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84 久しぶりにギルドで依頼を受ける

 みんなでクッキーや炭酸ジュースを堪能していたら、2つ目の方もいい時間になったので取り出す。

 うん、こっちもいい感じに焼けてるね。

 さっきのクッキーも美味しかったしこれも味の方は大丈夫だと思う。


 新しく焼けたクッキーを見てデイジーの目が輝くが、これはあげられない。



「デイジー、これは明日以降の分だよ。 これも箱に入れてあげるから明日以降のおやつの時間に少しずつ食べてね」



 そういって私は3つ箱を出してしまっていく。

 ディアへのお土産とデイジーたちの明日以降のおやつ分と王様たちの試食用。 

 しまっていく私を見て悲しそうな目をするが、これはあげられない。 


 クッキーをしまっていると、型抜き後のクッキーが目についた。

 もう少しくらいならいいかな?

 さっきのクッキーもそれなりの人数で食べたからお腹いっぱい食べたわけじゃないし。



「よし、じゃあこの箱を王様に届けてくれたらこのクッキーをあげよう」



 そういって型抜き後のクッキーをお皿に乗せて風魔法で半分にする。



「わかった! いってくる!」



 箱のふたをしっかり閉めてデイジーに渡し、お皿に乗せたクッキーはマリーに渡した。

 


「メイドを呼びましょうか?」

「いえ、私たちで運びますので大丈夫ですよ。 帰る前に挨拶したいですし。 それともマリーニお皿を持たせるのはまずいですか?」

「他の貴族などの前では問題になりますが、ここから執務室に向かうだけなら問題はないかと」

「ならお皿は私が運んだほうがよさそうですね。 誰が見てるかわかりませんし」



 ということで、執務室の前までは私が運ぶことになり、マリーからお皿を受け取る。

 マリーは大丈夫だと言ってるけど、何か言われても嫌だし。



「では私たちは昼食の準備に戻ります」

「急に邪魔しちゃってすみませんでした。 それと場所ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそとても美味しい物をありがとうございます。 料理人としていい刺激をもらえました」



 深く頭を下げるアンドレさんに手を振って厨房を出る。

 そしてそのまま執務室へ。



 執務室前まで来てお皿をマリーに渡し、ノックをしようとしたらデイジーがそのまま入って行った。

 相変わらずいきなり入るねデイジーは。



「ん? デイジーにマリー、戻って来たか。 ユリアもいるのか? そのまま帰ると思ったぞ」

「さすがに子供を預かってそのまま帰りませんよ。 帰る前に挨拶と作ったクッキーの差し入れです」

「おお、持ってきてくれたのか。 いやー実はどんなものか気になっていたのだ。 作れるようになればアンドレに頼むつもりだったんだが、持ってきてくれたのは嬉しい」



 この王様は本当甘い物好きだね。

 いや、甘い物かどうかは知らないか。

 純粋に新しいお菓子に興味があるだけかな。


 そもそも、王様でもお菓子とか美味しい物が少なかったりするのかな?


 王様たちはまたソファの方に来て正面に私たちも座る。

 王子もずっといたようで同じ場所に座っている。



「はい、これおとーさまのぶん」



 そういってデイジーが大事に抱えていた箱を王様に渡す。



「おお、そうか、ありがとうなデイジー」



 お礼を言われて嬉しそうなデイジー。

 私は皆にリンゴの炭酸ジュースを出してあげる。



「飲み物も欲しくなると思うのでどうぞ」

「気が利くな」

「いえいえ。 さあ食べてみてください、特別なクッキーなのですごく美味しいですよ」

「ほう、それは楽しみだ」



 王様は受け取った箱を開けて中を見る。



「ずいぶんとかわいらしい形をしているな」



 そう言いながら箱の中身を覗いている。

 しばらく眺めた後、1つ取り出して食べる。 



「はっはっは、これはうまいな。 これがユリアの菓子か、今まで生きてきてこんなにうまい菓子は食べたことが無い」



 王様は王子や宰相さんにもクッキーを渡している。

 それを食べた2人も目を見開いて驚いている。

 それを見ていたマリーが私の腕にしがみつき顔を押し付けてくる。

 自分が作った物が褒められて嬉し恥ずかしいようだ。



「これは何か特別だと言っていたが普通のクッキーとは違うという事か?」

「それは食べる人次第だと思いますけど、王様にとっては特別なクッキーだと思いますよ」

「どういうことだ?」

「そのクッキーは私はほとんど手を出してません。 手順を教えただけなんです」

「ほう、という事はアンドレが作ったという事か。 なら材料さえ集まれば今後も食べられそうだな」



 王様は今後も食べられると思って喜んでいる。

 いや、アンドレさんが作れても、王様にとっては特別でも何でもないでしょうに。



「残念ながらアンドレさんはまだ作れませんよ」

「ん? そうなのか?」

「これを1人で作ったのはマリーです。 最後の焼く作業以外、生地作りから型抜きまで全部マリーが作った物ですよ。 娘の手作りクッキーです」

「これを、マリーが・・・・・・」



 王様は優しい表情でクッキーを見る。



「よく頑張ったな。 すごく美味しいぞマリー」

「うん・・・・・・」



 マリーは恥ずかしそうだけど、すごく嬉しそうな表情をしている。

 作った物を美味しいって言ってもらえると嬉しいのは私もわかる。


 そんないい空気に水を差したのはデイジーだった。



「ゆりあ、わたしもたべていい?」

「え? あ、うん。 いいよ」



 私の許可が出たのでマリーが持っていたお皿から半分のクッキーを掴んで食べ始める。

 うん、可愛いからいいや。



「それは変な形をしているな」

「これは何回か型を抜いて最後に残った生地をそのまま焼いた物ですね。 好きな形を作ってもいいですが、私はこのまま焼くのも好きですね。 まあ形が違うだけで味は同じですよ」

「ほう・・・・・・」



 自分の持ってるキレイな形をしてるクッキーと、デイジーが食べている少し大きい穴の開いたクッキーを見比べている。


 クッキーも渡したし私は帰ろうかな。



「クッキーも作りましたし、挨拶もしたので私は帰りますね。 カーミトの街の続きもしないといけませんし」

「そうか、何かあったらまた来てくれ」



 デイジーが寂しそうな顔をしていたが、また来る約束をして私は家に戻って来た。


 家の中を確認すると、ジャスミンは相変わらず部屋にいる。

 ディアは向こうの畑作業をすると言っていたので、クッキーは帰ってきてからでいいかな。 


 ディアは整地に参加していないので、他の精霊さえいれば整地はできる。

 でも今日は気分がのらないから整地は明日からでいいや。


 そうなると今日は何をしようかな・・・・・・久しぶりにギルドとか行ってみようか。


 家にいるジャスミンに一言言って、散歩感覚でのんびりギルドへ向かう。

 商店通りを眺めながら目新しい物を探すけど、特になかったのでそのままギルドまで行った。


 ギルドに入った私はスズランさんの所へ行く。



「こんにちはスズランさん」

「あ、こんにちはユリアさん」



 書類を見ていたスズランさんが顔をあげて挨拶してくれる。

 その手元には風の精霊スーちゃんがスズランさんの腕に寄りかかってうとうとしている。



「今日はどうしました? 依頼を受けに来たんですか?」



 すでに収納していたオークの解体は終わっているので、ここ最近は来ていなかった。

 日帰り出来て何か面白そうな依頼があればやってもいいかも?



「今やってる作業の息抜きに来ただけなんですが、面白そうな依頼があれば受けてもいいですね」

「面白い依頼、ですか?」

「珍しい魔物とか強い魔物の討伐とか?」

「うーん、珍しい魔物か強い魔物ですか・・・・・・ユリアさんがキラービーやフォレストタイガーを討伐してくれたおかげで、近くの森は安全になりましたし・・・・・・近場にはないですね。 少し離れた場所でもいいですか?」

「どのあたりですか?」

「前にフリージア様の護衛で行った村は覚えてますか?」



 リーアの護衛だと大豆と稲を入手した馬の村かな?



「覚えてますよ。 馬の村ですね」

「はい、その村です。 その村でユリアさんが討伐したスワンプヴァイパー以外に何かいないか、調査のために冒険者パーティーをいくつか送ったんです。 そのうちの1パーティーがワイバーンを見たと言っていたんです。 ただ村の方にはまだ被害は出てませんし、発見報告も討伐依頼もありません。 見間違いなのか、たまたまワイバーンが近くを通っただけなのかはわかりませんが、それ以来報告はないんです」

「それを確認して来いって事ですか?」

「参加してくれた冒険者はほぼランクDだったので、あまり森の奥には行ってないと思うんです。 なのでユリアさんならある程度森の奥の方まで行けるんじゃないかと。 それで何も問題が無いようならそれでいいんです」

「どのあたりまで確認しますか? いない物を探す場合、ある程度でおしまいにしないと終われませんし」

「そうですね・・・・・・前回スワンプヴァイパーを討伐した場所よりも少し奥の方を確認してもらえれば、終了の判断はユリアさんにお任せします」



 また難しい事を言ってくれる。

 それに沼の少し先だとそこまで奥じゃないよね?



「わかりました、とりあえず行ってみます」



 私はその調査依頼を受けるためにカードを渡す。



「え!? ユリアさん、この王家の紋章はどうしたんですか!?」



 スズランさんが王家の紋章と言った瞬間ギルドが静まり返った。

 え、何? 怖いんだけど・・・・・・



「その絵ですか? 王様がお城の通行証になるからって勝手につけた物ですね。 カード見せるだけで通れるのに意味があるのかわかりませんけど」

「これは国王陛下に認められた者に送られるもので、長年国に大きく貢献している貴族や大商人や冒険者しか持てない物なんですよ!? 何したんですか?」 



 そんなこと言われても勝手につけられたんだから知らない。



「なんでしょう? 私にもわかりませんね」



 王様に会ってからまだそんなにな経ってないけどいろいろなことがあった気がする。

 どれを評価されたんだろうか?

 やっぱりフェンリル討伐?



「この街でも強い魔物を何ともないように倒してますし、きっと無自覚にすごいことをしたんですね・・・・・・」



 そんな人を鈍感系主人公みたいに言わないで欲しい。

 公言できないだけで思い当たることが無いわけじゃないし。



「それで、依頼に行きたいんですけど」



 ギルドが静かなままで落ち着かないので、さっさと村に行きたい。



「あ、すみません。 初めて見たのでちょっと興奮してしまいました」



 何回かギルドにはオークの納品に来てるけど、依頼の納品ではないのでカードは出してなかった。

 常設依頼にないからオークは依頼達成扱いにはならないらしい。

 功績はカードじゃなくて水晶版に蓄積されるようで、誰が何を納品したかがわかっていれば、わざわざカードを見せる必要はないようだし。


 だからスズランさんが見たのはこれが初めてだ。

 あれ そうなるとゲートの無い他の街とかに行っても言われるかも?


 入口の門ではカードが光るかが重要みたいだから、内容までちゃんと見せる必要はない。

 だとしてもめんどくさい物を付けてくれたね王様・・・・・・


 受注処理をしてもらい、足早にギルドを出て門に向かう。



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