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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
第2章

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第1話「銀の戦士」—灰の中で踊る少女—


◆


【侵腐(しんぷ)の森】から降り注ぐ死の胞子は、雪のように静かで、しかし確実に“生”を蝕む。

吸い込んだ瞬間に肺の内側で根を伸ばし、肉を裂き、骨を押し広げながら宿主を新たな“森”へと変える。

それは、白とも黒ともつかない濁った色で空間を満たし、生きるモノすべてを拒絶するように、ただ降り続けていた。


その灰色の世界の中心で、怪物の「核」をその身に宿した少女が一人、戦っていた。


まるで踊るかのように。


◆


刃が走ると同時に「核」が砕かれる。

遅れてぐちゃりと肉が潰れる音が灰の中に消えた。

裂けた身体から噴き上がった血飛沫が、降り続ける灰と混ざり、空中で赤黒く広がっていく。


しかしその濁流の中心にいるリュシアには、血の一滴も触れる事はない。

敵の血も、死の灰も、彼女の銀髪にさえ届かず、まるで不可視の膜に弾かれるように輪郭の寸前で滑り落ちる。


踏み込みは小さく、しかし疾い。

次の瞬間には、もうそこにいない。


振り抜かれた怪物の腕の内側へ、銀の影が滑り込む。

最短距離で「核」を突く。


一撃。


返り血は一滴も浴びない。


次の手がリュシアに伸びる。

その腕を軸に少女は優雅に宙返りし、紙一重で躱す。

着地と同時に銀の軌跡が伸び、肋骨の隙間へ刺突を沈める。

抵抗なく内部へ滑り込み、核だけを正確に穿つ。

リュシアは、崩れ落ちる個体の背を軽く蹴った。


その瞬間、横合いから別の成体の腕が伸びる。

しかしリュシアはすぐに入り身で背を向け、成体の上半身を足場にして回転した。

着地と同時に懐へ飛び込み、レイピアを胸部に刺し込み、核をぐちりと砕いた。


血飛沫が弾ける。

灰が舞う。


それでも彼女の白い肌も、銀の髪も、純潔のままだった。

銀の髪が、わずかに揺れる。

光を失った空の下で、それだけが静かに輝いていた。

夥しい数の怪物の死骸の只中で、リュシアの呼吸は乱れず、肩は微動だにしない。


ただ、指先だけがごくわずかに震えていた。


◆


視界が歪む。

音が遠ざかる。


掌に蘇るのは、柔らかい掌の感触と、引き裂かれた瞬間の記憶。


「……違う」


その一言で、意識を引き戻す。

迫る成体へと強引に踏み込み、噛みつかれるより先に喉元へレイピアを突き上げた。

即座に逆手に構えたもう一方のレイピアが核を貫通する。

内部で潰れる音が響き、動きが止まり、そのまま灰の中へ崩れ落ちていく。


リュシアはゆっくりと刃を引き抜き、滴る血を振り払い、立ち尽くした。


静寂が戻った。


《伝言(メッセージ)》の魔法陣が淡く展開する。


「……任務、完了。第一、第二、第三任務、すべて完了」


間を置かずに返答が返ってきた。


「――確認。早いな。損耗は?」

「……問題ない」


答えたとき、再び視界がわずかに揺れた。

地面との距離感が一瞬だけ狂う。


「――次の任務だ。ロシク近郊【死灰雪原(しかいせつげん)】にて成体複数確認。調査および討伐を行え」


命令はそれだけで、確認も待たない。


「……了解」


魔法陣が消えるより早く、リュシアはすでにその場を離れていた。

積もる胞子を踏みしめるたび、靴底に残るぬめりは血だった。それがどの任務のものなのか、考えることもなく、ただ前へ進む。

視界の端が歪み、音が遠のき、感覚がわずかにずれていく。それでも足は止まらない。


「……一体、どこに」


自然と歩幅が広がる。

降り続ける死の灰を切り裂くように、彼女は止まることなく、闇の奥へと進み続けた。


◆


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