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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
第1章 初任務

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第7話「閃撃」 ―受け継ぐ者―



五人は圧倒されていた。

勝てない――その言葉が、はっきり脳裏に浮かぶ。


ガルドが低く笑った。


「……あんまり人間様をナメんじゃねぇぞ!!」


レオンが顔を上げる。

ガルドは前を向いたまま、ウォーハンマーの柄を握り直していた。

その背中で分かる。


決めたのだ。


「レオン。あとは任せたッ……!!」


「隊長、何を――」


ガルドが振り返りざまにウォーハンマーを投擲した。

戦鎚が唸りを上げ、後方の幼体群に直撃。

血路が開く。


「今だ!! 走れ!!」


「隊長!!」


「命令だァ!!」


成体が嘲る。


「……英雄ごッこカ?」


ガルドは素手で一歩前に出た。

口元から血を垂らしながら、笑った。


「うるせぇよ、化け物。今、部下にいいところ魅せてる最中だろうがッ!!」


レオンの足が止まる。

あの日、初めて外に出た時、噛みつかれた自分を助けた背中。

笑いながら「強くなれ」と言った背中。

――期待してるぞ、レオン。


胸の奥が軋む。

置いていくのか。この人を。


でも、背を向ければ全滅する。


「ガッハッハッハッ!!喜べ、帰ったらお前が隊長だぞ!!レオン!!」


成体が、長い腕を持ち上げる。


「イイ話、ダナ」

「きっと、泣けるぜ?」


そして、ガルドは一歩を強く踏み込んだ。





一騎打ちだった。

いや、戦いですらなかったのかもしれない。


ガルドの拳が成体の顔面へ叩き込まれる。

骨が砕ける音。

成体の首がねじ曲がる。

そのまま胴へ突進し、崩れた壁へ押し込む。

灰が舞い、瓦礫が崩れる。


ガルドは咆哮を上げながら何度も殴る。

拳が肉を潰す。

皮膚が裂ける。

骨が露出する。


だが成体は、崩れながらも笑っていた。


「頑張ったナ……だガ、これで終わりダ……」


長い腕が、ガルドの腹へ沈む。


ずぶり、と。

鈍い音。


「……が、っ」


ガルドの口から、血が溢れる。

それでも引かない。

成体の肩へ噛みつくように掴みつき、頭突きを叩き込む。


だが、その直後。


長い指がガルドの胸を抉った。


肋骨の隙間へ指先が潜り込む。

肉を裂く。

骨を外側へ押し広げる。

血が止めどなく溢れ出る。


ガルドの喉から、言葉にならない音が漏れた。


「すごイな……マダ、生きテる」


成体のもう一方の腕が、ガルドの下顎を掴んだ。

嫌な予感が走る。


レオンは叫んでいた。


「やめろォ!!」


成体は、愉しむように、ゆっくりと力を込めた。

顎が軋む。

頬骨が鳴る。

皮膚が裂ける。


誰も間に合わない。


そして――空気が、裂けた。



何かが通った。

そうとしか認識できなかった。


目の前の灰が、二手に割れた。


成体の長い腕が宙で止まる。

細い銀閃が、走っていた。


次の瞬間――腕が、落ちた。


肘から先が、ずるりと地面へ滑り落ちる。

血が、遅れて噴き出した。


成体が後退る。


「……ア?」


灰の向こうから、ひとりの少女の姿が現れた。


銀髪だった。


灰の世界の中で、それだけが異様なほど白い。

まるでこの死んだ景色に抗うように、光をわずかに反射している。


短く切り揃えられた髪。

華奢な体躯。細い肩。

長い睫毛の下の瞳は、凍ったように静かだった。


整いすぎた顔立ちは、この死んだ景色の中で場違いなほど美しい。

冷たく、張りつめていて、触れれば切れそうな美しさだった。

そして、両手には二本のレイピアが握られていた。


レオンが、息を呑む。


――《機関》の「戦士」。


人類が【エリミネア】に対抗するため、その核を人間の体に埋め込んで生み出した異能の兵。


少女は、成体だけを見ていた。


ガルドの惨状にも。

血の匂いにも。

視線一つ、乱さない。


「……排除する」


小さく、そう呟く。


成体が怒りに顔を歪める。

失った腕の断面が蠢き、再生を始める。


「なんダ、お前」


少女は答えない。


ただ、片方のレイピアを僅かに下げた。

踏み込みのための、ほんのわずかな予備動作。


成体の腕が伸びる。


――速い。


人類ならば誰も反応すらできない攻撃。


だが少女はもう、そこにはいなかった。


核へ最短で届く一筋の銀閃。


少女が低く告げる。


「――《閃撃(せんげき)》」


その言葉が落ちた瞬間。


成体の全身が、内側から弾けた。

核が砕けている。


胸が裂ける。

首が落ちる。

内臓が溢れる。


青白い肉体が、支えを失って崩壊する。

どしゃり、と灰の上に沈む。


灰だけが降り続く。


少女は、血の滴るレイピアを軽く振った。

黒い血が線を描いて落ちる。


それから、ようやくこちらを見た。


視線がレオンを通り、倒れたガルドへ落ちる。


一瞬だけ。

ほんの一瞬だけ、その凍った瞳の奥に、何かが揺れた気がした。


痛みか。

怒りか。


それとも、遠い記憶の欠片か。


だが次の瞬間には、もう消えていた。


冷たい静けさだけが残る。


「……すぐに居住区(コロニー)へ戻る」


声は低く、感情が薄い。

なのに、逆らえない。


レオンはそこで初めて、自分が呆然と立ち尽くしていたことに気づいた。


少女はレイピアを収める。


横顔は、息を呑むほど綺麗だった。


それだけに、余計に異質だった。


こんなものが人間側にいるのか、と。


そう思ってしまうほどに。


ダンが、血を吐きながら呟く。


「……なんだよ、あれ……」


ミリアが掠れた声で答える。


「……《機関》の、戦士……」


少女は短く名乗った。


「No.42」


灰の中で、銀髪が揺れる。


「リュシア」



こんばんわ、アトレイです。


第1章もクライマックスです。


お待たせすぎたかもしれません…が、!!!!


この物語の主人公・リュシアの登場です。


《機関》とは何なのか、

【エリミネア】はなぜ生まれたのか、

リュシアはなぜ「戦士」になったのか、

序章ってなんだったの?

魔法?【侵腐の森】?モノローグ??


少しずつ解説していきますので、

引き続きよろしくお願いします…。。。


でわでわ。




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