90 王都のお店巡り
孤児院から戻って来たサクラに行きたい場所を聞いてみたけど、王都に何があるかを覚えてないそうなので、適当に商店通りを歩くことになった。
サクラはお昼の後にお勉強があるので、1回お城に戻らないといけない。
なので今日はお城の近くを回るつもりだ。
私たちは3人で門まで行き、そのままお城を出る。
少し歩いて商店通りに行くと、前に来た時と雰囲気が違う。
「ずいぶんお店が多くない?」
前に来た時は広い道を人が行き交い、道の両端にお店の建物が並んでいた。
でも今は広い通りの中央には露天商や簡易屋台のような場所で商品を販売してる人がいる。
「普段は商店通りの一部しか解放していませんが、王都で催し物があるとき限定で中央を他の街や村から来た人に開放して、お店を増やしているんです。 もちろん商業ギルドで許可は貰わないといけません」
という事は今まで売ってなかった物が売っている可能性があるって事だ。
一気に楽しみになって来た。
「せっかくだし中央のお店優先で見ていこうか。 今限定みたいだし」
「そうですね。 毎回違うお店が来るので何かあるかもしれません」
「楽しそうだし、私もユリアちゃんの意見に賛成」
満場一致したところで中央のお店を端から見ていく。
人通りが多いためか、反対側のお店に行けるようにお店は数件毎に距離を置いて設置してあるね。
「ここは布製品が置いてありますね。 ・・・・・・物は普通です」
最初のお店は特に面白みのない布製品のお店だった。
生地が薄くて肌触りもいまいちな安い物ばかりだったので、少し見てすぐ次のお店に移動する。
見た目が特別可愛いわけでもなかったし。
「今度のお店は串焼き屋さんですね。 お肉は・・・・・・普通のウルフ系のお肉のようです」
珍しい物や美味しそうな物なら食べてみたかったけど、どこでも買える物ならここで買う必要はない。
そのまま何件かお店を見ていくけど、普通のお店~安いお店ばかりで珍しいお店が無い。
リーアがお店を覗いては落胆している。
そのまま特にめぼしい物が見つからないままお昼になってしまったので、近場のお店を探して入る。
席に座ってメニューを聞くと、数種類のお肉から好きなお肉を選んで串焼きにしてくれるお店だった。
変わったセットメニューなようで、パン+スープが固定だけど串焼きは好きなだけ頼むようだ。
量が固定じゃないのは食べる方としてはありがたいシステムだ。
その日の腹具合で自由に食べられる。
屋台なら自分で好きな量を頼めるけど、店内で食べる飲食店としてはこの世界だと珍しいお店かもしれない。
欲しければ追加で注文すればいいんだろうけど、忙しそうだとなかなか頼みにくいんだよね。
味はお肉もスープもパンもこの世界的には普通だったけど、お店のシステム的に満足感のあるお店だった。
お店を出た後、人通りの少ない場所まで行く。
サクラをお勉強のためにお城に連れて行かないといけないからね。
地図で周囲に人がいないのを確認してからゲートを開き、お城の部屋に繋げる。
帰りのことを考えて近くを見て回ってたけど、王都の中なら簡易ではなく普通のゲートが開けるので、お城に戻るのはすぐだったね。
「じゃあサクラ、お勉強頑張ってね」
「頑張ってくださいね」
「うん!」
笑顔で手を振るサクラに手を振り返してゲートを閉めて消す。
「じゃあ行こうか」
「サクラがお勉強を頑張っているのに、わたしたちだけ遊んでるのは申し訳ないですね」
「明日も一緒に回るんだから、サクラのためにおすすめのお店探しをすればいいんじゃないかな? 今日は特に発見もないまま終わっちゃったし、明日も同じだと何もないまま終わっちゃうじゃない? だから私たちでよさそうなお店を見つけて、明日サクラを連れて行ってあげようよ」
「なるほど、それはいいですね!」
やる気を出したリーアを連れて再度中央のお店を見て回る。
しかし、そのまま回っていても面白いお店が見つからない。
何より同じようなお店しかない。
大体安めの布のお店か串焼き屋。
たまに食材屋があるけど、どこでも売ってる野菜ばかりだ。
「王都で売ってる物を他から持ってきて売ったって、そんなに利益が出るとは思えないんだけど」
「たぶん村から来ている人たちだと思います。 村の外で売ることによって村のお金が増えますから。 村に特産などが無かった場合、行商の人たちから買うだけで買って貰える物が少ないと、村としてのお金が無くなってしまうんです」
「なるほどね」
住んでる村内だけで買い物が完結しなければ他の所から買わないといけないもんね。
でもそうすると村全体のお金が減っていってしまう。
「そうなるとここのお店は期待できないのかな?」
「珍しいお店があれば当たり、といった感じでしょうか」
あまり期待が持てないまま次々と同じようなお店を見ていくと、他のお店とはちょっと違うお店があった。
「ここは装飾品を売っているみたいですね」
そのお店は木彫りのアクセサリーを売っていた。
紐が通してあって首から下げられるようだ。
「これはお花でしょうか。 可愛いですね」
形はいろいろある。
三日月のような形や葉っぱの形をした物や花の形をした物などから、剣や杖などの武器を模した物などが置かれていた。
他にもよくわからない芸術的な物も置いてある。
商品を見ていたら、お店の女性が気づいて近づいてくる。
「いらっしゃい。 村の職人が丹精込めて作った物だよ。 身に着けても良し、部屋に飾っても良しさ。 どうだい?」
笑顔で話しかけてきた女性に軽く挨拶をし、リーアと一緒に商品を見せてもらう。
近くで見てみると、かなり精巧な作りになっていて、芸術品としての完成度もかなり高い。
「結構よさそうだね、サクラにも買って行ってあげようか。 明日だと売れちゃってる可能性もあるし」
「いいですね。 私はこのお花が気に入りました。 サクラもこれにしてお揃いにしたいです」
「いい考えかも。 じゃあいくつか買って行こうか。 すみませんこのお花の形を・・・・・・5つもらえますか?」
「5つも買ってくれるのかい? ありがとね、少し安くしてあげるよ」
「ありがとうございます」
「そんなに買うんですか?」
「サクラ以外にもデイジーやマリーにもあげようと思って。 木彫りで喜ぶかはわからないけど。 あとはリーアの分もね」
「え、わたしもですか?」
「他のみんなにあげてリーアだけあげないのも仲間はずれにしてるようだしね。 私の気持ち的な物だから気にしないで受け取って」
「ありがとうございます」
リーアは素直に喜んでくれた。
まあそれもあるけど、買い物するときに妹より年下なリーアにお金を出させるのは気が引ける。
さっきの昼食時も2人とも遠慮してたけど、ちょっと強引に私が出した。
さすがにリーアが家のお土産を買うときまで出すようなことはしないけど。
アクセサリーを買ったのでお店を離れる。
そろそろ日が暮れてきたので帰らないといけない。
「お土産は買えたけど明日サクラを連れて行きたいようなお店が見つからなかったね」
「そうですね。 明日は明日で探すしかなさそうです」
特に急ぐ帰りではないので、周りのお店を眺めながら歩いてお城まで戻る。
そのまま真っ直ぐ部屋まで行くと、サクラのほかにマリーもいた。
「2人ともただいま」
「た、ただいま戻りました」
リーアが急に固くなってしまった。
「2人ともお帰り」
「お帰り、何か面白い物は見つかった?」
他から来ているお店の事が気になるのか、マリーが聞いてくる。
「うーん、サクラと別れた後も見て回ったんだけど、大体どこにでもあるお店ばかりだったよ。 明日見て回る時も同じ感じだと何も見つからないまま終わっちゃうと思って、リーアと一緒に面白そうなお店を探したんだけど、特に面白そうなお店はなかったんだよね。 あ、でも1件だけよさそうなお店があってお土産を買ってきたよ」
私は収納から2人に花のアクセサリーを渡す。
「木彫りの首飾りだ。 お花が可愛い」
「私のも花なのね」
「実は私とリーアも同じ物を買って、デイジーにも買ってきたんだよね。 お揃いで持ってたら友達っぽくない?」
「いいわねそれ。 それにしてもデイジーの分もあるの? デイジーはちょっと年が離れてるけど」
私の前の年齢から考えればみんなはそれ以上離れてるけどね。
「のけ者はかわいそうだし仲がいいことに変わりはないからね」
「デイジーも喜びそうね。 あ、そうだ。私はユリアを待ってたのよ」
「私を?」
「ユリアたち夕食はどうする? お城の料理を食べるなら用意してもらうけど、ユリアが作るなら私もそっちがいいわ」
「私が作るのはいいけど、マリーの分はもう作ってるんじゃないの?」
もう暗くなってきている。
今から作り始めるって事は無いよね?
「大丈夫よ。 私が食べなくても他の人が食べるだけだから」
「それって大丈夫って言わないと思うけど」
すでに作ってあるならアンドレさんに申し訳ない。
「お父様とお兄様が食べるから大丈夫よ」
だからそういう問題じゃないんだけど・・・・・・食材が無駄にならないならまだいいか。
「なら何か作ろうか。 希望はある? あ、マリーは早めに夕食のこと伝えてくれる?」
「わかったわ。 ちなみに私はチーズパンが食べたいわ!」
それだけ言ってマリーは出て行ってしまった。
「あ、勝手に決めちゃったけど2人もそれでよかった? お城の料理を食べたいなら次回からはお城の料理にしてもらうけど」
「仲良くなったとはいえ、さすがにわたしが意見をすることはできないよ・・・・・・」
「わ、わたしは流れに身を任せます。 どちらもあまり食べられるものではありませんし」
私としてはお城の料理も気になったけど、マリーたちが食べたいというなら私が作るか。
シアを椅子に座らせていつもの調理用の台を出す。




