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93 朝からドタバタ

 今日は騎士たちの訓練場に行くことになっている。


 少しずつはっきりしていく意識の中、今日の事を考えていた。

 が、体が動かない。


 金縛りにかかったのかと思ったが足は動く。

 しかし顎のあたりを押さえられているような感覚もある。


 そして意識がある程度はっきりした所で瞼を開こうとした時、首元に何かがたれて濡れていることがわかった。

 瞼を開いてみると、視界に金色の物が見える。


 よく見てみるとデイジーの頭で、私にのしかかるように寝ていた。

 どうやら首が濡れているのはデイジーのよだれのようだ。


 しかしデイジーののしかかっている方と反対側の腕も動かない、というか掴まれている。

 掴んでいる手の大きさ的に、シアが私の手を掴んだ状態で私のお腹を枕にしているようだった。


 動けないからシアに声をかけて放してもらおうと思っていたら、声をかけられた。



「おはようユリアちゃん」



 サクラが起きていたみたいだ。



「おはようサクラ」

「すごいことになってるね」



 サクラが私の状態を見てクスクスと笑っている。


 とりあえずシアには手を放してもらう。

 精霊は完全に寝ているわけではないので、声をかければちゃんと反応する。


 まだシアの枕にはなっているけど、解放された方の手でデイジーの背中を軽くポンポンと叩きながら声をかける。



「デイジー朝だよ、起きて」



 しかし、のしかかっていたデイジーはしがみついてくる。

 その時、デイジーの口が私の頬に当たり、首の次は頬がだんだんよだれまみれになっていく。



「デイジー」



 再度呼びかけるが反応はない。


 何度か呼びかけているとマリーも目を覚ます。



「なんかすごいことになってるわね」

「デイジーっていつもこうなの?」

「どうかしらね。 ほとんど一緒に寝たことないからわからないわ。 でも一緒に寝た時、少なくとも私はされたことないわね」



 まだ寝ぼけているマリーが答える。

 そういえばディアは私の腕を体に巻き付けるようにして寝てるし、シアは私の手を掴んだままお腹を枕にして寝る。

 それにリーアといいデイジーといい私は抱き枕にしやすいんだろうか?

 今日のリーアはおとなしいけど、私の隣じゃないからかな?

 あれ、そういえばマリーも今日は普通だね。


 マリーと話していたらリーアも起きてきたが、デイジーは未だに起きない。



「起きないね。 どうしようか」

「仕方ないわね。 ほら、デイジー起きなさい!」



 マリーが私にのしかかっているデイジーを引きはがす。

 しかし、その瞬間デイジーが大声で泣きだした。


 私は咄嗟に身体を起こしてデイジーを抱き締める。

 するとデイジーは私の服をギュッと掴み、次第に泣き止む。

 勢いよく起き上がったのでシアが転がってしまったが、もぞもぞと近づき今度は膝を枕にする。


 突然の事にリーアとサクラは目を見開いて固まり、マリーは泣き出した妹に困惑していた。

 



「デイジー起きないね」



 落ち着いたデイジーの背中をしばらく撫でていた私はデイジーを見ながら呟く。



「デイジーは放っておいたらお昼近くまで寝てるから、起こさないとこのまましばらく起きないと思うわ。 いつもなら起こせば起きるんだけど、今日は起きないわね」



 どうやって起こそうかと思っていた私はいい案を思いついた。

 私は収納からクッキーを取り出す。

 食べ物で釣って起こしてみよう。



「ほらデイジー、クッキーだよ」



 デイジーの口元に近づけると、食べようと口を開けて頭がクッキーの方に近づく。

 目は閉じたままでなので匂いだけで場所を判断しているみたいだ。

 嗅覚も結構鋭い。

 私から離れるようにクッキーをデイジーから少しずつ離していく。

 デイジーの腕が私から離れそうになった所で、デイジーはクッキーを追うのをやめて元の位置に戻る。



「クッキーでも起きないわね。 どれだけユリアが好きなのよ・・・・・・」



 私の行動を見ていたマリーがなんとも言えない顔をしている。

 しかしこのままでは朝食の準備ができない。

 ジャスミンの所にもいかないといけないのに。



「このままだと朝食の準備ができないけどどうしようか、お城の朝食にする?」



 マリーの方に聞いてみる。

 私としてはお城でお世話になってもいいし、収納にあるリンゴだけでも別い構わない。

 カットしたままの物があるのですぐに食べられるし。



「せっかくユリアがいるのにユリアの料理を食べないわけにはいかないわ! ほらデイジー、私が抱っこしてあげるからこっちに来なさい」



 必死にデイジーの方に両手を伸ばしているが、それを拒否するように私の肩に顔を埋めてしがみつくデイジー。

 そして拒否されてショックを受けるマリー。

 なんとも言えない空気が漂う。



「仕方ない。 簡単に作れる物を何か用意しようか」



 デイジーを抱っこしたままベッドから出ると、他のみんなもベッドから出たのでベッド2つは収納する。

 洗浄の魔法を使って、自分とデイジーを奇麗にしてからテーブルや椅子を出し、デイジー以外に座ってもらう。

 席に着いた皆に洗浄魔法を使ってから、いつも使ってる調理台と一緒に椅子も出し、デイジーを膝に乗せたままサンドイッチを作っていく。



「はい、朝食はサンドイッチとリンゴだよ」



 大皿に各種サンドイッチを並べて、もう1つのお皿にカットしてあったリンゴを並べる。

 サンドイッチとリンゴのお皿をみんなのいるテーブルに置き、全員分の取り皿とフォークと水を用意をしていく。


 準備が終わった後もデイジーは起きようとせず、しがみついたまま寝ている。



「デイジー、朝食ができたよ」



 呼びかけるがデイジーはイヤイヤと首を振る。

 それを見ていたマリーが怒りだす。



「いつまでユリアに迷惑かけてるの! 早く離れなさい!」



 怒鳴られて私の服をさらに強く掴み、縮こまるデイジー。

 私はデイジーの背中を撫でながら優しく話しかける。



「デイジー。 私はデイジーに私の作った料理を食べてほしいな。 デイジーは私の料理を食べるの嫌?」



 私の問いに首を振るデイジー。



「じゃあみんなと一緒に食べてくれる?」



 少しの沈黙後に頷き、手を離してくれる。

 私はデイジーを隣の席に座らせ、シアを膝の上に乗せて食事を開始する。


 怒っていたマリーも怒られて縮こまっていたデイジーも、サンドイッチを食べて笑顔になり、無事に朝食が終わった。


 朝食後、私は一度ジャスミンの所へ、サクラは鳥小屋の方へ行く。

 いつも通り元気になったデイジーは、お勉強があると部屋に戻って行った。

 マリーもお勉強はあるけど、その前に訓練場まで案内してくれると言うので、戻ってきたらお言葉に甘えることにした。

 自分たちで行ったら確実に迷うしね。


 戻って来た私とサクラは、リーアと一緒にマリーに案内されながら廊下を歩いていく。

 私の部屋から結構な距離を歩いた所で、マリーが1つの大きな扉を指さす。



「あの扉の先が訓練場よ。 じゃあ私は戻るわね」



 それだけ言うとマリーはそのまま戻って行った。


 このまま私たちだけで行ってもいいのかな?と思いつつも私は去っていくマリーにお礼を言って、一緒に来たサクラとリーアを見る。



「それじゃあ行こうか」



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