いている」
「そんなの分かるのかよ……」
「分かる」
ユリウスは真顔で言い切った。
少女は思わず笑いそうになる。
カイルは不満げに唇を尖らせたが、悔しさの奥に楽しさが見えていた。
「お前はどうだ」
ユリウスが少女を見る。
少女は少し迷ってから答えた。
「……難しい」
「そうだろうな」
「でも、なりたい」
強くなりたい。
父のように。
守りたいものを守れる剣が欲しい。
ユリウスはわずかに目を細めた。
「いい答えだ」
その一言が、胸の奥に静かに残った。
◆
家の中は、甘い匂いで満ちていた。
焼ける生地の香ばしさ。
温めた果実の酸味。
溶けた砂糖の、少し焦げた匂い。
「まだ見ちゃ駄目よ」
エレナが笑いながら言う。頬に少しだけ小麦粉がついていた。
テーブルの上では、リィナが椅子に乗って背伸びをしている。
小さな手を懸命に伸ばし、覗き込もうとしては「こら」とやんわり止められていた。
「すごいよ、お姉ちゃん!ろうそくもあるよ!」
「何本?」
少女が聞くと、リィナは両手をいっぱいに広げた。
「いっぱい!」
「いっぱいって……それ、何歳分だよ」
カイルが小さく笑う。
「いっぱい!」
「答えになってないな」
二人のやり取りに、エレナがくすりと笑う。
その手は自然と腹へ添えられていた。
まだ小さく、しかし確かにそこにある命。
衣服の上からでも分かる、わずかな膨らみ。
「賑やかになるわね」
エレナが言う。
「これ以上かよ」
カイルが呆れたように笑う。
ユリウスはその様子を静かに見て、わずかに頷いた。
少女はその光景を見つめていた。
暖かい。
柔らかい。
壊れるはずのない時間。
――続いていくものだと思っていた。
こんばんわ、アトレイです。
第1話から引き続き、読んでいただきありがとうございます。
まだまだ平和!
誕生日って羨ましいんです。
私の誕生日は春休みシーズンでして、、、
進級だの進学だのでクラスのメンバーが変わって
なかなか祝ってもらえなかったんです。
でも、始業式に担任から誕生日をみんなで祝いましょう!とか言われて。
みんなの引き攣った笑顔、今でも覚えてる。
とか言って、友達少ないから時期とか関係ないんですけどね!!
次回から展開が転がり始めます。
第3話もよろしくお願いします。
でわでわ。




