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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
第1章 初任務

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第3話「荒廃地帯」―残された世界―


◆


門を出た瞬間、空気が変わった。

冷たく、乾いている。

それだけだ。


――いつも通り。


レオンは一歩踏み出す。

背中に、さっきまでの温もりがまだ残っている気がした。

振り返らない。振り返れば、足が止まってしまう。

分かっている。


「ガッハッハッハ!!緊張してんのか、レオン!!入隊の頃からちっとも変わんねえな!!」


ガルドの豪快な笑い声が響く。

隊はすでに動き始めていた。五名の隊員が、警戒を保ちながら荒廃地帯を進む。


先頭のガルドは、相変わらず――食っていた。

片手にハンバーガー。三個目だ。


「仕事中ですよ、隊長」


レオンがため息混じりに言う。


「問題ねえ!!まだ三個目だぞ!!」

「個数の問題じゃねえですよ」

後ろからダンが笑う。


「戦闘になったら絶対後悔しますよ」

「腹が減る方が大問題だ!!」

言いながら、また一口かじる。


……この人は、本当に。

レオンは小さく息を吐いた。


「セイル、物陰にも注意を払って下さい」

「あ、はいっス!」

「ミリア、前方の反応は?」

「異常なし」

淡々とした声。いつも通りだ。


レオンは周囲を見渡す。

崩れた建物、朽ちた鉄骨、雨風に削られた道路。

動くものはない。音も、ほとんどない。


ここは荒廃地帯。

【侵腐(しんぷ)の森】の胞子が届かない、空白の領域。

虫一匹すらいない、死んだような静寂。


だからこそ、かつての文明が、そのままの姿で残っている。


「こういうの、初めて見るんスけど……ちょっと感動っスね」

セイルが呟く。


「……何もねえだけだろ」

ダンが肩をすくめる。


「いや、逆にっスよ。なんていうか……時間が止まってるみたいで」

「止まっている、か」

レオンは短く返す。


確かに、その通りだ。ここには“変化”がない。

ただ、文明が終わったまま、朽ち果てているだけ。


◆


「荒廃地帯の中間ライン、あと少しです」

ミリアの声。


レオンは頷く。

「確認後、記録。異常があれば即報告」

「了解っス」


これが調査隊の仕事だ。


【侵腐の森】の拡大状況確認。

侵入した【エリミネア】の排除。

そして、防壁の維持。


単純だが、一歩間違えれば居住区は確実に終わる。


「……来ます」


ミリアの声が、低く張りつめた。

レオンの意識が一瞬で切り替わる。

「数は?」

「二……いや、三体」

「全員、警戒。迎撃準備」

空気が一気に凍る。

「右だ!」


次の瞬間、姿を現した。


【エリミネア】の幼体。


皮膚が裂け、肉がぼろぼろと剥がれ落ち、白い骨が覗いている。


それでも、動く。


裂けた口が不自然に広がり、黒い粘液を垂らしながら、こちらを――ただひたすらに、喰おうと見つめている。

飢えか、憎悪か。

それとももっと根源的な何かか。

得体の知れない執念だけが、そこに満ちていた。


「――来る!」


ダンの銃声が乾いた空気を裂く。

弾丸が胴を貫き、肉が弾ける。

体がねじれる。

それでも、止まらない。

這うように近づいてくる。


「相変わらず、しぶてえな」


二発目。

胸骨が砕ける音。

ようやく動きが止まった。

次に、レオンが前に出る。


「セイル、右側の奴を。中心は狙わず、動きを止めろ」

「は、はいっス!」


セイルが踏み込む。

ダガーが閃き、左の足を切り裂く。


浅い。だが十分だ。


「そのまま下がりなさい。あとは私が」


レオンが続く。

剣が走る。

右膝の関節を正確に断つ。

足を失った幼体が転倒する。


それでも――腕だけで這いずり、前に進もうとする。自分の肉を削りながらでも、止まらない。


「なんなんっスか、こいつ……!」


セイルの声が震える。


「慌てるな、セイル。胸骨の『核』を狙いなさい」


レオンは淡々と告げ、踏み込む。

一閃。

正中を断つ。

ようやく、動きが完全に止まった。


だが――


「もう一体来るぞ!」


ガルドの声。


三体目が、真っ直ぐ突っ込んでくる。

身体は崩壊し続け、腕が千切れかけている。

それでも、進む。

喰うという衝動だけが、駆り立てている。


「ガッハッハッハ!!いい根性だな!!」


ガルドが一歩踏み込む。

巨大なウォーハンマーが弧を描き、空気ごと叩きつける。


ぐしゃり。


肉と骨が同時に潰れ、黒い体液が飛び散る。原

形を失った塊が、地面に沈む。


「……終わり、っスか」


セイルが息を吐く。


「ガッハッハッハ!!ま、こんなもんだろ!!」


ガルドが鼻を鳴らし、四個目のハンバーガーの包みを広げる。

ダンが苦笑する。


「あんなの見た後によく食えますね……」


レオンは倒れた幼体に視線を落とす。


崩れ落ちた肉体。

最後の瞬間まで、こちらを殺し、喰おうと見つめていたような気がした。


「今日はもう日が落ちます。ここで野営しましょう」


◆


日没前。野営地を設営する。

簡易機材を広げ、警戒線を張る。


「ガッハッハッハ!!今日も平和だな!!」


ガルドが言いながら、また包み紙を破る。


「どこがですか」


ダンが即座に返す。


「エリミネア三体に襲撃受けてますよ」

「少ねえ!!」

「基準がおかしいんですよ」

「まあまあ。ほら、一個食うか?」

「いらねえですよ」


軽口が飛び交う。

セイルが笑い、ミリアは無言で周囲を警戒している。

ランプの淡い光が揺れる中、レオンは少し離れて空を見上げた。


ただ暗いだけ。

静かすぎる。


「外の世界のお話、忘れないでよ」


ユナの声が、ふと蘇る。


「覚えてるよ」


小さく呟く。


興味を持たせない方がいい。

知らない方が、ユナは笑っていられる。

それでも、約束は守らなければならない。

帰って、話さなければならない。


「レオン、交代だ。次お前」


見張り番を終えたダンがやってきた。


「了解」


レオンは立ち上がる。


ここは外だ。

気を抜けば、家族の温かさなど一瞬で失われる。


◆

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