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エリミネアー世界の敵を排除するー  作者: AtoRei
第1章 初任務

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第2話「出発」 ―約束の向こう側―



食事が進む。皿が空く。音が重なる。

その合間に、短い沈黙が落ちた。

箸が止まり、エマの手も止まる。

ほんの一瞬。


「ねえ」


エマが口を開いた。


「外って、何か持って帰れたりするの?」


ユナがすぐに反応する。


「え、持って帰れるの!?石とかさぁ」


レオンは二人を見て、穏やかに答えた。


「持ち帰りはできない。全て処理対象になる」

「なんでー??」

「胞子が付着してる可能性がある」


淡々と続ける。


「持ち込めば、一瞬でここが【侵腐(しんぷ)の森】に飲み込まれる」


ユナの表情が固まる。


「……そんなに?」

「一晩あれば十分だ」


短い説明だった。

ユナは少し黙る。

視線が、ほんの一瞬だけ下に落ちる。

だが、すぐに顔を上げた。


「じゃあさー」


無理に明るく口にする。


「どんなのあったか、帰ってきたら教えて!」


少しだけ身を乗り出す。


「ちゃんと、いっぱいね!」


レオンは一瞬だけ言葉を止めて、


「……ああ。それならできる」


と頷いた。


「約束?」

「……約束でいい」


ユナは、小さく笑った。

安心したような、少しだけ力の抜けた笑いだった。

エマは、気づかれない程度に小さく息を吐いた。

そのまま、ユナの皿を静かに整える。



食器を重ねる音が、小さく響く。

ユナが、ほんの一瞬、二人の顔を見て――


「お風呂入ってくるね!」


少しだけ明るく言う。

椅子から立ち上がり、そのまま背を向ける。

軽い足音だけが、少しだけ早足で遠ざかっていった。


残されたのは、夫婦だった。


「今回の調査、長くなりそう?」

「どうだろうな。状況次第だ」


短い会話のあと、水音だけが続く。


「……ねえ」


エマが言う。


「ちゃんと、帰ってきてね」


その声は、いつもより少しだけ低かった。

そのまま、言葉の続きは出なかった。

代わりに、レオンの手元を一瞬だけ見て、

何も言わずに視線を戻す。


レオンは頷く。


「ああ。ユナとも約束したしな」


それ以上は何も言わない。



朝。

空気が冷たい。

ユナが外まで出てきていた。


「早いじゃん!」

「いつも通りだ」

「今日くらいゆっくりでいいのにー」


ユナは少しだけ口を尖らせる。

それから、


「ねえ」


と、言った。


「外の世界のお話、忘れないでよ?」


レオンは苦笑する。


「覚えてるよ」

「絶対だからね」


小さく念を押すように言う。

その指先が、ほんの少しだけ袖を掴みかけて、

迷うように止まり――すぐに離れた。

レオンは一瞬だけ目を細める。


それから、


「……ああ。約束だ」


と答えた。

ユナは満足そうに頷いた。

エマは何も言わない。

ただ、静かに見ている。


「いってらっしゃい」


その声は、いつも通りだった。

レオンも、いつも通りに頷く。


「行ってくる」


振り返らない。

そのまま歩き出す。


門の前には、すでに隊員たちが集まっていた。

それぞれが装備を整えている。

レオンはその中へ歩み寄る。

背中に、視線を感じた。

振り返らない。

振り返れば、立ち止まってしまう。

分かっているからだ。


「遅いぞ、レオン!!」


笑いながら、肩で空気を押しのけるようにしてこちらにやってくる。


「予定より全然早いですよ」


レオンは淡々と返す。


「誤差だ!!」

「誤差じゃありません」


ガルドは笑っている。


レオンは周囲を一瞥する。

全員、揃っている。

緊張はあるが、前を向いている。


――問題ない。


「行くぞ!!」


その一言で、場の空気が引き締まる。


門が、ゆっくりと開く。

外の空気が流れ込んでくる。

冷たく、乾いている。

わずかに、鉄の匂いがした。

レオンは一歩踏み出す。

境界を越える。


その瞬間――


背中に残っていた温度が、すっと消えた。

代わりに、乾いた風だけがレオンを包んだ。




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