94 訓練場へ
扉が見える所ですぐにマリーと分かれたので、訓練場までは少し距離がある。
近づいていくと、中から金属のぶつかる音や大きな声が聞こえてきた。
そのまま扉を軽くノックしてみたけど反応が無い。
これだけ音がしてるし気付かないのかな?
そう思い、ゆっくりと扉を開けて中に入って行く。
中は床も壁も天井も石造りのかなり広い部屋だった。
その半分ほどのスペースで騎士たちが1対1の模擬戦をしていた。
魔法の練習をしてる人を探していると、声を掛けられる。
「ここは騎士の訓練場です。 女の子が見て楽しい場所ではありませんよ」
声をかけられた方を見ると、1人の騎士がいた。
「あ、あなたはユリアさんですね。 お久しぶりです第二騎士隊のカシナートです」
男性は名乗ると頭を下げる。
相手は私の事を知ってるみたいだ。
お城には何回か来てるしどこかで会ったのかな?
私が首を傾げていると再度話しかけてくる。
「チーズの件でモウイの街までユリアさんをお迎えにあがった者です。 お城でアツアツのパンを食べて口を火傷したりもしましたが覚えていませんか?」
首を傾げている私に追加の情報をくれる。
「ああ、あの時の隊長さん。 みんな同じような鎧を着ているので気づきませんでした」
所属と名前は記憶にないけど、その出来事だけは覚えている。
私の回答に隊長さんは笑いながら話を進める。
「それで、ユリアさんはここで何を?」
私、というよりサクラとリーアを見て質問してくる。
「私は他の人たちが戦ってるのを見てみたくて来ました。 この子たちは魔法を見てみたいそうです。 それでマリー、アマリリス王女にここへ案内してもらったんです」
私たちがここまで来た経緯を簡単に説明する。
「なるほど。 剣などを使った訓練はここですが、魔法を使った訓練はあちらの扉を出た先にある屋外訓練場ですね」
私の話を聞いて場所を教えてくれる。
魔法は外でやってるみたいだ。
「ありがとうございます。 それじゃあ外に行ってみる?」
隊長さんが指さした扉を見た後、サクラとリーアに聞いてみる。
「はい、楽しみです」
私の問いにリーアが賛成する。
サクラもそれでいいみたいで頷いている。
私が2人と一緒に外へ行こうとしたら隊長さんに呼び止められる。
「ユリアさん。 戦っているところを見たいとのことですが、もしよろしければお手合わせ願えませんか? 実力のある冒険者という事ですし、隊長として今ここで訓練している騎士の中では強いと自負しています。 いかがでしょう?」
騎士隊の隊長って事はこの国でもかなり強いって事かな?
でも第二騎士隊とか言ってたっけ。
二番目に強いって事なのかな?
でもこの隊長さんの強さが判れば他の人の強さもなんとなくわかるかも。
「うーん・・・・・・ちなみに騎士隊の隊長というのは、冒険者で言うとどれくらいのランクなんでしょうか?」
過去に戦った(というかギルドでからまれて一方的に攻撃した)ランクBの冒険者はびっくりするくらい弱かった。
フォレストタイガーに襲撃されたのに逃げ切った、ランクCだっけ?の人たちのが強かったんじゃないかと思う。
あのランクBの人が特別弱かった可能性もあるけど。
「その判断は少し難しいですね。 冒険者は魔物専門、騎士や兵士は対人専門ですので我々が冒険者と魔物狩りをしたら冒険者に劣りますし、逆に冒険者との戦闘であれば我々騎士の方が有利といえるでしょう。 装備に関しても冒険者は動き回るように軽装な方が多いですが、騎士は追いかけるより守ることに重きを置いていますので重装備です」
という事は隊長さんに勝てば対人で強いという事になる。
つまりフェンリルを倒して冒険者として強いことはわかっているので、隊長さんに勝てば対魔物・対人共に強いという事に。
神様からもらった「世界最強」というのが、スキルの効果で攻撃と防御が優れているだけとなると、対人になれている熟練者には意味がない可能性もある。
ルール有りだと特にね。
「もし戦うとして、私は魔法使いなんですけど、近接での戦闘になるんですか?」
騎士という事は剣での戦闘になると思う。
なので近接なら土魔法で武器を作って戦うことになる。
土魔法で10mくらいの棒を作って戦ったら近接になるのかな?
それとも遠距離?
「いえ、騎士も牽制程度の魔法は使いますので、少し離れた場所から開始し、魔法を使うなり近づいて攻撃するなりは自由です」
「なるほど」
でもそれだと相手が瞬間移動でもしない限り魔法撃って終わる気がするんだけど?
あと気になるのは勝敗の決め方だ。
当たりそうになったら寸止めして終了だと私の防御力は全く意味のない物になる。
「勝敗の決め方を聞いてもいいですか?」
「まずは致命傷になりそうな攻撃が決まりそうになったら寸止めして1本、先に2本とった方が勝ちという訓練用のもの。 相手を降参、または気絶させたら勝ちという実戦形式のものがりますね。 ユリアさんのお好きな方で構いません」
それなら有利な後者にしようかな。
相手がどれだけ強いのかわからないし、よくわからないうちに終わるのも嫌だし。
「選ばせてもらえるのなら後者の方がいいですね」
「ユリアさんがよろしいのであれば、こちらはそれで構いません。 では、お手合わせして頂ける、という事でよろしいですか?」
私としては戦ってみたい。
しかし2人を放置するわけにもいかないので、2人にも聞いてみる。
「私は戦ってみようと思うんだけど、サクラとリーアはどうする? 待たせるのも悪いから、私は一緒に行けないけど魔法の訓練見てきてもいいよ?」
「いえ、ユリアさんが戦うのであれば是非見てみたいです!」
リーアは目を輝かせて答える。
しかしサクラの表情はあまりよくない。
サクラは反対なのかな?
「サクラが嫌なら私も一緒に魔法の訓練を見に行くけど」
「反対というか、騎士隊の隊長様と戦ってユリアちゃんが怪我をしたら嫌だなって・・・・・・実戦形式でやるみたいだし」
サクラは本当にやさしい子だ。
でも今後のためにもこの世界の人がどれくらい強いのかを知っておきたい。
「心配してくれてありがとう。 でも私はこの国の人がどれくらい強いのかを知りたいの。 だから見守ってくれると嬉しいかな」
「・・・・・・わかった。 頑張ってね」
サクラは胸の前に両手でこぶしを握り応援してくれる。
よかった。
「という事なので受けますよ」
私は隊長さんに返事をする。
「ありがとうございます。 準備ができ次第始めましょう」
そう言うと、近くにいた騎士たちを移動させて結構広い範囲をあける。
移動した騎士たちは訓練を再開せずそのまま観戦するようだ。
「ではユリアさんは準備ができ次第そこの線を引いてある場所へ。 私は反対側の線まで行きますので」
そう私に説明した後、騎士の1人に審判を任せると、離れた場所まで小走りで移動する。
特に準備もないので、シアをサクラやリーアの近くに降ろして線の所に立つ。
しばらく待っていると、向こうも位置に着いたのかこちらを向いて片手をあげる。
え、かなり離れてるんだけど?
そんなことを思っていたら、審判役の騎士さんが片手をあげて私と隊長さんを交互に見ている。




