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95 騎士との試合

「それでは実戦形式の模擬戦を始めます。 開始!」



 開始の合図と同時に隊長さんが剣を抜き動く。



「身体強化!」



 身体強化と叫んだあと、更に何か纏っている。

 今まで見たことないけど見た感じ防御っぽい効果かな?

 使った魔法は身体強化だけだったけど、それと連動して発動する魔法とかあるのかな?



「身体強化」



 私も一応身体強化をかけて様子を見ようと思っていたら、隊長さんが一気に距離を詰めてくる。

 身体強化を使っているとはいえ、距離があるのでまだ接近されるまでは時間がある。


 試しに何か魔法を撃ってみようか。

 離れているうちにどれくらい防御効果があるのか確認しておきたいし。



「ショットガン」



 右手を相手に向け、多数の石を飛ばす土魔法を放つ。

 身体強化で相手の移動速度が速くなっているので、回避されにくいばらまき攻撃にしてみた。

 魔力を込めれば飛距離は延ばせるし。


 隊長さんは避けようともせず左腕で顔を庇う様にそのまま突っ込んで来る。

 纏っている結界のような物は、この程度は無力化できるって事か。


 すかさず足止めしようと、ディアやコウスラが使っていた「クラック」を使おうとしたところで最初の魔法が隊長さんに当たり、隊長さんが吹っ飛んだ。



「へ?」



 私は何が起きたのかわからず、間抜けな声が出てしまった。

 周りの騎士たちやサクラとリーアも、口を開いたまま吹っ飛んだ隊長さんの方を見ている。


 吹っ飛び、転げながら地面を滑っていた隊長さんが止まると、剣を杖のようにして立ち上がろうとする。

 しかし力が入らないのか足がガクガクと震えている。



「ぐっ、降参です」



 静まり返った訓練場にかすかに聞こえる降参の声。

 結局立ち上がれずその場に倒れる。

 まずいかと思って隊長さんの方へ走る。

 周りの騎士たちもざわついている。



「大丈夫ですか?」



 倒れている隊長さんに声をかける。



「なんとか・・・・・・」



 隊長さんは苦しそうに答える。

 鎧を着ているから怪我の状態がわからないけど、鎧があちこち大きく凹んでいる。

 思ったより威力が強かった?

 これは回復しないとかな。



「リカバー」



 隊長さんの全身に範囲を広げて回復魔法を使う。

 鎧の中はわからないけど顔の傷は奇麗に治り、表情も良くなった。



「ふぅ・・・・・・ありがとうございます。 回復の魔法も使えるのですね」

「他に痛いところはないですか?」

「大丈夫です、もう痛みはありません。 しかし、さっきの魔法は何でしょうか? 私は防御力、特に魔法への防御には自信があったのですが・・・・・・」



 さっき纏っていたのは魔法への防御結界みたいなものだったのかな?



「何、と言われても、普通の土魔法で石を飛ばしただけですけど」



 魔力を込めたけど、飛距離を伸ばしただけで特別威力を上げたわけでもないし。



「普通の・・・・・・正直今回の勝利条件で私は勝ちを確信していたんです。 私は防御系のスキルを2つ持っていますので、実戦形式での勝負には自信があったんですよ。 飛んできた土魔法も強くは見えなかったので片手で防げると思ってたのですが・・・・・・思いっきり吹き飛ばされてしまいましたね」



 私と同じように防いで反撃スタイルだから、訓練用のルールだと判定負けしちゃうタイプだったのか。

 というか隊長さんスキル2つも持ってたのか、持ってる人は初めて会ったかも。

 知らないだけで他にも持ってる人いたかもしれないけど。


 何を持ってるのか気になったので観察眼で隊長さんを見てみる。



〇スキル

「魔法耐性」「衝撃耐性」



・魔法耐性

攻撃魔法で受けるダメージを軽減する。 

※強化魔法で効果が増加する


・衝撃耐性

物理、魔法攻撃で受けた衝撃で吹き飛ばされにくくなる。

※強化魔法で効果が増加する



 身体強化に加えて耐性2種類で魔法には強いのに、私の魔法で大ダメージ&吹き飛ばしくらってしまったようだ。

 強化魔法の後何か纏っていたのは、スキルの効果が強化されたからなのかな?


 怪我の治った隊長さんは立ち上がると、私の方に頭を下げる。



「ありがとうございました。 噂通りとても強い冒険者のようですね」

「噂、ですか?」



 噂になるほどこの街で戦ってないと思うけど。



「あくまで噂ですので詳細まではわかりませんが、山のように巨大な魔物を単騎討伐したとか。 この前の西の森の魔物も全て単騎で、しかも神罰の如き大規模魔法で殲滅したと聞きました」



 そういえば王都でフェンリルの解体依頼をしたし、西の森の魔物討伐もしたね。

 西の森の魔物討伐したのはコウスラだけど。



「大きな魔物は倒しましたけど、山のようには大袈裟ですよ。 西の魔物は私も向かいましたけど、直接討伐したのは私じゃないですし」

「そうでしたか。 しかし先程の魔法を受けて噂は本当だったんだなと思ってしまいました」



 隊長さんはそう言って笑っていた。


 元気になった隊長さんと一緒にサクラたちの所へ戻る。


 あっさり隊長さんを倒した私にハイテンションで話しかけてくるリーアと、無事に終わって安堵するサクラ。


 私はシアを抱っこし、隊長さんに挨拶した後、魔法訓練をしているらしい外へと向かう。

 隊長さんも、外の訓練を見学することを訓練してる騎士たちに説明するために付いて来る。

 ちなみに魔法メインで戦う騎士は魔導士と呼ばれているみたいだ。


 外に出ると、そこは弓道場のようになっていた。

 魔法を撃つ場所には屋根や床があり、的がある場所は完全に屋外で屋根も床もない。

 的は50mほどの場所と、そこから1段高くなった更に50mほど先にも的があり、二段式の的になっている。

 見た感じ材質は石のようなので強化された的なのだろう。

 

 ここも結構広く、20人くらいが訓練をしているが半分以上開いている。



「カシナート隊長、今日は魔法の訓練監督ですか?」



 私たちに気が付いた魔導士の1人が話しかけてくる。

 その声で他の魔導士たちもこちらに気付く。



「こちらの方々が魔法を見学したいそうだ。 俺は案内とお前たちへの説明をしに来ただけで、すぐ戻る。 だから気にせずいつも通り訓練をしてくれ」



 隊長さんの説明を聞いた後、訓練をしてた魔導士たちは返事をすると訓練を再開した。



「では私は戻りますね」

「ありがとうございます。 帰る時は声を掛けますね」



 隊長さんは扉を開いて室内訓練場へ戻った。



「2人ともわかってると思うけど、邪魔にならないように見学してね。 あと危ないから、近づいたり的のある外には行かないように」

「「はい!」」



 笑顔で答えて見やすい場所に各々移動していく。

 私は端から順に魔法を見ていくことにする。


 最初の人は土の魔法を使っている。

 魔力を集めて一抱えサイズの石を作り出すと、的へ向かって飛ばす。


 はっきり言って遅い。

 あのサイズの石を作るのに時間かかりすぎだし、飛ばす魔力が弱いのかすごく遅い。

 近い方の的まで届いたけど、よほど追尾でもさせないとあんなの簡単に避けられる。

 でもリーアは大きな石に大興奮しているようだ。

 サクラも真剣に見ている。


 私は他の人も見てみたけど皆魔法が遅い。

 一抱え程のサイズの魔法を撃つと、もうただのパフォーマンスのような感じで、実戦では使えない代物になっている。

 小さい物を速く飛ばそうとする人もいるけど、それでも身体強化無しの目で追えてしまう程度だ。

 不意打ちなら当たるだろうけど、正面対決で敵に当たるんだろうか?


 大きい魔法や小さくて速い?魔法でリーアは騒いでいて、サクラは静かにいろんな魔法を見ていく。

 私は早々に飽きてそんな2人を眺めている。


 私がつまらなそうに眺めていると、気が付いたサクラが近づいてくる。



「どうしたの?」

「うーん、思ってたより微妙だったというか、国で強いであろう魔導士でこの程度なのかなって」

「そう? 確かにさっきユリアちゃんが使った土魔法は多かったし速かったね。 でも魔導士様の小さな魔法は速いし、大きな魔法は迫力があると思うけど」



 私たちは魔導士たちに聞こえないように小声で話す。


 サクラの反応的にはこれでもいい方?

 それともサクラも他を知らないのかな?



「あれくらいできれば魔法使いとしては強い方なの?」

「たぶんそうだと思う。 魔法は基本的に最初に狙った相手に向かって追尾されるから、あれくらいの速さで飛んでいけば当たるし、複数の魔法使いで大きな魔法を使えば遅くても広範囲に攻撃できる。 だから速い魔法と大きな魔法ができる魔法使いは強い魔法使いだと思う」



 魔法がある程度追尾するのは、私の魔法が特別なわけじゃなくて魔法の特性だったんだ。

 それよりも魔法使いってこの程度で強いって言われるのか。

 明日の大会で魔法撃ちまくるのはまずいかも?

 どうやって戦おうかな・・・・・・



 2人は魔法をもっと見ていたようだったので、そのまま見学し、お昼前に隊長さんに挨拶をして部屋に戻る。


 部屋で軽く昼食後、サクラのお勉強があるので、私たちは次に行く場所を決めないといけない。

 しかしリーアははしゃぎ疲れたのか寝てしまったので、私の家の空いてる部屋に寝かせてきた。


 あとは私とシアだけど、商店通りは微妙みたいだし、他に誰もいないのでこのまま家にいることにした。



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