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98 新スキルの確認

 大会当日。

 結局どういう戦い方をするか何も思いつかなかった。

 というかすぐに寝てしまって何も考えていない。 

 メニュー画面を開いて時間を確認すると、まだ4時半だった。


 この世界の人は日の出くらいに起きる。

 テレビやパソコンどころかまともな娯楽がないこの世界では、夜は家族との会話くらいしか楽しみが無い。


 一応魔法や魔石があれば夜でも明かりを灯すことはできる。

 しかし、上に立つ人たちが急ぎの仕事をするとかでなければ魔石の無駄遣いでしかないので、、早く寝て早く起きるのが普通なのだ。


 早く目が覚めたので、昨日の夜に決まらなかった大会の事を考えることにした。

 時間を確認するために開いていたメニュー画面からスキルなどを確認する。 

 

 普段は時間確認くらいにしかメニュー画面を開かないので、スキルや魔法の確認を全然していなかった。

 久し振りにスキルの画面を開いてみると2つも増えていた。



※習得条件「魔石を一定数集める」達成

〇魔石付与

自分で使えるスキル、魔法を魔石に付与できる。 


※習得条件「魔法を一定回数使用する」達成

〇魔法陣作成

空の魔法陣に、一覧から選んだ効果を付与して魔法を発動することができる。

作った魔法陣を登録することもできる。



 魔石付与ってお店で売ってるような魔石が作れるって事かな?

 どうやって魔石に魔法を登録してるのかと思ってたけど、このスキルを持ってる人が作ってたのね。


 うーん、私の場合魔石に魔法を登録する意味って何だろう?

 スキルや魔法を魔石に登録したとしても、使うには結局魔力が必要になると思う。

 発動が早くなるわけでもないどころか、付与した魔石を用意しないといけないので、身に着けるか手に持つ必要がある。


 そもそも自分で使うなら普通に魔法を使えばいいので、魔石にする必要はない。

 そうなると他の人に渡すために作るしか思いつく用途が思いつかない。


 もう1つのスキルは魔法陣作成だけど、これって普通に魔法使うのと何が違うの?

 普通の魔法を使うときにも対象や効果範囲や威力をイメージして決める。

 登録してあってもその魔法をステータス画面から選択して使うなら、普通に魔法を使うより発動が遅くなってしまう。

 よくわからないのでスキル画面を閉じて魔法画面を開いてみたが、こっちは変わっていない。



 さて、どうしようかと思った時、胸元で何かが動いた。 

 視線を正面にある画面から胸元に移すと、デイジーの頭が見えた。

 今日ものしかかっているようだ。

 昨日よりは低い位置にいるね。

 今日は口が閉じているので、涎まみれにはなっていないようだ。


 昨日と違って腕に乗られていなかったので、デイジーの頭を撫でてあげる。

 デイジーの表情が少し笑顔に変わると同時に、口というダムが決壊し、涎が胸元へと流れてくる。


 あー・・・・・・と思っても手遅れなのでそのまま頭を撫でてあげる。

 まだ早いし起こすのもかわいそうだ。


 それにしても服装が借りてる寝間着なので水をはじいてくれない。

 なので胸元が少しひんやりしてきた。

 今奇麗にしてもまた涎まみれになりそうなので、デイジーはそのままにしてメニュー画面の方に視線を戻す。


 正直私は今日の大会を楽勝だと思っている。

 今まで誰も倒せなかったフェンリルを倒せたし、昨日見た魔導士たちは隊長さんには悪いけど驚くほど弱かった。

 隊長さんが強ければ前に会ったBランクの冒険者はただ弱かっただけだと言えたけど、隊長さんがあれで強いとなるとあの冒険者もこの世界では強い可能性がある。

 あの冒険者をボコった時にスズランさんは驚いていたし。


 そうなると私が全力で武器攻撃や魔法攻撃をすると大惨事になる可能性がある。

 もしかしたら数少ないAランクの冒険者が出てきてBランクとは文字通り桁違いに強い可能性もあるけど。


 なので新しいスキルや魔法が追加されてたらそれを試そうと思ってたけど、どうにも戦いには使いにくそうな効果だよね。

 とはいえ試してみたら何か使い道があるかもしれないので、一応それぞれ試してみることにした。


 まずは魔石付与だけど、そもそも私は魔石ってほとんど持ってないんだよね。

 普通の魔石は全部孤児院に渡してたし。

 持ってるのはハチとロードと森の虎の3つだけで小さい物は持ってない。

 というか残りをジャスミンにあげちゃった。

 この希少、かはわからないけど、討伐記念の魔石で失敗したら嫌だし、買いに行かないとダメかな・・・・・・


 収納に入っている物一覧を見ながら考えるが、付与できる魔石が無い。

 なので、魔石付与はこのあと魔石を買いに行った後に試すとして、今は魔法陣作成をしてみることにした。


 魔法陣作成を使用すると、目の前に新しい画面が出てくる。

 その画面の中央にはただの円があり、画面上部にはいくつかのタブがあった。

 このタブから効果を選んで魔法陣を完成させるって事かな?

 ちょっと面白いかも。


 まずは「対象」タブを開いてみる。

 すると自分や周囲等、誰を対象にするかが出てきた。

 とりあえず後回しにして次のタブを見る。


 「属性」タブを開くと、自分が使える属性と同じ7つの属性が書かれていた。

 これも効果を決めてからかな。


 次に「効果」タブを開くと、どんな効果の魔法にするか、どんな動きをするかが出てきた。

 ただかなり量が多く、他のタブの比じゃない量が出てきた。

 これ全部試すのは気が遠くなりそうだ・・・・・・


 試しに洗浄の魔法を作ってみる。


 効果から洗浄を選び、対象は自分で属性は光だね。

 光以外はそもそも灰色になっていて選べないようだ。

 一部?の効果は特定の属性でしか選択できないのかな。


 試しで作った魔法をそのまま使ってみる。

 すると涎まみれだった寝間着が奇麗になり、お風呂上がりのようなサッパリした状態になった。

 うん、普通の洗浄魔法と効果は一緒だね。


 今作った洗浄魔法は登録せずに使ったらそのまま消えてしまった。

 なので新しくスキルを使用して魔法陣作成画面を開く。

 次は何作ろうかな・・・・・・


 効果一覧を眺めていると「手加減」というのがある。

 これを付ければ絶対に死なない?

 それともただ発動した魔法が弱くなるだけ?

 うーん、試す時間が無い・・・・・・


 その後、しばらく眺めていると面白そうな効果を見つけた。

 「物体浮遊」と「衛星軌道」の効果を合わせたら、自分の周囲に魔石付与した魔石をぐるぐるさせることができるんじゃない?

 ぐるぐるさせるだけで魔石は発動しないけど、パフォーマンスとしては面白そうじゃないかな?


 娯楽の無い時代では戦士同士の戦いは数少ない娯楽だったはずなので、見た目のインパクトがあれば見てる方も楽しいんじゃない?


 とりあえず1つ目は「物体浮遊」と「衛星軌道」の効果にした。

 属性は光属性しか選べなかった。

 補助系の魔法は光属性に入ってるし、これも補助魔法扱いなのかな。

 そして対象は「収納内にある任意の魔石」にして発動せずにそのまま登録してみる。

 が、登録できなかった。


 どうやら複数の効果を付ける場合はそれぞれ対象を選ばないといけないようだ。

 それはそうだ「収納内の魔石」だけを対象にすると、その魔石を対象に衛星起動してしまい挙動がおかしくなってしまう。

 今回の場合は「物体浮遊」の対象は「収納内の魔石」にしたけど、「衛星軌道」の方も対象を選ばないといけないようだ。

 こっちは「何がどこを」というのを登録しないといけないので、対象を「物体浮遊で動かす魔石」が「使用者」を、と再度登録する。

 登録後にメニュー画面からスキルや魔法一覧を確認すると、魔法の所に青文字で新しく「魔法陣1」という文字が追加されていた。


 名前が微妙な上に効果が分かり難いな・・・・・・と思っていると「魔法陣1」の文字が点滅して「名前を変えますか?」というポップが出てきた。

 どうやら名前を変えられるようなので、悩んだ末わかりやすく「魔石召喚」にした。

 収納から呼び出すので召喚でも間違ってないだろう。


 もう1つ何か作ろうかな、と思っていたらサクラが起きてきた。

 時計を確認するとそろそろ5時になるところだった。

 

 サクラが起きた後、挨拶をしていたらリーアやマリーも起きてきたので、シアも起こして相変わらず起きないデイジー以外は着替えて洗浄魔法をかけてあげる。

 私はスキルで着替えられるから、デイジーがくっついていても問題ない。


 サクラは鶏のお世話のために一度モウイの街に戻る。

 私はベッドをしまい、テーブルなどを出した後朝食を用意した。

 完成した物は一旦収納して、3人でおしゃべりをしながらサクラが戻ってくるのを待つ。


 サクラが戻ってきた後、朝食をテーブルに並べてデイジーを起こすことにする。



「デイジー。 朝食の準備ができたよ」



 優しく背中を揺すりながら話しかけるが、しがみつくだけで起きない。



「自分の椅子に座って皆で食べよう?」

「んー」



 デイジーはいやいやと首を振る。



「デイジーは食べないの? 体調悪い?」

「んー。 あー」



 デイジーは再び首を振ると、目を閉じたまま胸元に埋めていた頭を動かし横を向くと口を開いた。

 食べさせろって事?

 なんか幼児退行してない?

 いや、もともと幼児ではあるけど。


 私としては今日くらいなら食べさせてもいいと思う。

 明日以降私はいないので、こうやって甘えるのも今日が最後なのだ。



「仕方ない、お泊りも終わりだしね。 今日だけだからね?」



 私は朝食用に作ったデイジー分のサンドイッチを1つつまんでデイジーの口元に持っていく。

 デイジーはそれをパクっと一口食べると幸せそうにモグモグする。

 私はデイジーが再び口をあけるまでの間に自分の分を食べる。

 片手はデイジーを支えているので、片手でデイジーに食べさせつつ自分も食べるという結構忙しい朝食になった。


 食べ終わったデイジーの口を拭いてあげると、再び私にしがみつくようにくっつく。

 大会の時間までに魔石買いに行きたいんだけど、これだと行けそうにない。

 どうしようかな・・・・・・



「ねえマリー。 今日の大会がいつから始まるかと、魔石の小さいのと中くらいのを各10個ずつ売ってもらえないか聞いてもらっていい?」

「いいけど、魔石が欲しいの?」

「自分で討伐した魔物の魔石は珍しい物以外ほとんど手放しちゃうから持ってないんだよね。 本当は始まる前に買いに行きたかったんだけど・・・・・・」



 そういって私は抱えているデイジーを見る。



「あーなるほど。 じゃあ聞いてくるわね」



 マリーが聞きに行っている間に私はジャスミンの所へ行こうと思ってたけど、デイジーが離れてくれない。

 説得してみたけど離れてくれなかったので、仕方なくデイジーを抱っこしたまま一度家に戻ることにした。




「で、王女を誘拐してきたの?」

「だって離れてくれないし。 でもジャスミンの所には行かないといけないから仕方なくね」



 ジャスミンの知らない子を抱っこしたままジャスミンの所へ行ったので、すごく嫌な顔をされた。

 その後説明すると今度は何してるんだこいつみたいな目で見られた。



「だからって王女をかってに連れてきたらまずいんじゃないの? バレたら怒られるじゃすまないでしょ。 魔石は持ってるんだから無理に来なくてもいいのに」

「まあこれはただ魔力をあげてるだけというより、交流の一つだと思ってるからね。 なるべく直接あげたいんだよ」

「それは嬉しいけど本当に無茶なことはしないでよ?」

「うん、ちゃんと考えてるよ」



 魔力を渡した後、ディアにも挨拶だけしてお城に戻る。

 戻ってきてもまだマリーは戻ってなかったので、サクラとリーアの3人で雑談をしながらしばらく待っていた。




「ユリア、大会はお昼前に参加者が集まり次第始まるそうよ。 あとこれ魔石ね」



 魔石の値段を聞いたら、新しい料理とデイジーの面倒を見てくれたことへのお礼としてくれるらしく、値段は聞いてないらしい。

 せっかくお礼としてくれるというのに無理にお金を渡すのも悪いので、ありがたく受け取る。


 貰った魔石の内、小さいのを1つ手に乗せて他の魔石は収納する。

 そのまま私は魔石付与を試してみると、魔石付与できるのは収納してある魔石も対象みたいで、持ってる必要はないみたい。

 とりあえず小さい魔石に各7属性を付与してみるとすんなりできた。

 失敗したら壊れたりするかもと思って多めに貰ったけど、必要無かったみたい。


 付与は成功したみたいなので、今度は「魔石召喚」をしてみる。

 魔法を選んで収納内の魔石を1つ選択すると、私の周りを魔石がゆっくりくるくると回り出す。



「ユリアさんそれは何ですか? 魔石が浮いてるようですけど」



 それを見ていた3人のうちリーアが質問してくる。

 けどこれは大会まではヒミツなので今は教えないでおく。



「大会で見せてあげるから今は内緒ね」



 3人はそれで納得してくれたようで、それ以上聞いてこなかった。

 なので更に魔法を試してみる。


 今思ったんだけど、これって「物体浮遊」必要ない?

 衛星軌道ってそれだけで私の周りをまわってくれるよね?


 今の魔法はそのままにして新しく物体浮遊なしにしたものを作って発動してみる。


 あ、これはだめだ。

 危険すぎる。


 物体浮遊をしていた時はゆっくり回っていたけど、無しにすると勢いよく回っている。

 物体浮遊の「対象の近くにゆっくり浮く」という効果がないと、当たったらそれだけで攻撃になりそう。

 新しく作ったほうは削除して最初に作った方を使うことにする。

 余計な効果入れたかと思ってたけど、私の直感は間違ってなかったようだ。


 あとは実戦で試すだけなので、私の準備はとりあえずできた。



「よし、私は準備できたよ。 皆行こうか」



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