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99 大会会場

 私が3人に声をかけてシアの方に行こうとした時、マリーに止められる。



「いやいや、デイジーがまだ寝巻のままじゃない。 着替えさせないと」



 新しい魔法の事を考えていたら、デイジーを抱っこしてたことをすっかり忘れていた。

 危なかった、デイジーいるのに魔法使ってた。



「そうだったね。 デイジー、お着替えするよ」



 デイジーをベッドに座らせようとするが手を放してくれない。

 着替えを持ってきてくれたマリーも呆れてため息をついている。



「デイジー、お着替え終わったらまた抱っこしてあげるから、ね?」



 しばらくの沈黙ののち、手を離して自分で立ってくれた。

 そのままデイジーは両手でばんざいしている。

 これは着替えさせてってこと?

 あ、そもそも自分で着替えとかしないのかも?

 昨日はそのまま部屋に戻ったからどうやって着替えてたか見てないんだよね。


 着ていたワンピースタイプの寝巻を脱がして、ドレスを着せてあげる。

 着せた後背中の所の紐を縛るだけだったので、着せるのは簡単だった。

 ドレスを着せた後はベッドに座らせて靴下をはかせ、後ろに回ったあと櫛を出して髪をとかしてあげる。



「ユリアは手慣れてるのね」

「そう? そんなに難しい事はしてないと思うけど。 あ、どうせなら髪型も変えてみる?」

「そんなこともできるの?」

「難しいのでなければできるかな」



 まずは両サイドを残してハーフアップにする。

 その後、残した両サイドを後ろに向かって三つ編みにして、土魔法でピン留めする。

 最後に、持ってきてもらったリボンで飾り付ける。



「どうかな? 簡単だけど結構可愛いでしょ」

「あなた器用なのね、こんな奇麗に編んだ髪型初めて見たわ」

「マリーも同じ髪型にする?」

「お願い!」



 という事でデイジーと同じ髪型にしてあげた。

 あ、そうだ、魔法で鏡が作れるかも・・・・・・効果にあるね。 


 効果で「鏡」を選んで属性は・・・・・・「氷」でいいか。

 対象は「任意の位置」で完成。

 魔法名はそのまま「姿見」でいいや。

 少し離れた場所に氷の姿見を魔法で作ってあげる。



「自分で見てごらん」

「え、なにこれ。 私が映ってる、しかもすごく奇麗に」

「魔法で姿見を作ってみたの。 あ、でも魔法だから触れると危ない可能性があるかも。 だから見るだけにしてね」



 触ろうとしてたマリーが手を引っ込める。

 デイジー含めて4人が自分の姿をまじまじと見ていた。

 この反応的に、この世界にはちゃんとした鏡が無いのかな?



「なかなかいいじゃない、今日はこのままデイジーとお揃いね」



 そう言いながら嬉しそうに姉妹で話している。

 いや、いつも同じ髪型でしょ。

 そのままのストレートだけど。



「さて、そろそろ行こうか。 みんなは大丈夫?」



 姿見を解除してシアを抱っこしようとしたらデイジーに引っ張られた。

 振り返ると両手を伸ばして「んー」と言っている。

 抱っこしろと言っているようだ。

 マリーと普通に髪型について話をしていたので、もう大丈夫かと思ってたけどダメみたい。

 仕方なくデイジーを抱っこしてシアと手をつなぐ。


 マリーが案内してくれるようなので、部屋を出た後はマリーを先頭に歩いていく。

 しばらく歩いたところでちょっと気になったのでマリーに聞いてみる。



「ねえマリー。 このままデイジーを抱っこしたまま他の人に見られても大丈夫? 誘拐だとか不敬だとか言われないかな?」

「あー、デイジーの教育係とかに見つかると何か言われるかも? でも私が説明するし注意されるとしてもデイジーの方だから、ユリアは心配しなくても大丈夫よ」



 それって対象がデイジーだったとしても、注意される可能性が高いって事だよね? 

 とはいっても離れてくれそうにないからどうしようもないんだけど・・・・・・


 マリーの後ろを歩きながら、お城の入り口まで行く間に数人のメイドさんに会ったけど、特に何も言われなかった。

 教育係じゃないからか、そもそも怒られるようなことじゃないのかわからないけど、何事もなくて一安心。


 お城の外に出ると馬車が止まっていて、メイドさんが1人立っていた。

 メイドさんはこちらに気が付くと、馬車のドアを開いて頭を下げる。


 マリーは何も言わずそのまま馬車に乗ったけど、私たちはどうしたらいいのかわからず立ち止まる。

 すると、馬車に乗ったマリーが手招きをするので私たちも馬車に乗り込む。

 全員が乗り込むと扉は締まり、馬車はお城の門を出てどこかに向かう。


 どこに行くのかマリーに聞くと、お城の近くに闘技場のような場所があるとのことで、そこに向かっているらしい。

 闘技場といっても、戦い以外にも何か大きな催し物がある時に使う多目的施設といっていた。


 近いというだけあって10分もかからず目的地に着いた。


 闘技場は、大きな闘技場の周りに広い敷地があり、いくつか建物や馬車を止める広場がある。

 その敷地を囲うように高い壁で囲まれていて、正面の入り口からしか入れないようになっている。

 そのため正面には長蛇の列ができている。


 が、馬車はお構いなしに横を通って中に入って行く。

 さすが王族の馬車。


 私たちの乗っている馬車は他の馬車が止めている広場ではなく、奥の建物の1つに入って行った。

 建物の中に入ると馬車は止まり、扉が開かれる。

 扉が開くとマリーが外に出ていくので、私たちも後に続く。


 馬車から降りてみると、そこは車庫のような場所で、豪華な装飾が施してあり、王族用の場所だとわかる。

 車庫のような場所から扉を抜けて歩いていくと、マリーはいくつかある扉の内の1つの前で立ち止まる。


 マリーがノックをして名乗ると中から扉が開く。

 扉はメイドさんが開けてくれたみたいで、マリーが中に入って行くので私たちもついていく。



「来たか」



 中にいたのは扉を開いてくれたメイドさん以外はいつもの王様と宰相さんと王子だった。

 マリーが時間を聞きにいってたからまだお城にいるのかと思ってたけど、髪をいじってる間に来てたのかな?

 それとも別の人に聞いたのかな?



「・・・・・・デイジーは大丈夫なのか? それとその頭はどうしたんだ?」



 中に入ってきた私たちを見て王様が質問してきたので私が答える。



「朝食はちゃんと食べてましたし、着替えの時はちゃんと自分の足で立ってましたよ。 髪型は私が軽くいじったものですね」



 私の話を聞いて安心した王様に、マリーが自分の髪を見せに行く。

 それを見た王様も感心して見ている。



「ああ、そうだった。 ルドルフ、ユリアにあれを」



 王様に言われて宰相さんは、紐を通してある木の板を持ってきた。

 その板には「1」と書かれていた。

 私がそれを受け取って確認していると、王様が口を開く。



「それは大会参加者用の番号札だ。 大会が終わるまでは首から下げていてくれ」

「わかりました。 そういえば何日くらい大会がるんですか? 国中から参加者が来るんですよね?」



 参加資格は特になくて、国中からくるとなるとこの世界だとしても3桁以上来てもおかしくない。 



「今日の参加人数はユリアを入れて16人だ。 元々は300人以上の希望者がいたが、昨日までの予選試合で勝ち残った15人とユリアの計16人が今日の参加者になる。 ユリアが強いのは知っているから、本戦にそのまま参加、という形ににした。 一応番号も移動や大会の盛り上がりを考えてその番号にしてある」

「無駄に戦わなくていいのは嬉しいですけど、いいんですかね? それと、この番号で盛り上がり方が変わるんですか?」

「国王として推薦しておいたから誰も文句は言わんだろ。 番号はな、強い者同士が最初に当たらないようにしてあるんだ。 優勝候補を1~4、5~8、9~12、13~16の4か所にばらしてある」



 なるほど、強い人が最初に当たって最後が強い人と弱い人だとあっけなく終わっちゃうもんね。

 予選を勝ち抜いてきた精鋭たちだと言っても強い人と弱い人だと差はありそうだし。



「ユリアが1番なのは開会式のあと戻らずすぐに戦った方が移動が少ないと思ってな。 最初から最後まで控室で待機するならあまり関係ないが、マリーたちと同じ席で観戦するなら何度も移動するのは面倒だろう。 準決勝辺りからは、見学席に戻って来てもすぐ控室に戻ることになると思うが」



 移動のことまで考えてくれてたのは嬉しい。

 控室にいるより皆と一緒に見たいからね。



「いろいろと考えてくれてたみたいで、ありがとうございます」

「まあ考えたと言ってもユリアが圧勝して終わるんじゃないかと思ってるんだがな・・・・・・」



 少し渋い顔でこちらを見る。 



「それなのに私を呼んだんですか? もちろん全力で戦ったりはしませんよ、王都を破壊しちゃったら大変ですし」

「呼びたいと言ったのはマリーだからな。 それに毎年だと困るが、1回くらいなら催し物として盛り上がる・・・・・・と思いたい」



 王様の推薦で参加した冒険者、しかもランクAでもなくBが圧勝して会場が冷めたら、何も言われないとしても気まずいのかもしれない。

 でも逆に女の子が強そうな相手を倒すのは盛り上がりそうだけどどうだろう?

 まあ今日のために新しく派手な魔法用意したから多少は盛り上がるでしょ。



「私はちゃんと手加減しますし、今日のために新しい魔法も用意したので少しは盛り上がると思いますよ?」

「手加減してる時点でどうなのかと思うんだが・・・・・・まあ盛り上げてくれるなら頼む」



 そんな話をしていたら扉がノックされ、受付の人が参加者が揃ったことを伝えに来た。

 王様が会場に向かうと言うので、みんなで建物から出ると、護衛の騎士たちが待っていた。

 建物から闘技場に伸びている通路を騎士たちに護衛されながら移動し、闘技場の中に入って行く。


 中は広い通路がいくつかあり、通路を進んでいくと途中で騎士が立っている通路があった。

 その通路の先に向かうと大きな扉があり、その扉の先には会場を一望できる特等席があった。

 王族用なのかな?



「それぞれ好きな場所に座っていいぞ」



 王様は一段と豪華な椅子に座りながら好きに座るように言ってくる。

 といっても、王様の座ってる椅子とその隣の椅子以外どれも同じ椅子なので、どこに座っても一緒だ。

 話し合いの結果、私たちはベッドで寝てる時と同じ配置で座ることになった。

 といってもデイジーは未だに一言も発しないどころかずっと目を瞑ったままだ。




「もうすぐ始まるからユリアは向かった方がいいぞ。 騎士に案内させるからついて行ってくれ」



 席に着いてからしばらくして、会場の観客たちが増えてきたところで王様が移動するように言ってきた。


 私に言った後、王様は近くにいる騎士に案内するように指示を出している。

 行き方もそうだけど、問題は離れてくれないデイジーだ。

 何で今日はこんなに離れてくれないんだろう。



 私はしばらくデイジーを説得して、戻ってきたらまた抱っこする約束で何とか離してもらう。

 私の隣にデイジーを座らせ、コウスラを自分の席に座らせ?て会場へ向かおうとしたところで王様に話しかけられた。



「スライムは置いて行くのか?」

「1対1の戦いじゃないんですか?」

「登録してある魔物なら一緒に戦えるぞ。 それに精霊使いが精霊と一緒に戦うのは普通だしな」



 なるほど、実戦形式なら持てる戦力は使うのも当然だ。

 でも・・・・・・



「私が今の全戦力で戦うと、フェンリル化したコウスラと大きな精霊2人、他にも少し大きめの精霊12人いますけど全員呼んでいいんですか?」

「・・・・・・いや、そのままの方がいいな、うん」



 王様が私から目をそらし、諦めたように呟く。

 そもそもフェンリル化したコウスラ一人で相手は戦意喪失するんじゃない?


 私は1人で案内の騎士についていき、案内された控室に入って行った。



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