第1話「日常」 ―温かい場所―
食卓には、少しだけ料理が多く並んでいた。
皿が一つ多い。
いつもなら出ない温かいスープが、さりげなく置かれている。
レオンはそれを見て、何も言わなかった。
理由は分かっている。
「ほら、早く座りなさーい」
そう言いながら、エマはスープを少しだけユナの手元に寄せた。
冷めないうちに、という仕草だった。
レオンは頷き、椅子を引いた。
向かいのユナがすぐに口を開く。
「ねえねえ、外って次はどこまで行くの?」
「決まってないよ。状況次第だ」
「じゃあ、すっごい遠くまで行くかもってこと?」
「可能性はあるね」
その言葉に、妻のエマが一瞬だけ間を置いた。
「外って、どんなところなの?」
軽い調子で、会話を繋ぐ。
ユナが身を乗り出す。
スープの縁に腕が当たりかけて、エマがさりげなく器を引いた。
「見たことないところもあるんでしょ??」
「あるよ」
レオンは短く答えた。
「何にもないけどね」
「えー……何もないの?」
「色が抜けてるんだ。灰が降り続いているだけの場所」
ユナは首を傾げる。
「なにそれ。つまんなそう」
レオンは、わずかに目を細めた。
その反応を確かめるように。
「つまらないよ。見ても何もない」
少しだけ、言葉を重ねる。
「ただ歩くだけ。景色も何も変わらない」
その声は、やわらかい。
だが――
ほんの少しだけ、意図的だった。
こんばんわ、アトレイです。
お待たせしました…お待たせしすぎたかもしれませんっ!
ようやく推敲が終わりまして、本編が始まります。
第1章もよろしくお願いします。
でわでわ。




