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85 ワイバーン調査の報告

 街の外に出た後、少し離れたところでコウスラにはフェンリルの姿になってもらい、馬の村に向かう。


 私より圧倒的に速いので1時間半ほどで村の近くまで来てしまった。

 そのままだと驚かれるので元に戻ってもらい、早歩きで村に行く。


 村に入って様子をうかがうと、特に変わってたり怯えている様子もない。

 村人には情報が行ってないのかな?。


 一応話を聞こうと、前回一緒に森に入っている馬のお世話をしてた人の所に行く。



「こんにちは、誰かいますか?」



 ノックをしながら声をかける。

 お昼を過ぎた時間だし、一日2食の人も3食の人も食事中って事は無いと思う。

 まあ全員が全員同じ時間に食べてるわけじゃないと思うけど。


 待っていたら柵の中から声をかけられた。



「はい、なんでしょう? あ、この前の」

「こんにちは。 ちょっとお話を聞きたいんですが大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。 どうぞ、そのまま家に入ってください」



 私は許可をもらったので家に入ると、おじさんも柵の方から家に入ってくる。

 お互い椅子に座ったところで話を聞いてみる。



「今日はギルドからの調査依頼で来たんですが、ワイバーンについて何か知りませんか? 他にも森で何か違和感があった、とかでもいいんですけど」

「ワイバーンや森の違和感ですかですか? 前に来た冒険者の方がワイバーンがいたと言っていたようですが、村人は誰も見ませんでした。 その後も他の冒険者の方が何回か調査に来ましたが結局見つからず、見間違いかたまたま通っただけでもういないのだろうと言って調査は終わりました。 それ以降もワイバーンは見ていませんので、村長も特に討伐依頼などは出さないという方向でその話は終わりました」



 見間違いならいいけど、どこかに行っていただけだと戻ってくる可能性もある?



「なるほど、ありがとうございます。 今回は今までの冒険者よりも奥の方まで確認してみて、何もいなければこの調査は完全に終了になると思います」

「わざわざありがとうございます。 村長の方には私の方から伝えておきますね」

「ありがとうございます。 じゃあ私は早速森に行ってきますね」



 情報をくれたおじさんにお礼を言って家を出ると、そのまま森の方まで走る。

 街から森へ行く距離としては近いので、今回はコウスラには乗らず自分で移動することにした。


 森に向かっている間も森や森の上空を見てみるが、何もいないし地図で見える範囲にも魔物はいない。


 周囲の様子を見ながら移動していたら前回森に入った場所まで来たので、私はそのまま森に入って奥へと進む。


 入口辺りは大豆があちこちに育っていて、木は少なく見晴らしは悪くない。

 地図にもまだ魔物の気配はないね。


 そのまま進み、沼の辺りまで行くと、ウルフやスモールボアに加え、ポイズントードやポイズンバタフライなど、いかにも毒持ちな魔物がいた。

 ただ、なぜかウルフやスモールボアは逃げていく。


 残ったのは毒持ちっぽい魔物だけで、毒が危険かもしれないけど私には効かないのでただの雑魚だ。

 ウルフたちと違って毒持ちの魔物は逃げたりしないけど、襲ってくる気配もない。

 とはいえ放っておいて村人が襲われても困るので、サクッと氷魔法で串刺しにしておく。

 串刺しと言っても、そう見えるだけで外傷はないけど。



「前回はいなかったけど、あの蛇がいなくなって集まってきたのかな? それとも住処を追われてた魔物が帰って来た? もしかしたらこの辺りの魔物を食べてた蛇がいなくなったせいって可能性もあるか」



 どっちにしても毒持ちの魔物がいるとなると、村人には脅威になる事は変わらない。

 前回の調査の時にはいなかったのかな?

 それとも気にならないくらい弱い可能性も?

 毒持ち以外で出てくる魔物的に考えると、冒険者ならここまで来られないって事はないよね?



 その後も沼の周囲にいる魔物を討伐していったけど、強そうな魔物はいなかった。

 沼の周りの魔物がいなくなったので、帰る前にもう少し奥まで行ってみることにする。

 今回の目的は森にいる普通の魔物じゃなくて、ワイバーンだし。


 奥に進むほど木が生い茂り、暗くなっていく。

 これはモウイ近くの森と同じかな。

 というか背の高い木が密集してる森なら大体こうなるか。


 光魔法で明るくすると、暗い時は気づかなかったけど、薄紫のような霧が周囲に見える。

 かすかに紫っぽいかも?くらいの霧で、出てくる魔物も同じような毒系の魔物がちらほらいる程度だ。

 特別変なにおいがするわけでもないし、大型の魔物も見つからない。

 もしかしたら人間にはわからないような香りなのかもしれないけど。


 入口から沼地までと同じくらいの距離を進んだ辺りで引き返し、村に戻った。

 ワイバーンはいなかったし、出てくる魔物も変わらなかったし。


 村に戻るとお爺さんが入口で待っていた。



「おかえりなさいませ。 わしは村長のバテツと申します」

「はじめまして、私は冒険者のユリアです」

「それで、森の方は何かありましたか?」

「前回蛇を討伐した時には見なかった毒系の魔物がいましたけど、ワイバーン含めて大型の魔物はいませんでしたね」

「毒系の魔物ですか?」

「沼の辺りから先に、多くはないですがいましたね」



 私は少し離れた場所に討伐してきた毒系の魔物をを出していく。

 村長は唖然とそれを見ていた。



「これ以外にも狼や猪が沼の手前寄りに、蛙と蝶は沼を超えた辺りからいましたね」

「まさか、森の奥まで行ったのですか!?」



 村長は信じられないという表情で私を見る。

 強そうに見えないから仕方ないか。



「入口から沼までの倍くらいまで進んだと思います。 真っ暗で薄紫の霧が出てましたが、特に強い魔物はいませんでしたよ」

「そんな奥まで行って体は大丈夫なんですか? 紫の霧は毒の霧らしく、高位の神官様などの結界がないと生きて戻れないと聞きましたが・・・・・・」



 あれは毒の霧だったんだ。

 確かに紫の霧はゲームだと毒っぽいかも。

 あと緑とかね。



「私は毒に耐性があるので問題ないんですよ。 ただ沼の先とはいえ毒の魔物はいましたので、馬の餌集めは気を付けたほうがいいかもしれません。 今日見かけた分は倒しましたけど、また集まってくると思いますし」

「普段はそんな奥まではいきませんが、その魔物が入口の方まで来る可能性はあるんですよね? そうなると安全のためには定期的な討伐依頼を出さないとまずいでしょうか・・・・・・」



 村長は顎に手を当てて考え出す。

 一般の村人がどれくらい強いのかわからないけど、成人男性なら武器を持てばウルフくらい倒せるんだろうか?

 入口の辺りは見晴らしもいいし、奇襲されることはないと思うし。



「採集するときは警戒する人と馬を連れて行って、魔物が来たら馬に乗って逃げるのはどうです? 入口付近なら魔物が来たのもわかりやすいですし。 あとは狼や猪くらい倒せる村の強い人がいれば、護衛してもらうのもありだと思います。 毒系の魔物が来たら馬で逃げればいいですし。 冒険者に依頼するよりは安く済みますしすぐに対応できます。 討伐依頼の場合、毒の魔物もいますので依頼ランクも高くなるかもしれませんし、その分依頼料も高くなってしまうと思います。 まあ増えすぎれば結局討伐依頼は出さないといけないでしょうけど」

「・・・・・・そうですね、村の重鎮を集めて話し合ってみます」



 私は依頼書を村長に渡して達成のサインをしてもらうと、魔物を収納して村を出る。

 少し離れたところで簡易ゲートを使って家に帰り、ギルドに報告へ行く。

 コウスラも通れるから帰るには簡易ゲートが本当に便利だ。


 日が傾き始めたころ、ギルドに入り、スズランさんの所へ行く。



「あ、ユリアさんどうしました? まさかこれから行くんですか? 夜は危険ですし、明日の早朝にした方がいいと思いますよ?」

「いえ、達成してきたので報告に来ました。 これが依頼書です」



 村長からサインをもらった書類を収納から出してスズランさんに渡す。



「え、いつ行ってきたんですか? 受けたのってお昼前ですよね?」

「受けてそのまま向かってさっき帰って来ました」

「いやいやいや。 あの村まで何日かかると思ってるんですか、馬車だって片道3日はかかるんですよ?」

「私には速く移動する方法があるだけですよ。 それと討伐してきた魔物を買取ってほしいんですけど」

「うぅ、気になりますが仕方ありません。 小さくて少ないのであれば隣で、大きい物や多い場合は倉庫へお願いします。 戻ってくるまでに依頼の達成処理はしておきますので」

「わかりました、じゃあ倉庫に行ってきますね」



 今回はそこそこな量を持って帰って来たけど、それ以上に毒がある魔物がいるので、運ぶのが大変かもしれない。

 なので直接倉庫へ持って行くことにした。


 私はスズランさんのいるカウンターから離れてギルドを出る。

 裏手に回って倉庫に入るとギルマスさんがいた。

 何でいつもいるんだろうか?



「おう来たか。 今回は何を討伐したんだ?」

「何って、森にいた普通の魔物ですよ? ワイバーンはいませんでしたし」

「なんだ、そうなのか? お前さんが魔物を討伐してきて、解体場所に向かったと聞いて仕事そっちのけで見に来たんだが」

「そんな毎回大型の魔物を討伐なんてしませんよ」



 私は討伐して収納してあった魔物を全部出す。



「これはポイズントードか? こっちはバタフライまで。 こんなのが森にいたのか?」



 ギルマスさんの表情が少し険しくなる。



「沼の手前には狼と猪がいて、蛙と蝶は沼の辺りから奥の方までいましたね。 毒の霧?の辺りまで行きましたけど、出てくる魔物は同じでしたね」

「入口近くにいたのかと不安になったが、あの霧の中を進んだのか?」



 ギルマスさんが驚いている。

 他の冒険者も調査に来てたでしょ。



「どこまで調査すればいいのかわからなかったので奥の方まで行ったんです。 特に成果はありませんでしたけど」

「治療魔法が使えるのは聞いてたが結界魔法まで使えるのか?」



 村長が言ってた結界と言うのは、そういう魔法があるようだ。



「結界はよくわかりませんね。 純粋に毒に耐性があるんです」

「猛毒まで無効にするなんてスキルでも聞いたことないな」

「そんな事言われても自分でもよくわかってませんし」

「まあいいか。 冒険者の能力は自分で公開してるもの以外深く詮索するもんじゃないしな。 じゃあこれは全部買取りでいいか? 魔石や肉はどうする?」



 お肉って毒持ち魔物のお肉って食べて平気なの?

 でも聞いてくるってことは食べられるんだよね・・・・・・


 まあ気分的に食べたくはないので、今回は遠慮しておこうかな。

 どこかで美味しいって話を聞いたら食べてみるってことで。



「魔石だけお願いします。 お肉はオークのお肉がまだ残ってますし」

「わかった、魔石なら腐ることもないし好きな時に取りに来てくれ」



 魔物を引き渡して私はスズランさんのところへ戻る。



「それで、村と森はどうでした?」



 どこにもワイバーンがいなかったこと、森で魔物を倒したこと、村で警戒するだろうことを説明した。



「ユリアさんの調査でも何も見つからなかったのなら、ギルドとしては調査終了ですね。 あとは村からの依頼が来るかどうか、ですね。 あ、こちらが今回の依頼報酬と買取りのお金です」



 報告を聞き終わったスズランさんが手に持っていた袋を渡してくれる。

 今までの討伐依頼どころかオークの納品した時よりも少ない。

 普通の報酬はこれくらいなのかな?



「今までのユリアさんの報酬から比べるとかなり少なく感じますね。 これでもCランクの真ん中くらいの人でも大金だと喜ぶんですけど」



 普通どころか多かったようだ。

 そうなると、命がけでこれよりもっと少ないんだね。

 サクラの時は薬草の納品だから安いのも納得だったけど、ランクCでもこれより少ないのか・・・・・・


 サクラの言葉通り、お金を貯めるのが大変なのを実感するね。



「そういえば私って、常設の依頼と指名依頼以外だと初めての依頼かもしれません」

「言われてみればそうかもしれませんね。 今まで討伐した物がすごすぎて全然そんな感じがしませんが。 あ、でも最初に採集依頼受けてますよね?」

「あー、自分で受けたわけじゃないので忘れてましたが、あれが最初でしたか」



 スズランさんと笑っていると、飲食場所の方から何かが壊れる大きな音がした。



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