97 お城で2日目の夕食
食べるのが楽しみでしょうがないリーアとサクラ。
それとシアと話をしていた私がしばらく待っていると、マリーたちが扉をノックして開く。
部屋に入りながら中を見回した後、マリーたちの後ろには部屋に入らず待機しているメイドさんが1人いる。
「この匂い、今日もユリアの料理はある?」
部屋に入って来て開口一番食事の話だった。
「もう作ってあるよ。 マリーたちがいつ来るかわからなかったから冷めないように収納してあるだけ」
「何を作ったの?」
「メインはトマト煮込みハンバーグ。 あとはご飯と生野菜かな」
「新しい料理って事?」
「ハンバーグとご飯はこの国に来てから始めて作ったよ」
「なるほど、わかったわ」
それだけ言うとマリーは後ろのメイドさんの方を向き「呼んで来てちょうだい」と一言告げた。
メイドさんはマリーに頭を下げた後、そのままどこかへ行ってしまった。
マリーとデイジーが座ったのを見て、リーアとサクラも座る。
私は準備のためにシアを私の座っていた席の隣に座らせる。
マリーがさっきメイドさんに「呼んで来て」と言っていたので、たぶん王様辺りが来るんだろう。
でも待つように言われてないので、先に皆には食べさせちゃおう。
みんなそわそわしてるのに王様来るまでお預けはかわいそうだよね。
普通なら王様を待たずに勝手に始めてたら怒られるのかもしれないけど。
私は全員に刃の無いナイフとフォーク、水と野菜を出した後にハンバーグのお皿を出す。
「「おー!!!」」
ハンバーグを見ていなかったマリーとデイジーが歓喜の声をあげる。
見た目は喜んでくれたようでよかった。
あとはトマトの酸味が大丈夫かどうかかな。
チーズや牛乳があるとはいえ、パンと一緒に食べてた時よりチーズが少ないからより酸味を感じやすいだろうし。
まあ酸味がきつそうなら牛乳なりチーズなり追加すればいいか。
「たべていい?」
最初に言い出したのはデイジーだった。
「まだあるからもうちょっと待ってねー」
「うん!」
私のまだある宣言でデイジーがさらに笑顔になる。
本当に楽しみにしてくれてるんだね。
そんなデイジーを見てるだけで気持ちがいっぱいになる。
早く食べ始められるように手早く準備しちゃおう。
今回は自分で食べたい分取るスタイルではないので、大皿を置いてない開いている円形テーブルの中央にお櫃を1つ出して蓋をあける。
「なにこれー!」
「真っ白ね、それに不思議な香り」
お櫃の中を覗き込むデイジーとマリー。
私はお茶碗ではなく丸い平皿にご飯を丸く平らによそっていく。
ハンバーグならこっちの方がいいよね。
全員に配膳した所で食べていいよ、と許可を出す。
するとデイジーがフォークをハンバーグの真ん中に突き刺しそのまま食べようとする。
あれ、お肉とかナイフで切らないのかな?
私はあわてて止めて食べ方を教える。
マリーにナイフを使わないのか聞いてみると、基本的にお肉は一口サイズに切られて出てくるのでナイフ使わないそうだ。
凶器になるから出さないと言ってたけど、それを言ったらフォークも凶器になると思うんだけど?
使い方を説明したら全員ハンバーグを食べ始めた。
みんなお肉大好きだね。
「これはお肉? 不思議な食感だしジュワっと出てくる肉汁とトマトがすごく合うわね。 美味しいわ」
見ていたリーアやサクラは知ってるけど、マリーたちは見てないからこれが何だか知らないか。
一番目を引く物だからそれを食べたって事かな。
みんながハンバーグを食べて笑顔になるのを見た後、自分も食べようとしたところで扉がノックされる。
食べようとしてたのに・・・・・・王様たちが来ちゃったかな?
「どうぞ」
「ガチャ」という音と共に王様とアンドレさん、そして王子が入ってきた。
「新しい料理があると聞いて我々も食べさせてもらおうと思ってな。 頼めるか?」
王様はいろいろと話をしてるしアンドレさんは料理の話をしているし嫌いではないけど、王子は私の中で嫌いな相手だ。
前回のお仕置き以降、王様に会いに来た時何回か会ってるだけで話もしていない。
そんな相手を昨日と今日だけとはいえ、寝室に使っている部屋に連れてこないでほしい。
「すまんな、食べたらすぐ戻る。 だめか?」
私の王子に対する不愉快な表情に王様は気を使ってくる。
本当は追い出したいところだけど、せっかくみんなが楽しく食べてるのに空気を悪くしたくないので、仕方なく許可する。
昨日よりも少し離した場所にテーブルや食器などを3人分用意する。
軽くナイフの使い方などを説明した後、そそくさと自分の席に戻って、私も食べ始める。
「見たこともない料理ですね。 匂いも見た目も素晴らしいです」
「ユリアの作る料理は毎回うまいからな。 これも楽しみだ」
「これはピザパンに使っていたトマトソースのようですね。 一緒に入っている塊は何でしょうか、それにこちらの白い物も」
料理を見ながら3人は話し合っていた。
「ねえユリア。 この白いのは何? 美味しいけど、おかずとしてはちょっと量が多い気がするわね」
戻ってきた私にマリーが聞いてくる。
皆には背を向けて王様たちと話していたので、私が不機嫌になったのはみんな気づいていない。
なので普通に話しかけてくる。
当然私も普通に答える。
「これはお米を炊いて作ったご飯という食べ物だよ。 稲は知ってる?」
「オコメもイネも聞いたことないわね。 お父様は知ってる?」
マリーが少し離れた席にいる王様に聞く。
「食材としてはどちらも聞いたことがないな」
村でも食べると腹痛になるとか言ってたし、多分この国だと食べ物として認識されてないんだろう。
「稲はモウイ東3の馬を育ててる村の近くの沼で見つけた物だよ。 リーアは覚えてる?」
私がリーアに尋ねると、緊張した表情でうなずく。
マリーや王様との話に混ぜたのはちょっとまずかったかな?
「村では食料として使ってないみたいで、そのまま収穫してうちで育てたのがこれ。 ご飯は私の国の主食で、この国のパンみたいな存在かな。 食べ方としてはお肉などのおかずと一緒に食べるの」
私の説明を聞いて皆ハンバーグと一緒にお米を食べ始める。
「確かにお肉と一緒に食べると美味しいわね。 でもこの食べ方だとお米がかなり余りそうね」
「そういえば私のいた国以外だとこういう食べ方は苦手って聞いたことがあるね。 パンの方が良ければパンもあるから言ってね」
日本人以外は口中調味が苦手だと聞いたことがある。
あとはワカメなどの海藻が消化できる人が少ないとか。
今後お味噌汁作れたとしても気をつけないとかな。
「食べなれないだけで美味しいしこのままでいいわ。 逆にユリアのいた国の主食なら今後ユリアが新しく何かを作った場合、このご飯に合う物が出る可能性が高いって事よね? それなら今から慣れておいた方がいいと思うし」
今日もご飯に合う物を作ろうとしていたし、今後も自分で食べる時はご飯メインで作ろうと思ってる。
そのためには醤油や味噌が欲しいんだけどね。
大豆はあるから落ち着いたら作り方を調べて作りたいところ。
「ご飯に合う物を作りたいとは思ってるけど、そのための材料が用意できるかどうかかな。 できたら作ってあげるね」
「楽しみにしてるわ」
「おかわり!」
私とマリーが話をしているとデイジーがお代わりを要求してきたので、野菜を食べ終わった後にハンバーグを1つ追加してあげる。
結局デイジーに便乗して王様たちも含めて全員がハンバーグのお代わりをしていたので、予備が全部なくなってしまった。
ハンバーグのお代わりもあってご飯も奇麗に食べきれたようだ。
「このトマトソースに入ってる肉?は城でも作れるのか?」
「作り方は難しくないですけど牛乳や卵を使いますね。 簡易版としてお肉と玉ねぎと塩だけでも作ることができますけど。 まあ最悪お肉と塩だけでもできますよ。 あ、でも今日のお肉はオークロードのお肉を使ってるので、特別美味しいかもしれないです」
「うまいと思っていたがロードの肉だったのか。 普通の肉ではそこまでうまくならないか?」
「ハンバーグ自体がお肉を切り出した後の端肉や、硬いお肉を無駄にしないように食べやすくした物なので、使うお肉次第ですね。 そのまま焼くのとハンバーグにするのは食感が変わるので、食べる人の好みですし」
「なるほどな、試してみないとか。 肉を無駄にしなくていいというのは素晴らしいな。 教えてもらうことはできるか?」
「簡単ですしいいですよ」
ひき肉の作り方は口で説明してもわかりずらそうだったので。
アンドレさんを呼び、再度調理台を出して普通のオーク肉でひき肉を作る。
ついでにさっき食べたハンバーグと、お肉と玉ねぎと塩のハンバーグ、お肉と塩のみのハンバーグを作って一口サイズにして試食してもらった。
「これがオーク肉か。 肉と塩だけでも普通に食うよりうまい気がするな、玉ねぎを入れるだけでだいぶ味も食感も良くなる。 全部入れたのは確かにうまいが、材料が少ない方は肉を食ってるって感じでこれはこれでうまい」
「これがよく食べるオーク肉と同じなら私はハンバーグの方がいいわね。 どれも美味しいわ」
「わたしも!」
「美味しいだけでなく食べやすいというのもいいですね」
必死に味見しながらメモをするアンドレさんと、それぞれ感想を言う王族4人。
「普通に焼くよりちょっと手間がかかりますが、難しくはないですし、お肉が半端に余った時などにも使えますのでお勧めですよ」
「はい、さっそく試作をしてみようと思います」
試食をしてもらったところでお開きになり、3人は帰って行った。
その後、食器やテーブルなどを全部収納してベッドを出し、みんなでお風呂に入り寝る。
寝る前に部屋には洗浄魔法をかける。
トマトソースの匂いが残ってたのを消したかっただけだよ。
他意は無いよ、うん。
寝る場所は昨日と同じ。
私は寝付くまで明日の大会でどうやって戦うかを考えていた。




