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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
第1章 初任務

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第8話「帰還」―それぞれの道―



灰はまだ降っていた。

血と腐臭の混じった空気が肺にへばりつき、息をするたび喉が軋んだ。


レオンは立ち尽くしていた。

足が動かない。

視界の端で、崩れた肉塊が蠢く。

ぐちぐち、と湿った音を立てて、撒き餌に群がっていた幼体たちが顔を上げる。

裂けた口の奥で舌が震え、糸を引く唾液が垂れる。

黒い眼が一斉にこちらを捉えた。


――飢えている。


だが、それだけではない。

彼らは形を保った身体、崩れていない生き物を、貪るように見つめていた。

奪うために。


「……おい」


近くでリュシアの声がした。


「この男はまだ生きている」


視線を落とす。

ガルドの胸がかすかに上下し、裂けた肉の奥から血が滲んでいた。

まだ温かい。


「仲間を見殺しにしたいの?」


その一言で、我に返る。

しかし、誰もすぐには動けなかった。

周囲にはまだ影がうごめいている。

幼体たちが低く喉を鳴らしながら、肉を落としながら距離を詰めてくる。

足を引きずり、骨を露出させても、止まらない。


「……どうやって、この数を……」


ダンの声は乾いていた。

ミリアが前方を見据えたまま、低く言った。


「……包囲されている」


逃げ道は完全に塞がれていた。


「問題ない。私がすべて排除する」


リュシアは前を見たまま、静かに踏み出した。

次の瞬間、彼女の姿が消えた。

遅れて、肉が裂ける音が連続した。

ばき、と骨が折れ、核が砕ける。

二体、三体……瞬く間に崩れていく。

幼体は倒れながらも腕を伸ばす。

掴もうとする。

触れようとする。


――奪うために。


だが、その腕ごと断ち切られる。

銀の軌跡だけが残り、一直線に道が開けた。


「行って」


短い命令。

レオンの身体が反射的に動いた。

ガルドを担ぐ。

重い。

だがそれ以上に、妙に軽く感じた瞬間、胸の奥が締め付けられた。


走る。

足裏が灰に滑る。

肺が焼ける。

視界が揺れる。

背後では、絶え間なく破砕音が続いていた。



やがて門が見えた。


「……まだ追いかけてきてるっスよ……!」


セイルの声が震える。

幼体たちが雪崩れ込んでくる。

腕を引きずり、骨を露出させながら、それでもこちらを睨んでいる。

羨望と憎悪が混じった、ねばつく視線。


そのとき、風を切る音。


銀の閃きが群れの横を走り、リュシアが追いついた。

彼女は前に出て、幼体の群れと正対した。


「ここから先は通さない」


踏み込み。

景色が歪むほど速い。

音だけが残る。

連続する破壊の響き。

レイピアの切先が核に届くたび、幼体の動きが止まる。

再生しかけていた怪物たちの身体が、次々と地面に崩れ落ちていく。



見張り塔。


「――接近多数!!」


監視員の叫びが響く。

群れが荒廃地帯にまで迫っていた。

数が、異常だった。


「……なんだあれ……」


誰かが呟く。

その中を、一本の銀の線が走る。

速すぎて、見えない。


だが、確実に群れが削られていく。

核だけを正確に破壊され、怪物たちが崩れ落ちる。


「……あれが……『戦士』か……」


誰も動けなかった。

ただ、息を飲んで見つめていた。

神がかっているとしか、言いようがなかった。


「門、開けろ!!」


怒号が飛ぶ。

門が開く。

レオンたちが転がり込む。

直後、リュシアが反転し、追ってきた幼体たちに向かった。

門の外で、一方的な殲滅が始まった。



重い音とともに、門が閉じた。

外界を断つ。

レオンはその場に膝をついた。

肩から力が抜け、手が小刻みに震える。


「……閉めたのか……」


ダンが呟く。


「……外にいるんだぞ……」


セイルが門を見つめたまま言う。

ミリアが低く答えた。


「閉めなければ、居住区(コロニー)にも奴らが入ってきていた」


沈黙が落ちる。


「……あいつ……一人で……」


誰も、何も言えなかった。

レオンは門を見つめていた。

見えないはずの向こう側に、止まった文明の中でただ一人闘う少女の姿が、鮮烈に焼き付いていた。



医療棟。

白い天井。

消毒液の匂い。


ガルドが運び込まれる。


指示が飛び、布が裂ける音、器具の金属音が響く。

レオンは壁にもたれ、手を見つめていた。

血が乾き、黒く固まっている。


(……俺は)


何もできなかった。



数日後。

病室に入ると、ガルドが目を開けていた。


「ガッハッハッハッ!お前も生きていたか!」


レオンの喉が詰まった。


「……俺は……」


言葉が続かない。

ガルドがゆっくり息を吐く。


「カッコつけたのに助かっちまったな、みっともねぇ」


レオンが顔を上げる。


「……隊長……」

「生き延びたなら、どんな形でも俺たちの勝ちだ」


重い沈黙のあと、ガルドは続けた。


「いいか、レオン。逃げ延びた先で何をするかが重要だ」


その言葉だけが、レオンの胸に深く残った。



死灰雪原(しかいせつげん)】の中。


リュシアは一人、歩いていた。

撒き餌の痕跡が続く。

引きずられた跡、乾ききらない血、齧られた肉片。


「……狡猾になっている」


足を止める。


違う。

成体ならば、もっと直接的な飢餓と殺気が先に来るはずだ。

あんな回りくどい誘導などしない。


「……普通じゃない」


《機関》で教えられた特徴とは、明らかに違う。

わずかに目を細める。


「……早く見つけなくては」


彼女は再び歩き出した。

次の任務へ。






こんばんわ、アトレイです。


第1章完結です!ありがとうございました。


新年度が始まりましたね。

いかがお過ごしでしょうか?

新卒が入り、始めて指導する後輩の姿を見ながら

私は忙殺されています。


どこもきっとそうですよね。


その中で執筆されている諸先生の皆様には

頭が上がりません。


私は到底無理なので、

第二章、作成はしておりますが、

しばらくお休みするかもしれません。


連載再開したらまた見てくださいね。


絶対ですよ、、、


でわでわ。



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