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100 戦技大会

 案内された控室に入ると、中にはすでに15人の参加者がいた。

 私が中に入ると全員の視線がこっちに向く。

 私も中の人たちを見回す。


 全身鎧を着た騎士が2人と、他で見ないような長い剣を持った人、ローブを着た魔法使いのような老人と女性、他の人たちはギルドでよく見るような冒険者に見える。

 前に怪我を治してあげたパーティーの魔法使いはローブではなく、革の軽防具を付けていたのでローブを着ているいかにもな魔法使いは初めて見た。 


 しばらく眺められた後、ほとんどが視線を戻す。

 そのうちの2人、騎士の1人と長剣を持った人はずっとこちらを見ていた。

 私はどこで待とうかと思っていたら、騎士らしき人に話しかけられた。



「おはようございます、ユリアさん」



 声をかけられたのでそちらを向くと、その騎士は兜を取って顔を見せてくれる。

 昨日戦った隊長さんだった。



「あ、隊長さんも参加してたんですね」

「はい。 人数的に全員が参加することはできませんので、代表として2名が参加しています」



 そういってもう1人の騎士の方を見る。

 2人参加して2人とも残ってるって事は、やっぱり騎士というのは対人で強いんだね。


 私たちが話をしていると、係りの人が会場に移動するようにと伝えに来た。



「始まるようですね。 昨日は完敗しましたが、今日はもう少しは粘れるように頑張りますので、当たったらよろしくお願いします」



 そう言うと頭を下げ、兜をかぶると会場の方へ歩いて行った。

 他の人たちもついていくので私もそれについていく。

 

 会場はかなりの広さがあり、中で複数のスポーツを同時にできそうなくらいだ。

 その会場の中央には簡易的な台が置かれていて、その近くに数人と上に1人立っていた。

 あの上の人が説明してくれる人なのかな?


 そのまま台の前まで行くと、台の上の人が大声で説明を始める。

 広さ的に仕方ないんだろうけど、のどが痛くなりそうだ・・・・・・



「これより予選を勝ち抜いてきた15名と、国王陛下による推薦1名の計16名による勝ち抜き戦を始めます。 ルールは実戦形式で、どちらかが戦闘不能になるか降参するまで、となります。 そして、相手を殺してしまった場合は失格となりますので、ご注意ください。 初戦に参加する方はそのまま待機し、その他の方で奇数番号の方は先程居た控室へ。 偶数番号の方はあちら側の控室へ移動してください」



 私と対戦相手の冒険者風のおじさん以外は控室に戻って行った。

 そして、私と対戦相手は離れた場所の印の辺りまで移動する。


 相手までの距離は昨日隊長さんと戦った時よりも離れていた。

 説明をしていた人は、乗っていた台を数人と一緒に離れた場所に運んでいる。


 あの人会場内に残るの?

 離れているとはいえ、魔法も飛んで来るであろう会場に残るのは危険な気がするんだけど・・・・・・


 説明をしていた人が離れた場所で反転すると、私たちを見て準備完了と判断したのか片手をあげた。



「それでは第一試合、はじめ!」



 開始の合図と同時に相手は身体強化を発動し、剣を抜いて走ってくる。

 私は「魔石召喚」で小さい魔石7属性を1つずつ召喚する。

 そのまま召喚しても見た目ちょっと寂しいと思い、片方の掌を上に向け、私の正面に構えるようなポーズをとってみる。

 やばい、かっこいいポーズとかよくわからない・・・・・・これどう見えてるんだろう?


 ま、まあとりあえず、7つ全部出すのは試してなかったけど、うまく動いてくれてよかった。

 魔石は私の両手を広げても届かないギリギリの距離をゆっくりと回っている。

 私の「魔石召喚」に対して観客の反応を聞きたかったけど、遠すぎて客席の声は当然聞こえない。

 聞こえても雄たけびのような応援の声だけだ。

 うーん、これだといまいち受けてるのかがわからない。


 そんなことを考えている間も、相手は気にせず距離を詰めてきたので、こちらも動くことにする。

 右の掌を空に掲げるポーズをとり、水の魔石を手元に呼ぶ。

 すると、回っていた青い魔石が軌道をそれて右手の先に移動する。

 もちろんただの演出で、周りに何の属性を使うか見てわかるようにしてみただけだ。



「アクアプリズン」



 右手の先にある水の魔石が青く光ると、走ってきている相手を水の柱で囲み、頭上に水の蓋をする。

 サイズ的には両手を伸ばせば届く程の狭さだ。

 勢いよく走っていた相手は水の柱に激突して顔面を強打する。

 顔を抑えつつ立ち上がると、自分の周囲を見回す。

 閉じ込められたのを理解し、剣で水の柱を攻撃する。

 しかし狭くて思いっきり剣を振れないし、剣は水の柱に弾かれそのままのけぞる。


 攻撃が通らないと理解したのか、柱を触って水流で怪我をする。


 その後も剣を使ってどうにか壊そうと悪戦苦闘していた。



「フローディング」



 私はそのまま水の魔法を使い、相手の足元から徐々に水を増やしていき水の檻の中を浸水させていく。

 相手はその事に気が付いたのか、慌てて水の柱を必死に攻撃している。

 当然壊れるわけもなく、そのまま水かさは増して顎のあたりまで迫ったところで降参した。


 たとえ切れても水だから壊れたりしないけどね。



「そこまで! 勝者ユリア!」



 勝利宣言を受けて私は水魔法を解除し、水の魔石を元の軌道に戻した後、上げていた手を下す。

 その後「魔石召喚」を解除し、控室の方に向かう。


 当然全部演出だ。

 なるべくかっこよく映るようにしてみたがどうだったかな?

 私は足早に控室を抜けてそのままみんなのいる見学場所へ戻った。

 控室にさっきの隊長さんがいなかったので、特に誰かと話すこともなかったし。



「ただいま」

「おかえりー」



 座っていたデイジーが椅子から飛び降り、走って飛びついてきたのでそのまま抱っこする。

 他のみんなもお帰りとかすごかったとか言ってくれた。



「あ、王様。 魔法使うのにちょっと演出を追加してみましたけど、見栄えはどうでした?」



 私は席に戻る前に王様に聞いてみる。



「あれはただの演出なのか? 見たこともないし奇麗だったな」

「ただの演出ですね。 見てる人が楽しめるようにちょっと派手な感じにしてみました。 普通に魔法使うよりもかなり発動も遅いですし、何より面倒なので実戦で使う気にはなれないです」

「演出としての評価なら光の玉を纏っていたのは良かったが、攻撃の水魔法はちょっと地味だったか」

「あー、安全なように水魔法にしましたけど、確かに周りから見ると微妙ですかね」



 考えてみればある程度高い位置から見てるのに、蓋をしてしまったらよく見えなかったかもしれない。

 いや、斜めから見てるなら見えてたかな?

 それでもただ水が少しずつ増えるのを遠くから見ていても微妙か。

 そもそも水の牢屋が小さく遠くからだとみずらかったよね。


 火の魔法は派手だけど危なすぎるんだよね。

 風は吹き飛ばすか切るかだし・・・・・・次は土魔法で地面いじりまくってみる?


 私は次の事を考えながらコウスラを頭の上に乗せて席に着く。

 デイジーを会場の方に向け、膝の上に座らせて片手で支えると、もう片方の手は隣に座っているシアの方に伸ばす。

 シアは私の手を両手でつかんでしがみつき寝始めた。

 特に見る気はないみたいだ。



 2戦目は冒険者2人の戦闘だったが、大振りに攻撃するだけで何というかカッコイイ読みあいみたいなものが無い。 

 ただ思いっきり剣を相手に向けて振って、それを受けて反撃をする。

 それの繰り返しで結局片方が剣を落とすまでそれしかなかった。

 近くで見たら迫力があるのかもしれないけど、これだけ離れていると大振りな攻撃でも迫力はないね。



 3戦目に出てきたお爺さんは、訓練場で魔法を使っていた魔導士たちよりも大きな火の玉をいくつも作り飛ばしていた。

 少なくとも魔導士たちよりは魔力もあるみたいだし速度も速い。

 リーアとマリーがその火の玉が多数飛んでいくのを目を輝かせてみていた。 

 2人とは違ってサクラは真剣に魔法を見ている。

 こんな遠くから見て何か参考にできるだろうか?

 膝の上にいるデイジーは、支えている私の腕にしがみ付き、左右にゆらゆら揺れながら戦いを見ている。

 特に騒いだりはしていない。


 王様は魔法を見て「ほぅ」と感心してるようだった。

 やっぱりもうちょっと派手な魔法の方が見ていて楽しいかな?

 次はもっと広範囲の魔法を使おうか。


 そのお爺さんが勝利した後。

 目を引いた戦いは、6戦目に出てきた控室でずっと私を見ていた長剣使いの人。

 この人は素早い動きと長いリーチを生かして、相手の攻撃範囲外から攻撃したり、一気に距離を詰めて戦ってすぐ離れる。

 そんな戦い方をしていた。


 そして8戦目に出てきたのはあの隊長さんだ。

 私が戦ったときはすぐ終わっちゃったけど、あの隊長さんは強かったみたいで相手の攻撃を物ともせずに攻撃していく。

 防御能力が高いというのは本当のようだ。

 でもスキルで見たのは魔法防御じゃなかったっけ?

 あ、でも衝撃耐性は物理攻撃にも効果あったか。


 隊長さんが勝ったところで各1戦目が終わり、2戦目に入る。

 私はのんびり見ていたので、急いで控室に向かった。

 今回は機嫌が良かったのかすんなり離れてくれたデイジー。



 ちょっと遅れちゃったけど、特に怒られることもなく会場に通される。


 今回の対戦相手はさっき見ていた大振りに攻撃してくる相手だ。

 開始と同時に「魔石召喚」をし、土の魔石を右手に移動させる。

 今度は目立つように範囲の広い魔法を使う。



「アースクエイク」



 茶色の魔石が光ると戦闘エリアに地震が起き、自分がいる場所以外の会場の地面が割れて地面が凸凹になる。

 地面の揺れや隆起は戦闘エリアだけ切り離して発動してるので、見ている場所は特に何ともないはずだ。

 揺れが落ち着いたころ、足を取られて倒れていた相手が剣を杖にして立ち上がり、再びこちらに向かってくる。

 しかし結構高低差のある地面でうまく近づいてくることができない。

 私はその後も「アースクエイク」の魔法を数回発動し、地面を何度も隆起させて不安定さを増していく。


 何度か「アースクエイク」を使った所で、相手は足を地面に挟まれて動けなくなった。 

 相手が近くまで来ていたので、必死に抜け出そうとする相手に近づき、このまま続けて足を潰されるか降参するか問いかけてみる。


 少しの間もがいていたが、こちらを睨みつけたまま降参を選択した。

 私は挟まっていた相手の足を解放した後、会場の地面を平らにならして魔法を解除し、みんなの所に戻って来た。

 が・・・・・・


 2週目は8人で4戦、自分を除くと3戦しかないので、みんなでのんびり観戦もできず、すぐ控室に戻ることになってしまった。

 そういえば準決勝からは控室にいたほうがいいと言われてた気がする・・・・・・初戦の後以外ほとんど控室にいることになる。


 何というかこの大会は1回戦が短い。

 のんびり歩いてみんなの所に戻っていたら、1戦終わっていてもおかしくないし。



とうとう三桁まで来ました。 限界ギリギリまで予約投稿をしていますが、これからも微調整しつつ投稿していきたいと思います。

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