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92 皆でお泊り

「夕食も済んだしお風呂に行くわよ」

「私たちも?」 

「そういえばお風呂に入らない人が多いんだっけ」



 この世界ではお風呂に入る人が少ない。

 冒険者は野営することがあるのと、宿屋も安く済ませるためにお風呂の無い安い宿屋に泊まる人が多いらしい。

 それに平民はお風呂関係にお金を使うくらいなら食材を買うので、家にない人がほとんどだ。

 なので貴族や大商人、金銭的に余裕のある冒険者などしかお風呂に入らないらしい。



「私は毎日入ってるけど、この国の人はあまりお風呂に入らないから一度家に帰って入ろうかと思ってたんだよね」

「わたしはユリアちゃんが作ってくれたお風呂が孤児院にあるので、2~3日に1回は入るようになりましたね」

「うちもお風呂はありますので、外で野営するとき以外はよほど疲れてなければ毎日入っています」



 サクラもリーアもお風呂には入ってるようだ。

 孤児院に設置した物がちゃんと使われているようでよかった。

 魔石が設置してあるといっても、供給用の魔石は消耗品だから毎日入るが難しいのは仕方ない。

 余ってるのをあげてるけど、湯船の大きさを考えると魔石の消費量も多いだろうし。


「なら問題ないわね。 せっかくのお泊り会なんだしみんなで入るわよ」



 そういってマリーは部屋を出て行ってしまった。



「シアはどうする?」

「ん-・・・・・・行く」



 半分寝てるシアに聞いてみると、シアも行くそうだ。


 しばらく待っていると、マリーが戻ってきた。



「全員分のお風呂と着替えの準備を頼んできたわ。 行くわよ」



 マリーに連れられて廊下を歩いていくと、意外と近くにお風呂はあった。



「結構近くにあるんだね」

「ここは私とデイジー用のお風呂よ。 お兄様とお父様のお風呂は離れた場所にあるわ。 そもそもこのあたり一帯は私とデイジーの部屋だから基本的にお父様やお兄様含めて男の人はほとんど来ないわね。 何かあればメイドが来るし」



 いや、さっき王様どころかアンドレさんも来てたけど?

 でもマリーも特に反応してなかったし、あまり来ないだけで男子禁制と言うわけでは無いのかな?



 扉を抜けると脱衣所になっていた。

 確かに男女で分かれてはいない。


 みんなが服を脱いでる横でスキルを使って服を脱ぐ。



「え、今の何!?」



 それを見ていたマリーが驚く。

 さすがにスキルの事は言えないので、収納を応用してしまってると説明した。

 みんなが服を脱いだのでお風呂場に行くと、無駄に広い。

 この広さで2人用なの?

 さすが王族というか・・・・・・



 前に孤児院でみんなと一緒にお風呂入った時に知ったけど、この世界ではお風呂の中で体を洗うのが主流らしい。 石鹸もないから湯船の中でタオルだけで体を洗い、あがる時にシャワーで流すようだ。

 孤児院の子たちはサクラが教えたと言っていた。

 元日本人としてはそのまま入るのに抵抗があるけど、まあそのうち慣れるでしょ。

 それに私は洗浄魔法もあるし。



「そういえばマリーたちは自分で体を洗ってるの? メイドさんとかに洗ってもらってるイメージだけど」

「デイジーは洗ってもらってるし、私も小さい頃は洗ってもらってたけど、私は1人で静かに入る方が好きなのよ。 でもこうやって友人と入るのは楽しいわね」



 そう言いながら楽しそうにデイジーの身体を洗ってあげている。

 私も自分の体とシアを洗う。

 何となく洗浄魔法で綺麗に、という空気ではないので、私も今日はマネしている。

 それを見ていたサクラとリーアも洗いっこし始めた。


 体を洗い終わりみんなでゆっくりお風呂に浸かる。



「このお風呂って2人で使うには広すぎない?」



 最初に思った事を聞いてみる。



「このお風呂は仕切れるようになってるのよ。 今日みたいに友人を呼んで入れるようにこの大きさで作ったみたいだけど、今まで一度も使ってなかったのよね。 1人やデイジーと2人で使う時はそこの窪みの辺りで仕切って使ってるわ」



 そういってマリーが指さす方を見てみると、浴槽に数か所窪みがある。

 普段は四分割してるってことかな。



「でも今日は人数が多いから一番大きくしてもらったの」



 楽しそうに話すマリー。

 でもここってお姫様用のお風呂なんだよね?

 呼べる相手ってすごく少ない気がするけどどうなんだろう?


 仰向けで沈んでるシアを眺めつつ、たまに話しながらゆっくり浸かっていた。

 水の精霊だからか、お風呂の時は沈んでるのが好きみたい。

 最初は皆が慌ててたけど、水の精霊だからと説明して納得してもらった。

 説明してる私もよくわかってないけど。



 しばらくのんびりしていたらデイジーが限界のようなので、みんなも上がることにした。


 体を拭いてスキルで服を着ようと思ったら、マリーが服を用意してくれていたので、寝間着に着替える。

 そういえば着替えがどうとか言ってたね。

 寝間着を着た後、土魔法で作ったブラシを出し、風魔法で空気を圧縮した物を出して髪を乾かしていく。



「ユリアさんは何をしているんですか?」



 リーアが髪の水分をタオルで吸い取りながら私の方に来る。



「魔法で暖かい風を出して乾かしてるんだよ」



 自分の髪に当てていた温風をリーアの髪に当てる。


 魔法で出した水は放置して魔力が切れれば自然に消滅する。

 濡れた物は乾ききらないけど、ある程度の水気は消えてくれるからそのまま服を着ても問題はない。

 微妙に濡れてる状態で服を着るのが嫌でなければ、だけど。



「これってもしかして火魔法と風魔法ですか?」

「うん? これはただの風魔法だね」

「風魔法で暖かい風を出すなんてユリアさんは器用ですね」



 私はそのままリーアの髪をくしを使い、ほぐしながら乾かしてあげる。

 ある程度ほぐれたらブラシに変える。

 私はそこまで絡まないけど、髪が長いと結構絡むんだよね。



「すごいです。 こんなに早く髪を乾かしたのは初めてです。 しかも暖かくてフワフワしてて眠くなってきます」



 リーアは自分の髪を頬に当ててニコニコしている。



「私たちもお願いしていい?」



 リーアを見ていたマリーもお願いして来たので、デイジーから順に乾かしてあげる。



「確かにこの暖かい髪は眠くなるわね」



 リーアと同じように頬に当ててたマリーが同じことを言う。 

 全員の髪を乾かし終わった後にリンゴ果汁を出してあげる。

 水分補給しないとね。


 お風呂も終わり部屋に戻ったら、収納してあったベッドを2つ出す。



「すごい・・・・・・」

「すごいわね」

「すごーい」



 この状況を見ていない3人が驚いている。

 部屋のほとんどがベッドで埋まっているからね。

 というかシア含めた6人なら2つあれば十分だったかも?

 まあせっかく3つ借りてきたので全部設置する。

 使わない時はさっきみたいに収納すればいいし、こんな機会なかなかないもんね。


 ベッドは私とシアが真ん中で、私の隣にデイジーで、その隣がマリー。

 シアの向こう側はリーアとサクラになった。

 私がシアを隣にすると言ったのと、デイジーが私の隣がいいと言ったので、それ以降は自然とこの配置になった。



「私は1回家に帰るね。 ジャスミンに会わないといけないから」

「時間かかるの?」

「すぐに戻ってくるよ」



 シアに一言言ったあと、皆にも一度帰る事を伝え、私はゲートで家に帰り、ジャスミンの部屋に行きノックをする。



「だれ?」

「私だよ。 魔力をあげるためにちょっとだけ戻ってきたの」

「別に1日2日もらわなくても大丈夫なのに」

「それじゃあご飯抜きと同じでしょ? さすがにそんなことできないよ」



 私はジャスミンの手を握る。

 10秒ほどでジャスミンが手を離す。

 長く魔力を吸ってるとまた魔力酔いになってしまうらしい。



「そうだ、魔石をいくつか渡しておくね。 今後私がどうしても帰ってこれない時のための非常食。 あくまでも非常食だから魔石を渡したからといって蔑ろにするつもりはないからね。 それじゃあおやすみ」



 私は魔石を渡し、手を振って部屋を出る。

 そのままゲートを通ってお城の部屋に戻る。



「ほんとにすぐ帰って来たわね」

「お待たせ。 それじゃあ寝ようか」

 


 部屋を暗くしてベッドに入るとデイジーはすぐに寝てしまった。

 そして私の腕をがっしり掴んでいる。

 反対側はシアがしがみついているので身動きが取れないんだけど・・・・・・



「ユリアは明日どうするの?」



 マリーが明日の予定を聞いてくる。



「うーん。 王都のお店を回ろうと思ってたんだけど、今日見た感じ、どこでも売ってる物ばかりで珍しい物はなかったからね・・・・・・特に行く場所がなければ明日は今日の続きかなと思ってるけど。 あの花の首飾りみたいに掘り出し物があるかもしれないし」

「料理を出しているお店は多い人数に対応するためで、王都の人が王都の食材で出店してるから珍しい物はないわ。 同じく食材屋も王都に売りに来ているような食材屋は、普段から王都で売ってるわ。 数が多いだけね。 だから見るなら装飾品や服を売ってるお店がいいわね。 どちらも高級な物はないから、安くてもいいなら見て回るといいかもって感じかしらね」



 マリーは意外とお店の事に詳しいようだ。

 マリーの言う「安い」の基準が一般の人と同じかはわからないけど。

 いや、それを言ったら私の感覚も結構ずれてるか。

 


「それじゃあ王都で何かお土産とか買って帰れないかな? リーアもサクラも買って行きたいだろうし」

「はっきり言ってないわね。 王都は他の街や村の物が集まっているから色々なものがあるけど、王都の特産というのはないわ。 まあ『その街にない別の街の特産品』ならあるでしょうけど、わざわざ王都で買う?って感じね。 その別の街に行かないなら買うのもありだとは思うけど『王都のお土産』としてはどうかと思うわね。 貴重な金属も集まるから武器とかはいい物があるかもしれないけど、お土産になるかは相手次第ね」



 もう行く場所がなくなってしまった。 



「行く場所が無いならお城でも散策してみたら? ユリアはともかく、サクラもリーアもお城を見て回る機会なんてなかなかないでしょ」



 いや、私も1人でフラフラしてたら怒られるんじゃないかな?

 前に王子に敵視されてたし。



「といっても、私たちだけで見て回っても迷子になるだけな気がするんだよね。 それにお城って見学できる場所あるの? 廊下を歩いて回るだけならこの部屋の近くでもできるし」

「ユリアが自由に入れて面白そうなのは・・・・・・訓練場とか? 騎士の訓練や戦闘が見れるし、何なら参加してもいいわよ」

「サクラとリーアは騎士の訓練見てみたい?」



 私としては他の人が戦ってる所を見られるなら大会でなくてもいいので、行ってみてもいいと思っている。

 でもサクラたちが見て楽しくないと意味が無い。



「わたしは見てみたいです。 特に魔法の練習や戦闘があれば嬉しいです」



 見たいと言い出したのは意外にもリーアだった。

 戦技大会も魔法を見たいと言ってたし、魔法使いになりたいのかな?



「わたしも魔法は見てみたいかな。 何か参考になる事があるかもしれないし」



 サクラの場合は適性があっても魔法がまともに使えない。

 他人の魔法を見るのもいい刺激になるかも?



「じゃあ明日は訓練場に行ってみようか」



 明日の予定が決まったので、そのまま寝ることになった。



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