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89 お城でお泊り

 マリーに連れられて私たちは執務室へ向かう。

 サクラは多少慣れてるようで、王様に会うと言っても前回ほど緊張はしていない。

 逆にリーアの方が青い顔をしている。

 初めて王様の所に連れてきたサクラを思い出すね。



 執務室まで移動すると、マリーはノックをして入室許可をもらう。

 さすがにデイジーみたいにいきなり勢いよく開けたりはしないよね。


 許可をもらうとみんなで中に入る。

 今日も王子が同じ場所に座っていた。

 暇なのかなこの人。



「おう来たか。 座ってくれ」



 そういって王様が手を止めてソファに座り、宰相さんもいつもの王様の斜め後ろに立っている。


 座った私たちと一緒にいるリーアとシアを見て首を傾げた王様に、マリーの時と同じように紹介して話を始める。



「今日は戦技大会の事で来たって事でいいか?」

「それもありますけど、カーミトの街の整地が終わった報告と、集めた書類を渡そうと思いまして」

「おお、終わったか。 精霊の力を借りたとはいえずいぶん早く終わったんだな」

「建物を壊すのが楽しいようで、勢いよく壊して遊んでましたからね。 人が住んでるとできませんし」



 テーブルに何度か書類を積み上げ、それを宰相さんが別の場所に運んでいくのを待ちながら精霊のことを話す。



「その話を聞くと少し不安になるな。 本当に人が住んでたら壊さないのか?」

「精霊に喧嘩売ったりしたらわかりませんけど、人が住んでる街の建物は壊さないみたいですよ」

「そうか。 まあ今まで精霊に壊されるようなことは起きてないが」



 王様の言う「今まで」が王様になってからなのか、王様が生まれてからなのか、過去の文献からなのかはわからない。

 でもディアの説明を聞いた感じだと、精霊に喧嘩を売ったりしなけらば何もしてこないはず。

 喧嘩売っても食料をダメにされる程度で、家を壊されたりはしないようだけど。


 もしかしたらひどい自然破壊とかしたら徹底的にやられる可能性もあるけど。



「整地と書類の件は終わったので、戦技大会の話を聞いてもいいですか?」

「ああいいぞ。 戦技大会は国中から身分関係なく腕に自信のある者を集めて競い合う大会で、勝ち抜き形式で優勝者を決める。 上位入賞者にはもちろん報酬を出すが、それ以外にも見ごたえのある戦いをしたものにも後日特別賞を出すことになっている。 だから1回戦で敗退しても報酬を貰える者が出る可能性がある。 勝ち抜けばその分見てもらう機会が増えて報酬を貰える可能性は上がるな」



 リーアに話を聞いて想像していた通りの大会かな。



「他の人たちがどんなふうに戦うのか見たかったので楽しみですね」

「それでユリアはどうするんだ? 1回戦から参加するのか? 希望があれば途中参加でも構わんが」



 ん?私は最初から見れないの?

 参加ってもしかしたら私が出る話になってる?

 私が出ても圧勝で終わりそうなんだけど。



「私は見に来ただけですよ?」

「そうなのか? マリーの招待で来たからてっきり参加するのかと。 まあ確かにお前さんが出たら優勝は決まったようなものかもしれないが」



 参加ってそういう意味だったのか。

 一緒に見ないかと言うお誘いだと思っていた。


 でもよくよく考えれば、強いと知られている冒険者を大会に誘ったら見る方じゃないよね。



「私的にはどっちでもいいですね。 他の人の戦いが見たいだけなので」

「ならユリアも参加してよ! 強いんでしょ? 戦ってる所を見たいわ」

「それは確かに気になるが・・・・・・この前の力を見ると鎧を着てても相手は死ぬんじゃないか?」



 参加してほしいというマリーと、この前王子をお仕置きした時の壁破壊で相手を心配する王様。

 まあ私が参加しても相手の攻撃を防いで殴って終わるだろうしね。



「もし参加するなら手加減はしますよ。 弱い魔法のみとか」



 発動できるぎりぎりの魔力で魔法を撃てば死ぬことはないと思う。



「手加減宣言してる時点でもう優勝な気がするんだが・・・・・・」



 とはいっても強い人はいるだろうから、勝ち上がって行った場合縛ってたら勝てないかもしれない。

 防御特化の人とかもいるかもしれないし。



「他の者たちの戦いを見たいのであれば途中からの参加にするか?」

「参加者は待機室みたいな場所に控えないといけない、とかあります? それなら途中から参加が良いんですけど」

「基本的にはそうだが、ユリアが希望するなら特別席を用意するぞ。 もちろんフリージアとサクラの分も一緒にな」



 リーアとサクラが驚いているけど、せっかく見に来たのなら見やすい場所で見たい。

 自分の戦い以外見学してていいなら最初から出ても問題ない。

 疲れたりしないし。



「他の試合が見れるなら最初から参加でもいいですよ」

「わかった。 なら席の用意と参加登録もこちらでしておこう。 当日の朝にまた城に来てくれ。 それともそれまで王都にいるか?」

「リーアはどうする? 一旦家に帰って当日の朝にまたうちに来てもらえれば連れてくるけど」

「えっと。 お父様には王都に行くと言って出てきてしまったのですが・・・・・・」



 あーしばらく帰らないつもりで出かけたのに日帰りはちょっと恥ずかしいというか、気持ちはわかる。



「なら私の家でお泊りもできるよ? ゲートがあるからここにはすぐ来れるし」

「客人として部屋を用意してもいいぞ? ユリアの部屋に一時的にベッドを運んでもいいしな。 寝泊まりする目的ならサクラが勉強する時間とかぶらないし問題なかろう」

「それもいいですね。 当日まで王都見物するのもいいですし。 2人ともどうかな?」

「わたしは院長先生に言えば大丈夫だと思います。 どうなるかわからなかったので、日時までは言ってませんが、王都に行くことは言ってありますので」



 今日は受付に行くだけだからすぐ帰ってくる可能性もあったもんね。

 ゲートがあればすぐ帰ってこれるし。

 ちゃんとそこまで考えているサクラは本当に頭がいいというか、ちゃんと考えている。



「わ、わたしはユリアさんにお任せします。 ユリアさんのお家でもユリアさんのお借りしてるお部屋でも、どちらでも大丈夫です」



 リーアは王様の前で意見を言うのを避けたのか、私に一任された。

 それならお泊り感覚でお城で過ごすのも悪くないかも。


 毎日お城は気疲れしそうだけど、たまにならいいでしょ。



「それならお城でお泊りしようか。 何ならデイジーやマリーも一緒の部屋で寝る?」

「ほんと!」

「面白そうね」



 デイジーとマリーは乗り気だったが、リーアは「え?」って顔をしていた。

 サクラも慣れたんだから、リーアも交流してれば仲良くなれると思うんだよね。



「いいですか?」



 さすがに本人が乗り気でもお姫様の事を私が決めることはできないので、王様に聞いてみる。



「楽しそうだな。 2人も喜んでいるしたまにはいいだろう」



 王様の許可でお姫様は2人とも喜んでいる。

 賑やかで楽しそうだ。



「おいルドルフ。 ユリアの参加登録とベッドの手配をしておいてくれ」

「畏まりました」



 そういって宰相さんは部屋を出て行った。



「あ、ベッドを運ぶなら私がしましょうか? 収納で運べばすぐですし」

「それは助かるな。 時間があるなら頼む」



 サクラは院長先生に話すために一度孤児院に戻ることになった。

 リーアはサクラといっしょにゲートのある部屋まで行って、そこで待っているそうだ。

 デイジーとマリーはお勉強の時間という事で、勉強部屋に向かう。


 私は宰相さんの後を追って事情を説明し、ベッドの置いてある部屋からベッドを回収してリーアのいる部屋まで行く。



「リーア、ただいま」

「あ、ユリアさん」



 ちょっとリーアの元気がない。 



「大丈夫? 元気ないみたいだけど」

「わたしがお姫様に失礼なことをしたらお父様に迷惑が掛かってしまいます。 そう思うと怖くて・・・・・・サクラがなぜあんなに平然としているのかがわかりません」

「慣れたんじゃない?」

「慣れるほどお姫様と一緒にいるんですか? ゲートのあるこのお部屋でお勉強をしていたらお姫様と会うこともないと思いますけど」

「デイジーやマリーのおやつのために果物を持っていく代わりに、サクラをおやつのお茶会に参加させてもらってるからだと思う」

「そんなことよく許してもらえましたね」



 リーアが目を見開いて私を見ている。

 この反応だけでいかにあり得ないことなのかがわかる。



「サクラの作法の勉強もかねてたからね。 もしサクラが耐えられないようだったら途中でやめるようお願いはしてたけど、サクラの様子を見ると大丈夫だったみたいだね」



 最初のサクラはリーアより怯えていた。

 でもリーアの場合は何かあれば親に迷惑がかかる可能性があるという。

 貴族は大変そうだ。



「何かあれば私もフォローするから、お姫様と仲良くなる機会だと思って少し頑張ってみない? 本当にダメそうだったら私の所にいればいいから、ね?」

「・・・・・・わかりました、頑張ってみます」



 リーアは両手で握りこぶしを作って気合を入れている。


 リーアがやる気を出したところで、私は収納していたベッドを出していく。

 王族と言うか貴族用なのかやたら大きな天蓋付きベッドを3つ出そうとしたけど、そのまま出しても当然収まらない。

 仕方ないので机や棚などを一旦どかして壁一面物をなくす。

 その状態で3つ並べるとギリギリ通り道を維持した状態で置けた。



「これ、サクラが勉強するときにすごく圧迫感がありそうなんだけど」

「収納しておくのが問題ないようなら、寝る時だけ出すのはどうでしょう?」

「あ、そうだよね。 今全部出す必要ないよね」



 3つ並んだベッドを収納すると広さは問題ないけど、全部回収すると部屋として寂しいので1つだけ残してみた。

 もしベッドが勉強の邪魔になるようなら回収すればいいし。


 あ、そうだ。 ディアにもお城に数日泊ることを伝えておかないと。



『ディア、今大丈夫?』

『大丈夫なの』

『いろいろあってみんなでお城で数日泊ることになったんだけどそっちは大丈夫? ダメそうなら寝る時以外なら戻れるけど』

『今のところは問題ないの。 問題じゃないけど水稲がそろそろ収穫できると思うの。 必要だったら持って行って欲しいの』

『結構時間かかったね。 他のに比べてってだけで十分早いけど』

『水稲は水の影響が強いからわたしだけだと限界があるの。 だから水稲も早く収穫したいならシアの力が必要なの』



 土の精霊が作物系全部作れるわけじゃないんだね。



『それは本人次第かな。 やりたくないのに無理やりやらせたくはないし』

『でも水田の魔力を使って体を作った分は手伝ってもらってもいいと思うの。 ママがせっかく貯めた水から魔力を吸ってたの。 わたしは水に含まれた魔力は操作できないから持っていかれるのを防げなかったの。 ごめんなさいなの』

『それはディアが悪いわけじゃないでしょ? 勝手に持っていかれちゃっただけだし。 それにそのおかげで新しく家族が増えたわけだし、むしろ防がないのが正解ともいえるし』

『でもわたしは畑を任されてたのに大切な魔力をとられちゃってたの』

『私は畑に関してディアに甘えちゃってるけど、畑の警備をさせてるつもりはないよ? ディアの好きなようにしてていいんだからね? 魔力だって無くなったらまた撒けばいいだけだし』

『ママ・・・・・・ありがとうなの』



 ディアは真面目と言うか抱え込んでしまうタイプで、顔にも出ないからなかなかわからない。 

 そんなことで嫌われると思われてるのはショックな気もするけど、自分の小さい頃に物を壊して怒られたり嫌われたくなくて黙ってたことがある。

 子供はそういうものなのかもしれない。



『じゃあ何かあったら呼んでね。 急ぎだったら簡易ゲートでも帰れるから』

『わかったの』



 これで家の方は大丈夫。 

 あ、ジャスミンの食事はどうしよう。

 食事を考えると朝起きたときと夜寝る前には一度家に戻らないとダメか。 



「そういえば今日と明日は王都にいることになったけど、リーアはどこか行きたいところある?」

「わたしは特に・・・・・・何度も来たことがありますし、ユリアさんやサクラの行きたいところでいいですよ。 どこかに行きたいというよりは皆で一緒に行きたいので」



 貴族のリーアなら王都に来ることもあるか。

 私としては武器屋を見てみたいくらいかな? 

 食材屋は前に見たし、そんなに経ってないから並んでる食材が変わってるとは思えない。



「私は武器屋を覗いてみたいかな、壊れない武器があれば欲しいし」

「壊れない武器なんてあるんですか?」

「ミスリルとかアダ何とかって金属なら丈夫だとか聞いたから、そのあたりの武器が無いかなと思って」

「希少な金属ですね。 ミスリルであればあるかもしれませんが、それ以上の金属ですとそもそも持ってる人を聞いたことが無いですね」

「ミスリルならあるんだ」

「かなり高いと思いますが王都ならあると思います。 でもユリアさんならあの扉のような材質で作れないんですか?」

「あのゲートは魔力を空間に固定させている感じで持ち歩くのは無理かな」



 それに作れる場所に制限があるから、武器として使うには問題が多すぎる。



「あ、いえ。 ゲートの方ではなくて部屋の扉に使っていた物の方ですね。 あれはかなり丈夫なんですよね?」

「・・・・・・」



 私は土魔法で最初に買ったメイスの様な武器を作る。

 私はきっと間抜けな顔をしていたと思う。



「ダメそうですか?」

「いや、多分大丈夫だと思う。 武器って言うと金属で作る物って思ってたから、土魔法で作ることを失念してた・・・・・・」

「ありますよね、そういう事」



 リーアに優しい表情で見られてしまった。


 何で今まで気づかなかったのか。

 包丁まで土魔法で作ってたのに・・・・・・


 自分の攻撃も魔法も効かない家を作れるんだから、同じ要領で作れば壊れない武器が作れるじゃないか・・・・・・

 しかもこれ、好きな時に好きな形で作れるから万能最強武器じゃないか!



「ありがとうリーア、私の悩みは解決したよ。 そして私が行きたい場所もなくなっちゃったよ」

「お役に立てたなら嬉しいです。 行く場所はサクラに聞いてみて、わからなかったり特になければ適当に歩きましょうか」

「そうだね」



 そのまま椅子に座ってサクラが帰ってくるのを待つことにした。



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